Case.4 喧嘩別れ
短いかもしれない……
ここだよな、SNSで噂の喫茶店‘お命頂戴致します。’は。物騒な名前だけど、大丈夫か?
「「いらっしゃいませー」」
うおっ、イケメンキラキラ☆ 慣れてるとはいえ、いきなりはビビる。そういえばSNSではイケメン兄弟が経営してるって話だったな。ここまでとは……。
「ご注文伺いしてもよろしいですか?」
「あー、えーと。カフェラテを一つ。ラテアートはドロップで」
あんまり声出すと周りにバレるんだよな。ヒヤヒヤもんだ。人気者は困るぜ、全くよぉ……。
「かしこまりました。では、しばらくおまちください」
―――2時間後
「『しばらく』って2時間かよ?俺は少ない時間の中でここに来てんだ。時間がないから単刀直入に言う。
うちのバンドをなんとかしてくれ。一応っていうか、確実に俺がヴォーカルだけどギャラが俺の方が多いって文句を言うんだよ。理由は単純。作詞も作曲も俺だから著作権で、カラオケやらTVやらラジオやらで曲が流れるたびに俺にギャラが入るんだよ。当たり前だろ?
それをうちのバンドのメンバーは気に入らないみたいでギャラは平等にするべきだ。とかさぁ。そりゃあ、出演料とか公演料は平等だけど、曲作ってんのは俺だから勘弁してくれよって」
尊「それ、メンバーに言いましたか?」
「もちろん言ったけど。聞く耳持たず」
尊「あなたの望みは?バンドの解散ですか?」
「メンバーの説得を頼みたい」
尊「わかりました。ではまた、1週間後にここで」
「ちょっとまて!ちゃんとスケジュール帳持ってきた。あぁ、ちょうど1週間後は俺オフだ。OK。1週間後にここに来る」
悟「兄貴、兄貴ー!今最も売れてるIYEHOのhoujiじゃん。やっぱそういうバンドでも揉めるんだねー。しかもお金がらみって。醜い!しかも、サングラスかけてるけど、高級ブランドのサングラスだからかなりバレバレなんだけど(笑)」
尊「顧客の守秘義務だぞ。家の中だけにしろよ。で、キャサリン。今回も頼む」
「尊クンに頼まれたら断れない!イケメン成分がなくならないうちにさっさと終わらせてくるワ」
尊「頼もしいよ」
「頼られるとクラクラしちゃう~」
―――1週間後
尊「調査結果です。えー、バンドメンバーはギャラに関して平等であれ。って感じです。著作権含めてです。
言い分は、『苦労を共にしてきて、やっとメジャーデビューして上に立ったのに、この仕打ち?ちょっと酷くない?』だそうです」
「いやいや、メジャーデビューできたのは俺が作った曲ありきでしょう?」
尊「交渉決裂ですね。どうします?」
「バンドの解散はちょっとなぁ……」
聡「では、喉の切除手術をしましょうか?ヴォーカルの貴方が声を出せなければバンドとして活動できません。しかしバンドの解散はありません。メンバーが言い出さなければ」
尊「そうだねぇ。そうすれば、貴方には著作権でギャラが入ります。メンバーは知ってか知らずか。バンド活動してないからよくわかんないかもなぁ。ここのとこは神のみぞ知るですけど。少なくとも、出演料とかでギャラが……とかの苦情はないでしょうね」
「喉かぁ……」
聡「もちろん、手術代はこちらでもちます。執刀医は私です。術後の専門スタッフも紹介します日常生活に不自由しない程度には、声が復活します。ただし、今までのような歌声は無理です」
「「「では、“お命頂戴致します”」」」
尊「IYEHOはhoujiの歌声がバンドの魅力だったからなぁ」
「悟クンは聡クンの助手なのね。あ~、その手術室も神々しい!」
尊「ほーんと、悟は器用だよな。ラテアートといい、兄貴の助手といい」
「よく手術の道具の名前覚えれるわネ」
尊「あれ?キャサリンに言ってなかったっけ?悟、医療系短大生だよ」
「うそ~!なんて素敵なキャンパスライフなの!悟クンは癒し系よね~」
尊「そうなのか……」
~その後の依頼人
悟「曲はよく聞くけど、houjiの声がもう戻らないのは悲しいなぁ」
尊「その手術に立ち会ったお前がよく言う」
聡「声って言えば、最初は筆談しかできなかったんだけど、最近ちょっとづつ声出てるらしいよ。専門スタッフって偉大だよなぁ」
尊「本人は筆談でも昔みたいに書かなくてもタイピングすれば、世界の人と会話できるから楽しいみたい。ギャラについても今はhoujiが全くTV出演してないでしょ?だからメンバーからも何も言われないみたい。houjiとしては、メンバーが飼い殺しみたいだから、解散して他のヴォーカル探した方が…って思ってるみたいだけど」
悟「尊兄貴はそういう意見かもだけど、houjiみたいな歌声の人はなかなかいないよ」
聡「もう顔は売れてるんだから、どっかのバックバンドとかさぁ。新たにバンド組むってなると、薄情とか意見が出そうだろ?」
尊「もう、成人越えてるんだからさぁ『後は好きなように生活してください』じゃない?」
聡悟「「ああ、そうだな」」
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