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Case.3 種がいっぱい。

うむ、ここに頼むしかないな。では行かん!

「秘書も運転手も俺がここに来たことは忘れるように。いいか?『忘れる』んだぞ?」

「「わかりました。仰せのままに」」


「「いらっしゃいませー」」

 何と言うか、イケメンが対応なんだな。普通の喫茶店のようだが?見渡せば客は女性ばかりのようだな。

「ご注文をよろしいでしょうか?」

「カフェラテを。ラテアートはドロップで」

「かしこまりました。しばらくお待ちください」


(さとる)「どう思う?」

悟は器用にもカフェラテを作りながら小声で話しかける。

(たける)「うーん、来店前に黒塗りの外車が店の前に止まってたんだよなぁ」

尊悟「「うーん」」

尊「とりあえず、話を聞いてからだな!お前はラテアートを描いて」

悟「兄貴はこういうの苦手だもんねー」

尊「なにおう!!」


「ちょっとちょっとー、イケメン兄弟が口喧嘩よー。なんか眼福でごちそうさまですって感じよねー」

「うわー、私見逃した!」

「滅多に見られないもんね。ここだって、不定休だし、いきなりcloseになってたりするし」



―――2時間後

尊「遅くなりましたが、ご用件は?」

(俺は交渉担当なんだよ!ラテアートとかは悟の担当だ)

「私はこういう者です」

 差し出された名刺には、有名企業の‘代表専務’とあった。

「私以外の代表専務を事故に見せかけて殺してほしい」

尊「えー、当方は殺人はしませんが。とりあえず話を伺いましょう」

「‘代表専務’というのは名誉職でというか、作られた名誉職で私を含めた代表専務は7名います。その全員が父の愛人の子です」

尊「本妻の子は?」

「本妻には子はいません。よって、代表専務が私だけになれば会社・その他諸々が私のものになるというわけです」

尊「つまり、遺産相続ということですね?」

「まぁ、平たく言うとそうですね」

尊「では、2週間後にまたここに来てください。そのときにお返事を致します」


 尊は聡と悟に説明した。

聡「うちは殺人はしないと決めてる!」

悟「こないだ偽装で殺人したじゃん」

聡「それはそれだ!」

尊「なーんか胡散臭いんだよねー」

 尊は名刺を指ではじきながら言った。

尊「キャサリーン!悪いんだけど、この会社に潜入して調査してくれる?」

「任せて!何のために日々男装してると思うの?男の格好してるとねぇ、男からは上司の愚痴、女からは同僚の愚痴が聞けるのヨ」

聡尊悟(((男装……?)))



―――翌日

  ここに頼むしかないな。はぁ。

「秘書も運転手も俺がここに来たことは忘れるように。いいか?『忘れる』んだぞ?」


「「いらっしゃいませー」」

「ご注文をよろしいでしょうか?」

「カフェラテを。ラテアートはドロップで」

「かしこまりました。しばらくお待ちください」



―――2時間後

尊「遅くなりましたが、ご用件は?」

「私はこういう者です」

 差し出された名刺には、有名企業の‘代表専務’とあった。

(マジかよ?俺、ため息出そう……)

「私以外の代表専務を事故に見せかけて殺してほしい」

尊「えー、当方は殺人はしませんが。とにかく話を伺いましょう」

「‘代表専務’というのは名誉職でというか、作られた名誉職で私を含めた代表専務は7名います。その全員が父の愛人の子です」

尊「本妻の子は?」

「本妻には子はいません。よって、代表専務が私だけになれば会社・その他諸々が私のものになるというわけです」

尊「つまり、遺産相続ということですね?」

「平たく言うとそうですね」

尊「では、2週間後にまたここに来てください。そのときにお返事を致します」


尊「キャサリンが調査中だよな」

悟「結果はまだ先だけどさぁ……」

聡「これって、まさか……」

聡尊悟「「「あと5人続く?」」」

尊「俺、面倒。悟、替わって!」

悟「えー、やだよ。俺は大人しくラテアート描いてるから。尊兄はラテアートできないだろ?」

尊「……(どーせ俺は不器用だよ)」


翌日から続くこと5人、同じように自分以外の‘代表専務’の殺害を依頼してきた。予想通りだけど、対応が面倒臭い!


