ナンパで完敗
ナンパ大戦を執筆していた時は体調を崩していました。(大真面目な顔で書いていたなんて言えたもんじゃない)
「良いこと?なにか思い付いたんですか?」
レグルスが怪訝そうな顔をする。
「いい、アスフェンがまともにナンパしても女の子が着いていく訳がないでしょ?」
「随分角の立つ言い方をしてくれるな」
「事実でしょ。あのよく分からん男は相当な腕前よ、きっと国中の女性を引き連れてくるわ」
「アスフェンさんの分は残ってないですね、あ、お婆ちゃんとかなら」
「とかってなんだ、お婆ちゃんだってレディーなんだぞ」
「アイツにナンパで勝とうと思ったら……」
ケラスターゼが皆を見渡す。
「アイツが落としたことないものを落とせば良い」
「は?」
アスフェンが困惑する。
「ナンパは人間にするもんだろ?男にナンパするつもりか?」
「ちがっ、いや、それもありね……」
ケラスターゼが考え込む。
「おいおい……」
ブリエッタが呆れる。
「一人で突っ走りすぎだぜ……」
ケラスターゼがムッとする。
「だってアスフェンが勝たないと私達アイツの物になっちゃうのよ、そんなのいやよ」
ケラスターゼが歩きだす。
「これで勝てる。アイツ、あまりのショックにナンパ出来なくなっちゃうかも」
アスフェン達も仕方なく着いていく。
⭐⭐⭐
「ふふ、午前から今まで、集めた女性約八千!」
イケメソがビシッとポーズを決める。
後ろの女性達が黄色い悲鳴をあげる。
「全く、あの男はいつになったらくるんだ。
敵前逃亡とは、同じナンパ道を歩むものとして、不愉快だ」
イケメソが扉を睨み付ける。
その扉がバーンと開かれた。
「ふん、遅かったじゃないか、尻尾巻いて逃げたのかと……」
イケメソが固まる。
「いっけなーい、遅刻遅刻ゥ」
醜悪なメイクを施した女性がこちらに向かってくる。
『なんだあれは、魔獣?魔獣をナンパ?それただのテイムだろ』
イケメソの目が胸元のペンダントに向く。
『竜の紋章……竜の紋章!?王族!?』
イケメソが驚愕する。
『声も変だし、まさか陛下ではないよな、いや、まじで頼む』
醜悪が立ち止まる。
「アヴェンド・マービー、ただいま参上!」
イケメソが絶叫する。
「陛下ァァァァァァァァァ!!」
アスフェン達がアヴェンドの後ろに控える。
イケメソがアスフェンにくってかかる。
「貴様ァァァ!陛下になんてことさせるゥァ!」
イケメソがアスフェンのほっぺたを指でグリグリする。
「貴様はぁ!たった今!この国を!汚物に!変えたのだ!」
イケメソが発狂する。
「不敬だァァァァ!極刑極刑極刑極刑極刑ィィィィ!!打ち首だァァァ!」
ぽっと出のオッサンにカルテット国王、即ちカルテット王国をおとされたのである。
大敗北、それに尽きる。
しかし彼はカルテット王国一番のモテ男であり、ナンパの神である。
敗北など到底認められない。
「行け、我が『眷属』よ!この国を汚物に成らしめた放蕩者を成敗しろ!」
イケメソの『眷属』が武器を手にアスフェンに飛びかかる。
アリスとレグルスが咄嗟に前に出て『眷属』の攻撃を弾いた。
衛兵がアヴェンドを連れ出す。
「え、もう終わり?まだ足りないよ」
アヴェンドが文句を言う。
「ナンパが得意ならナンパでケリつけやがれ!」
「女の子だけ戦わせて自分は安全なところですか!卑怯者!」
『『眷属』の攻撃を弾いただと?あの剣士と獣人、只者じゃないな、特に獣人!あの後ろに控えてる別の獣人は何だ?召喚したのか?』
「卑怯で何が悪い!勝つためなら何でもやれ!」
『眷属』達がアリスとレグルスに猛攻を加えていく。
「この子達から嫌な匂いがする。服従魔法かしら……!」
レグルスがジャガウォックを操り、眷属の一人をぶっ飛ばす。
「よし、一人目!」
ぶっとばされた眷属が立ち上がる。
「え、意識はないはず……!」
レグルスが拳を握りしめる。
「死ぬまで主の命令従い続ける……なんてひどい」
「くっそ、殺さないと止まらない、でも殺す訳にはいかない……!」
アリスが眷属の攻撃を避ける。
「師匠、ケラスターゼは!?」
「あいつは国王婦人にこってり絞られてるよ」
「アスフェンさん、あの男をお願いします!アイツをどうにかしない限り終わりません!」
レグルスが叫ぶ。
アスフェンが頷く。
『このいざこざは俺とイケメソの間の問題だしな』
アスフェンが一気にイケメソに距離を詰める。
「お前は女をおとし、俺は国をおとした。
どっちが凄いナンパだと思う?」
アスフェンがイケメソの顔を掴む。
「うぐぐ、ふざけるな、女は俺の所有物だ。死ぬまで俺の素晴らしい生活のために使い潰される……」
アスフェンが遮る。
「お前、汚物がどうとか言ってたな」
アスフェンがイケメソを扉の外にぶん投げる。
イケメソが石畳に叩きつけられる。
「お前のような糞野郎は馬の糞みたく地面にへばりついているのがお似合いだ」
アスフェンが扉を閉めながら付け加える。
「運が良ければ掃除のオバチャンにナンパしてもらえるかもな」
⭐⭐⭐
「うちの生徒が迷惑をお掛けしまして」
学園のトップであるおじいさんがやってきた。
「ああ、私クアルト・ラマンチャと申します。実は皆さんに相談がありまして」
クアルトが揉み手しながら言う。
「相談?」
アスフェンが尋ねる。
「ええ、是非今度開催されます学園交流会にご招待したいのですが」
⭐⭐⭐
ナンパ大戦、終結