カンティーナ事変(4)
「うおおお!」
ジャガウォックが鋭いラッシュを繰り出すが、ヨアンに掠りもしない。
『この獣人のパワーは脅威的だ。本体の戦闘センスがお粗末で良かったよ』
ヨアンがレグルスを蹴り飛ばす。
横から血の刃が飛んでくる。
『あの吸血鬼……。ふん、避けるまでも無いな』
血の刃を腕の一振で消し去る。
「くぅ……!」
チュンチュンが血の刃を連射する。
ヨアンがチュンチュンに向かって歩き出す。
「止めてくれない、服に血がつくじゃない」
「避ければいいだけでしょ」
「猶予をあげてるのよ。あなたがあの糞犬を見捨てて逃げる時間のね」
「レグルスに手を出すのは許さない」
チュンチュンがヨアンを睨む。
視界の端にレグルスが起き上がるのが見えた。
「先に逝ってろ。すぐにあの犬も送ってやるからよ!」
ヨアンが剣を振り上げる。
ヨアンの服の血が泡立つ。
血の縄がヨアンの身体を縛り上げる。
『な、なんだこれは!血の縄……?さっきの攻撃でついた血を変化させたのか……!いやしかし、一度体外に出した血には干渉できないはず!』
チュンチュンが笑いながらヨアンに得意気に言う。
「私が未熟な吸血鬼だと思って油断してただろ!私は帝王種だ、一度飛ばした血液だって思うままに操れるんだよ!」
ヨアンが焦る。
『そういうことか!子供だと思ってみくびった……!だが、問題ない。力で押しきる!』
ヨアンが力任せに剣を振り下ろそうとする。
チュンチュンが拳を構える。
「私にあなたの貧弱なパンチが届くと……ゴハァッ!」
強烈な痛みがヨアンの身体を駆け巡る。
後ろから猛烈な殺気を感じる。
『しまっ……』
ジャガウォックの拳がヨアンに炸裂する。
『この糞犬が起きたことに気付いていたのか……ギリギリまで私の気を引いて』
チュンチュンの拳もヨアンに炸裂する。
『そして、さっきの血の刃の連発でこいつは血液が不足している……!』
チュンチュンの目が血走っている。
『血液が不足した吸血鬼が向かう先はただひとつ……!』
ヨアンが血の縄を破壊して二人から離れる。
「凶暴化か」
『血の縄の作戦に糞犬が気付くことに賭けたのか。狂ってやがる。そしてあの糞犬はしっかり合わせてきやがった』
レグルスとチュンチュンが拳を合わせる。
「私の血呑む?」
「いや、凶暴化が終わっちゃう。このまま押し切りたい」
「分かった」
レグルスとチュンチュンがヨアンに迫る。
「やってやるよクソガキども!」
ヨアンが迎え撃つ。
⭐⭐⭐
アスフェンが腕をクロスさせて炎を防ぐ。
「アッツゥ!」
アスフェンが叫ぶ。
クローバーが呟く。
「……耐えちゃうのね」
アスフェンが城の壁を突き破って戻ってくる。
「そうこなくっちゃ」
クローバーがまた手を召喚する。
「またかよ!」
アスフェンが華麗に避ける。
『アイツの結界をブッ壊さねぇと、全員あの手にやられかねない!』
アスフェンが肉包丁をクローバーに向けてぶん投げる。
クローバーは魔法で盾を召喚して肉包丁を受け止めた。
その隙にアスフェンが一気にクローバーまで距離を詰めて、鳩尾に拳を叩き込む。
「ゴフッ」
クローバーがぶっ飛んで壁に叩きつけられる。
仮面から血が滴り落ちる。
「何が目的か知らんが帰ってくれ」
アスフェンが言う。
「クク、ククク」
クローバーが笑い出す。
「アハハハハハハ!」
クローバーが床に手をついて叫ぶ。
「これからが楽しいんじゃない!」
アスフェンの足元から沢山の手が飛び出してくる。
「ねえ、おいでよ!」
クローバーが狂ったように叫ぶ。
「私が創る平らな世界にィィィィ!」