尊「はぁ、もう1週間は代表専務との交渉しなくていいな。なんだかスッキリ」

聡「お前はそうかもだけど、そんな中キャサリンは調査してんだからお前も頑張れよ」

尊「へぇーい」

 そう言って俺は店のホールの方に足を踏み入れた。窓の外、何だろう?黒塗りの車から車いすに乗った壮年の男性と車いすを押す女性が見える。


「「いらっしゃいませー」」

「ご注文、決まりましたらお呼びください」


「カフェラテ。ラテアートはドロップ」

「お義父さん、もうちょっと柔らかく……」

「すいません。カフェラテを一つ。ラテアートはドロップでお願いします」

「かしこまりました。しばらくおまちください」


尊「不審だ…。二人なのに、注文が一つ……。肩の荷が下りたと思ったのに、嫌な予感。」

悟「兄貴は心配性だなぁ。大丈夫だよ!」

「不肖、私も見ております故……」

尊悟((瀬蓮!ありがとう‼))


―――1時間半後

尊「で、用件は?」

「すまん!うちの愚息どもが!!」

尊「??……とりあえず頭をあげてください」

「とにかく名刺を……。おい、頼む」

「わかりました。お義父さん」

 差し出された名刺には、最近ずっと来ては殺人依頼をしていた会社会長とあった。

尊「……えー、息子さんたちは代表専務をしてらっしゃる会社でしょうか?」

「いかにも」

尊「で、その会社の会長でお義父さまでよろしいでしょうか?」

「あー、息子たちが大変な迷惑をかけた。申し訳ない!!互いに殺し合うなど一族の恥!」

尊「えーと、今日一緒にいらっしゃっている女性は?」

「おーおー、嫁にやらんぞ。私の身の回りの世話をしてもらっているが、恥ずかしながらこの子も愛人の子の一人でな。唯一の娘だ。可愛いかろう!」

(気のせいだよ。親の欲目100%だね、こりゃ)

尊「えーと、それで私たちはこの後どのようにすればいいのでしょう?」

「息子共はおおかた私の遺産狙いだろう?」

(それ以外に何がある?)

「私の遺産だが半分は孤児院に寄付することにしている。顧問弁護士に書類を用意させている」

尊「残りの半分は?半分でも相当な遺産になるのでは?」

「可愛い娘にと思っている」

尊悟((へぇー))



尊「はぁ、娘自慢が1時間続くと思わなかった……」

悟「お疲れ~」

尊「お前はいいよな。ラテアートの練習に逃げれるから」

聡「娘、そんなに可愛いのか?護衛つけてるのか?」

尊「それなんだよなー。可愛い自慢して、遺産も相続させるってのに護衛の一人もついてないんだよ。胡散臭くね?」

聡「キャサリンとも連絡とってみるか」



「もう!イケメン成分が補充できなくて、この会社なんなの?イケメンが全然いないじゃない!」

聡「キャサリン、調査してどうだった?」

「まぁ、イケメンはいない。ってのはそうなんだけど、あの代表専務達ね。普段から仲悪いみたいなの。兄弟仲は最悪ね。いっつも会っては服装とかでいがみ合ってるみたい。受付嬢が言ってたワ。あと、上司としても最悪な評価ね。自分はたいして仕事ができないくせにって部下に言われてたワ。これは休憩喫煙室で聞いた。

 不思議なのは、会長といつも一緒にいる娘ネ。この子のことは社内では噂になってない。会長の娘ってのは認識されてるけど、ソレダケ。会社の会議にも参加するし、一日中会長といるみたいよ。

 私ならあんなむっさいオッサンと一日中一緒なんて御免だけどネ」

悟「なるほどねー。確かにあの娘、胡散臭い。会社の中枢の会議にも地味ーに出席してるしな」

尊「悟、お前が車いすに乗ったおばさん(むっさい)と一日中一緒って耐えられるか?」

悟「何の修行だよ(笑)。俺にいくら入るんだ?無償ではむり有償でもあんまりやりたくない」

聡「あの子は有償なんだよ。『莫大な遺産』っていう」

尊「そこまでは理解できた。護衛がいないっていうのは?」

「はーい。わたしが社内で聞いた少ないウワサだとね。あの娘、格闘技の有段者なのヨ」

尊「それにしても、飾りでも護衛つけるよなぁ?」

悟「信用してるか、彼女がすさまじく強いかだよ!」

聡「お前は楽観視し過ぎだ。暗殺ってのもあるからな。彼女の盾になる感じでも護衛いた方がいいと思うんだけど。あのおっさん、けっこう食えないな。キャサリン、頼む!おっさんを含めて主に彼女についても調査を続けてくれないか?」

「聡クンに頼まれたらやるわヨ。彼女にはちょっと殺気ぶつけてみたりもしてみるワ。あー、もぅ。早く終わらせて、私のオアシス‘お命頂戴致します。’に行くワ。イケメン成分を補充に」

