出発前から大事件
まだ日本。
七月某日。
私は全身から滝のような汗をかいていた。
以前はビザがいらなかったというとある国へ、このお盆休みに旅行するためにビザ申請の受付にやってきたのだが。
書類が足りないと言われてしまったのだ――
ことの始まりは、私が仲良くさせていただいている外国人一家に、彼らの本国へと招待されたことだ。
このコロナ禍のため、彼らもほぼ五年も帰っていないという。五年ぶりに帰省するので、私も連れて行ってくれるというのである。
正直、ビビった。
外国なんて行ったことないぞ。
大昔(十年以上も昔)に母親に連れられてパスポートを取った記憶はあるのだが、一度も使わないうちに失効した。我が家は私も父も出不精な方なのだ。特に読書漬けこそ休日の醍醐味だと思っている私はそうだ。
飛行機に乗ったのは、高校時代の修学旅行(九州行き)くらいだし、その時も機内サービスとかそんなもの全くわからないまま乗っていた。
しかし「ぜひ行きます!」と言う以外の選択肢はなかった私は腹をくくるしかない。
行き先、喋れない言語の国。
同行者、現地人な一家四人。
おんぶにだっこ状態で旅行なんて人生最初で最後かもしれない。全力で甘えると決めて、パスポートを取り直した。それはさすがに私が自分でやった。
そしてその国へのビザ申請は同行者一家に丸投げ、そして予約された日にビザセンターに必要な書類と申請者である私、通訳役として同行者一家の母親が向かったところで――
「書類が足りません」
「なぜだ! そんな書類が要るなんて書いてないじゃないか!」
――というやりとりさえ、現地人職員と同行者一家が現地語でするので、私はただ通行人をブロックする置物になっていた。
断っているらしい職員と食い下がる母同行者。ここで受け付けてもらえないとまたしても予約するところからやり直しだ。予約は一月ほど待たされたので、また一月も待つことになって、飛行機の予約が埋まってしまう。それはわかるが会話には入れない。
最終的に「仕方ないから、今持ってきた書類は預かって、足りない書類が来たら続きからやってあげる」という話になったらしい。
――ええい、何がマイナンバーだ!
あのど田舎、その市内のコンビニからでなければ書類がゲットできないなんて!
遠くからこそコンビニで印刷できるようにすべきだろうがー!
これじゃなんの意味があるんだー!
そう思いながら「速達」のハンコを押してもらって、郵便局から書類の郵送を要請する私であった……。
――というのが、前日譚の、さらに前日譚というところである。
これは、初めての国外にビビりまくっている今の私の、100%初心者目線の旅行記のようなものである。
私みたいに、右も左も前も後ろもわかっていない状態で旅行に行くことを迫られた人の参考になったら、少し嬉しい限りである――
――なお、まだ帰国していないので無事に完結することを祈っていてほしい。帰国まで、あと数日……。
次もまだ日本。