カンティーナ事変(7)
渦となった炎が瓦礫を吸い込みながら魔王に迫る。
「ここまでの炎は久々に見たなぁ」
魔王が逃げながら呟く。
「ボルケーノ・メテオ!」
ヨアンが構える。
「クローバー様を愚弄したこと、地獄で後悔するが良い!」
ヨアンが腕を振り下ろす。
巨大な火球が魔王目掛けて落ちる。
ものすごい衝撃と熱波が走る。
電柱が熱で溶ける。
「はあ、はあ」
ヨアンが息を切らす。
「いくら魔王でも、火傷ぐらいしたでしょ……」
「当たれば、の話だがな」
涼しげな声が聞こえる。
ヨアンがゆっくり後ろを振り返る。
「避けたのか」
「受けようがない」
魔王が胡座をかく。
「俺が封印されるまでの千年の間、貴様のような絡繰は見たことがない」
「私は絡繰じゃない。魔人だ」
「今の魔人は軟弱なやつばかりなのか?」
「なんだと……!」
ヨアンがいきり立つ。
魔王がにやついて立ち上がる。
「そろそろ興醒めしてきた頃だろう。一騎討ちといこう」
魔王の手から炎が迸る。
「俺は炎を使う。お前はなにを使う」
「私は……」
ヨアンが右手をつき出す。
掌に空から炎を紡ぎ出す。
「火力勝負といこうじゃない!」
宙を舞うガラス片が液体に変化する。
二人の周囲の熱が高まっていく。
魔王が炎を引っ張り、弓矢を構えるようなポーズを取る。
「『朱雀』」
⭐⭐⭐
魔王の放った攻撃はアンデラートにいるバーミックスはおろか遠く離れたアスフェン達にも視認できた。
火柱が天高く伸びる。
「なに、あれ」
アリスが唖然として言う。
「皆~!」
チュンチュンが走ってくる。
「レグルスが連れ去られちゃった!」
「えっ、どこに!?」
「分かんない、多分カンティーナだと思うけど……」
アスフェンが促す。
「おい、とりあえずアンデラートに戻るぞ」
⭐⭐⭐
『並なる均一世界』のアジトに戻ったクローバーは魔王に対する切り札を復活させようとしていた。
傍らの台座に気を失ったレグルスが拘束してある。
クローバーが動きを止める。
「……ヨアンが殺られたか……」
クローバーが準備を再開する。
『ヨアンが稼いだ時間は無駄にはしない』
クローバーの目の前には棺がある。
棺には五本の矢が嵌め込まれている。
クローバーがレグルスを見る。
「お前の身体にある矢を借りるぞ」
⭐⭐⭐
魔王が目の前にあるヨアンの焼死体を踏みにじる。
後ろに気配を感じとり振り返る。
「何者だ」
「お迎えに上がりました、魔王様」
「……カマルか!」
魔王が嬉しそうな声を上げる。
「ええ、魔王様もご壮健そうで何よりです」
白装束の男、カマルが跪く。
「良く生き延びたな」
「魔王様をお一人にするわけにはいきませんので」
魔王が笑う。
カマルも笑う。
⭐⭐⭐
棺が開く。
レグルスの身体が血に濡れている。
棺の中から黒い化け物が立ち上がる。
「ついに復活した……『プロサルモギ』!」
クローバーが勝ち誇ったように叫ぶ。
⭐⭐⭐
カンティーナでの戦いはさらに熾烈さを極めていく。




