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弟子

9部を先に御覧ください

 アスフェンの拳がアリスに炸裂する。

『こいつの打撃、時間が止まってるとしか思えない位速い!』

「オラオラオラオラオラオラオラオラ!」

アスフェンがアリスの顎を撃ち抜く。

「空気すって頭冷やせ!」

アリスが空高く舞う。

「ま、参りました……」

アリスが地面に叩きつけられる。

「うぐぅ……」

「フュートレック、治してやれ」

「嫌よ」

「これで死んだら俺が人殺しになるだろ。それに決闘の勝利条件も相手を屈服させるだけだ」

「わかったわよ、甘いわねアスフェン」

フュートレックが一瞬でアリスの傷を再生する。

「ふぇ?傷が全部なおってる……」

アリスが自分の身体を確認する。

目線をあげてアスフェンを見るやいなや土下座をかました。

「どうかあなた様のお弟子にしていただけないでしょうか!」

「はあ!?」

アスフェンが驚く。

フュートレックも泡を食ったような反応をする。

「私は自分の未熟さを改めて痛感しました。どうかあなた様のもとで私を鍛えていただけないでしょうか!」

アリスが額を地面に擦り付けて頼み込む。

「アスフェン、弟子にとってあげなさいよ」

フュートレックがニヤニヤしながら言う。

「やだよ、俺教えるの苦手だし」

「あら、嫌だって言うならこの子の傷を『逆転魔法』で元どおりにしてあなたを人殺しにしても良いのよ?」

「……卑怯者め」

アスフェンがフュートレックを睨む。

「あ、あの、弟子にしていただけるのですか?」

アリスが瞳をうるうるさせて尋ねる。

「うがーっ!もう好きにしろー!」

アスフェンが発狂してどこかへ走っていく。

アリスが飛び上がらんばかりに喜ぶ。

「いやった~!」

遠くから眺めていたケラスターゼとレグルスがフュートレックに白々しい目を向ける。

「あの人、滅茶苦茶性格悪い……」

「腹黒ウィザード……」

フュートレックが振り返る。

「聴こえてるわよ、お嬢さんたち?」

「ひっ!」

ケラスターゼとレグルスが走り去る。

決闘を見ていた野次馬とアリスもどこかへ去り、フュートレックがその場に取り残される。

「……私そんなに性格悪いかしら。彼とたくさん話したいだけなんだけどな」

フュートレックがアスフェンのことを考えて頬を赤らめる。

生きてこの度500年、彼女が全てを委ねたいと思った唯一の男、それがアスフェン・ヴェスレイである。

残念ながら彼女の恋が実ることは決して無い。

それは彼女がおこなっている『遊戯』に大きく関わっている。


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