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真実はどこにある?ここにある?

食堂にいたはずなのに、僕は気付いたら宿屋にいた。

どうやって宿に帰ってきたのか、昨日の食堂からの記憶が途切れている。


まだ日は登っていないので、朝の船に乗り遅れたわけじゃないだろう。


昨日は食堂でおかしな事はしなかっただろうか。


あの兵士達に僕が元王子の子供と気付かれたら、捕まるのだろうか?

王様から国を乗っ取りすなわちクーデター、よく国外追放で済んだと思う。


だから、両親はあの国のはずれの、国の目が届かない所で逃げてきたのか。


いや、あの兵士達の言葉の全てを信じる訳にはいかない。

何らかの理由で父様が国から邪魔な存在として、何者かに反逆者に仕立て上げられた可能性もある。そうなると怪しいのは先王と現王となる弟だろう。


まずは、先王と今の王に関する情報を集めよう。

村だと王様の名前もわからなかったから、今の国での評判が悪ければ、父様は無実の罪を被せられてた可能性もでてくる。


そんなことを考えていると、外が白んできた。

今日はどれ位寝れたんだろうか。

今日は船に乗るのに、睡眠不足だと船酔いしそうだが見送れる程路銀にゆとりはない。


宿の朝食でパンと魚介のスープが出てきた。魚介の出汁が舌に沁みいる。つくづく、昨日のアクアパッツァの味が記憶から途切れているのが残念、と思いつつスープにパンを漬けて一滴も残さずに掬い取る。


食べ物のことを考えれる位には、昨日のショックからは立ち直っているようだ。


支度をして港へ向かう。

王都への船を道々の人に聞きながらたどり着いたら、昨日の3人の兵士達が船に乗り込むのを待っているところだった。


「おや、ディアス君じゃないか。君も王都に向かうのかい?」


見つかってしまったので、ここから逃げるのは怪しまれる。

昨日自分がどこまで話したのか、直接あたるしかないようだ。


まぁ、変な事を言ってたらぼくを見かけたらすぐに捕まえられるだろうし。


「あぁ、隊長さん。おはようございます」


意識して満面の笑顔で挨拶をして近寄っていった。


「昨日は大丈夫だったかい?店の女将も酒じゃないみたいに果実酒をすすめたもんだから、途中で呂律が回らなくなってたよ?何とか宿の名前だけ聞けたから送っていったけど。酒を初めて飲んだみたいだったよ」


「そうだったんですね、すみません。ご迷惑じゃなかったですか?」


あれ、お酒だったんだ。

記憶が無いのはそのせいもあったのか。ちょうどいい具合に誤解されてるならそのまま乗っておこう。


「いや、君は背丈の割に軽かったからね。宿屋までマルセロが、あの若いのが背負っていったけど、もう少し思い方があいつの訓練になった位だよ」


「えぇ、初めて飲みましたお酒。村でも12才だとまだ若いって言われまして、飲ませてもらえませんでした」


元の世界も含めて初めて飲んだんですし。でも飲みやすくて一度に結構飲んだから急に酔いが回ったのかな?


「12才だぁ?はぁ~、背丈から18、9くらいだと思ってたよ」


3人とも目を見開いている。


「まぁ、地方によっちゃぁ君位の年から飲むところもあるそうだし、あそこの女将も勘違いしたんだろう」


そうですね、と返すが、あの女将に歳は伝えたんだけど。

もしかしたら、若いから飲みやすいお酒を出してくれたってことなのかな?

だとしらたせっかくのサービスだけど、ちょっと説明されたら断ってただろう。


「皆さんもこの船ですか?」


「あぁ、俺達は配属が王都に異動になったんでこいつで行くんだ。そういえばたしか、ディアス君も王都にいる親類を訪ねるって言ってたか」


「はい。まぁ、事前に連絡はしてないんですけど、住んでる所は解ってるので押しかけていこうかと」


この言葉全てに嘘はない。

話をしている間に、船へ入る準備ができたようだ。桟橋から人が船に乗り込みだしている。


「お、船の準備ができたみたいだし、王都に着くまでの2日間よろしくな」


「はい、こちらこそ」


僕たちは船に乗り込みながら聞いてみた。


「そういえば、昨日のお話途中から覚えて無かったんで、もう一回聞かせてもらえますか?」


「ん、あぁ君の母上と、元王子の妃の名前が同じって話か。えぇっと、どこまで覚えてる?」


「はい。あの国を乗っ取ろうとして国外追放になった、という所までは覚えれるんですけど」


「おい兄ちゃん、そいつはあの『放蕩ドルフ』のことか?」


と、順に乗り込んでいる後ろの商人らしき人が話に割り込んできた。


「俺ぁ、王都で商売してるんだが、あの放蕩王子には散々な目にあわされた。勝手に店の商品を持って行って、代金を城に貰いにいったら知らない、払わないって言いだすことが何度あったか」


さらに後ろの男が会話に入ってくる。


「うちは強引に馬を『ちょっと借りる』って連れていかれたけど、帰ってきた馬は足が折れてたんだ。その馬は、そのまま歩けなくなって結局終いだ!代わりの馬を探すのにどれだけ苦労したか!!」


「あのドルフの事なら俺にも言わせろ。うちの娘は嫁入りが決まってたのに、あの王子に無理やり傷物にされたんだ!!そのせいで嫁入り話も流れて、その後娘は引きこもったあと、突然家から出てっちまったんだ!!あのクソ王子、王様もお優しくて追放で済ませたけど、そんなんじゃ俺の怒りは納まらんよ。目の前にいたらこの手で殺してやる!!!」


なんだか、ヤバい話しがどんどん出てきた。

噂話位だったら国の印象操作で何とでもなる、とか思ってたけど、市民に迷惑かけまくってますね父様。

信じたくないけど、これは父様の方が(クズ)だったので間違いないだろう。


もし僕が今『その(クズ)王子の息子です』て言ったら代わりに僕が殺されるんじゃないか?



真の王様と言っていた父親が、本当に屑王子だったので、詰みました。

有力貴族に王族のに証を見せて復権を図ろうと思ってたけど、どう考えても僕が悪者になる。


辺境で王族なんて言わないで他人として生きるか、それとも他の道はあるのか?


船が出航しているのにも気付かないほど、僕はずっと考え込んでいた。

そのせいで、隊長から言われた一言に生返事をしてしまっていた。


「昨日あってこの船に乗り合わせたのも何かの縁だ。ディアス君、王都に着いたら君の親類を探すのを手伝おう」


「ありがとうございます、助かります」


答えてから我に返った。

一体僕はどこの親類探しを手伝ってもらうんだ?


きっと、両親が亡くなってから親類を頼って都に出てくる子供に対する親切心からきた言葉なんだろう。

でも、本当のこと言ったら親類は王様になってしまう。


下手に逃げたら捜索されかねない。

でも城に行って身分がばれたら、そのまま捕らえられて終わるのか。


詰みでもまだ逃げ道が残ってた所を、自分で逃げ道を塞いでしまった僕は、これからどなるのだろう。


そんな僕の唯一の幸運は、考え事に夢中で船酔いはしなかった。


読んで頂いてありがとうございました。


どんなに困難が立ちはだかっても、少しくらいの幸運は訪れている、そんな回です。

その幸運は『船酔いしない』ですが・・・


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