聡尊悟「「「頼んだ」」」



 ふふ、男共はお義父さんに嫌われるかのように互いに殺し合い。遺産は半分になっちゃったけど、私が総取り!護衛なんていらないわ。私を狙う奴いないし、私自身孤児院で鍛えられたのよね。何故だか。弱いフリで狙われた方がイイかしら?ちょっと街のチンピラやとってみましょうか?護衛がいた方がソレっぽいわよね。



最初の依頼から2週間後

店に集まった面子を見て、代表専務の一人が言い放った。

「何だよ家族団欒じゃねーか」

「こん中の誰かがなんかやったんだろ?」


尊「えー、お集まりいただき誠にありがとうございます」

「挨拶はいいから、結論を言えよ」

尊「結論……よろしいですか?」

 尊はそれぞれの顔を見渡した。もちろん、娘と父も含め。

尊「息子さん達はお互いに殺しを依頼してきました。そのことはお父様もご存じなので、親子でどうぞ話し合ってください。

 お父様の好きな娘様ですが、娘様はお父様よりもお父様が残す遺産の方がお好きなようです」

「ちょっと!勝手なことを言わないでよ。私はお義父さんが好きよ。信じて、お義父さん」

「もちろん信じているさ、娘よ」

尊「遺産が半分になることには仕方なく了承したようです。それでも残りが『莫大な遺産』ですからね。不思議に思ったのは、彼女に護衛がいなかったことです」

「それはこの子が強いからだ」

 娘を見る目は相変わらずなんか分厚いフィルター越しでは?と疑ってしまう。

尊「それにしても、弾除けとかそういう理由で護衛をつけている人はたくさんいます。この時代、物騒ですからね。彼女、最近街のチンピラに襲われたそうですね?」

「あぁ、それであわてて娘に護衛をつけたところだ」

尊「そのチンピラ――彼女が金で雇った人たちです。完全なる自作自演です」

「嘘だ。嘘だろ?嘘なんだろ?」

「そんなのどこに証拠があるのよ?私が雇ったっていう。お義父さん、嘘に決まってるじゃない。どうせ、お金目当ての街のチンピラよ」

「それがねぇ。貴女がのした後にここの聡クンが治療して色々教えてもらったのヨ。確かに街のチンピラだけど当面のお金目当てじゃないワ。お金は銀行振り込みだもの。銀行のカメラに貴女が映ってるんじゃないかしら?」

「そりゃあ銀行は利用するから映るでしょうね。うちのお金の出し入れは私が父の命を受けてしてるから」

聡「銀行振り込みの話もそうだけど、街のチンピラからたしかに貴女から依頼を受けたと聞いた」

「嘘よ」

悟「いやぁ、自分を治療してくれた人に嘘吐くかなぁ?」

尊「命の恩人だもんなぁ……」

聡「大袈裟だな。治療っていうよりか、手当てだなありゃあ」

尊「えー、それでも何もしない人よりずっと信用できる。見ず知らずの人ならなおの事!」

「……」

「おい、お前の自作自演だったのか?」

「……」

「無言は肯定の意味だぞ?」

「……」

尊「だそうです。調査の結果、息子さんたちは互いに殺し合い、娘さんは以上のようなことをしました」

「ふーむ、そうか。お前たちにはガッカリだ。失望した。では、子供たちに遺産を残すことはしない。人道に反するような人間に私の財産を残したくない」

聡「どうしますか?」

「4分の3を孤児院に寄付する。残りはここに寄付することとする」

聡尊悟「「「いいんですか?」」」

「ふむ。ここにはうちの子がさんざん迷惑かけているからな。それに調査の情報屋さんにも払わんといけないだろ?店だって、我々が占拠しなければ営業できたわけだし」



~その後の依頼人

「あの父は子供を一斉に勘当してみたいヨ。自分の世話には専門の業者に委託するみたい」

尊「へぇー。うちに遺産の4分の1を残してくれるみたいだけど、あのオッサン……しばらく死なないよな」

聡「医者の目で見てもそう思う。車いすはポーズだな」

悟「今回の騒動はまさに自分で蒔いた種(子種)って感じだよね」

「代表専務って名誉職だったみたいだし、彼女もそこそこ小遣い貰ってたみたいだから、贅沢しなければまともに食べていけるんじゃない?」


聡尊悟「「「ゔぁー‼」」」

「どうしたの?」

「いかがなさいましたか?」

聡尊悟「「「“お命頂戴致します”ってやってない!むしろ頂戴してない!」」」

「遺産でいいジャナイ?」


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― 新着の感想 ―
今回のケースは遺産相続系だね。依頼者は有名企業の代表専務。内容は、他の代表専務6名の事故死に見せかけた殺人依頼。聴くと代表専務は、全員、現会長の愛人の子供との事。その後、他の6人の専務からも同様の依頼…
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