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旅路の果てに・・・

その後の旅は順調で、クレイの町にたどり着いた。


マガトさんの家にも招待されたが、マガトさんが『背丈を抜かしたら』と話していた子供がまさか僕より小さい女の子だった。

てっきり男の子かと思っていたが、マガトさんは女の子に背丈を抜かせって言ってるのか・・・

でも、お子さんに会った時のデレデレのマガトさんを見ると、ただ僕を息子に見立てて、格好をつけたかったのかもしれない。


クレイの町で毛皮を換金したが、結構な金額になったようだ。

相場は旅立ちの前にマガトさんから聞いていたより少し毛皮が高くなっていた。


あと、どうやら銅貨10枚で大銅貨、大銅貨10枚で小銀貨、と10枚ずつで硬貨が変わっていくとのことだ。

結果、手に入ったのは銀貨4枚と小銀貨3枚、大銅貨2枚と結構な値が着いた。

これにニベツ村で手に入れた銅貨210枚と合わせると、旅の路銀としては安心できる額になっていた。


旅の前に危惧していた資金不足も、狩りの成果が想定以上に良かったこともあり、マガトさんを別れた後すぐに次の町へと出発した。アソウの港町までは、元々町同士の交流があるようで、毎週乗り合い馬車が出ていた。ほとんどの荷物は毛皮だったので、今の荷物は少量の食料とニベツ村で手に入れた短剣、王家のナイフと旅立つ時に持ってきた弓位だった。

ほぼ手荷物なので、乗り合い馬車も料金は小銀貨1枚と、村を出た時のことを考えると格安だった。

ウサギの毛皮だと3枚程度だ。


クレイの町から乗ったの乗り合い馬車は、今までのような森の中ではなく平坦な道や丘陵で、狩りとなるような獲物はいないようだ。これからはこの弓の出番はしばらくなさそうだ。


アソウの港町まで4日かかる道のりだが、毎日宿場町に寄っていたので、食事も寝床もそこで行う。毎晩ベッドで眠れるのはありがたかったが、クレイの町よりは少々割高な料金になっていく。

これは都市部に近づくに連れて物価が上がるのはこの世界でも同じなんだろう。


道中で馬車が盗賊に襲われることも無く、無事にアソウの港町にたどり着いだ。


街並みががらりと変わり、石造りたモルタルの建物が見られるようになった。

ここはかなり大きな港町のようだったが、交易というよりは軍事拠点のように見える。商人達もいるようだが、外の海から来ている船の荷下ろし、などはあまり見られず、一時寄港のようだ。やはり荷は王都で下ろすのだろう。


ここにきて、物価がクレイ村の2倍近くになっていた。

宿屋を3件回ったが、どこも一泊で大銅貨5枚だったので、部屋は狭いが朝食付きの宿を選んだ。

ベッドのランクは上がっているようで、寝心地は今まで生きてきた中で一番良かった。


宿に弓などの荷物を置いてから、近くの食堂へ入った。

折角の港町だ、この世界で生まれて初めて食べる海の幸を堪能しようじゃかないか。



カウンターに座り、その店のおすすめ料理を頼んでみる。

飲み物は最初水と頼んだら、店の女将さんに「酒はいいのかい?」と聞かれたけど「12才なんで」と答えると、なにやら果物のジュースがあるそうなので、それをお願いした。


料理が届いたが、鯛のような魚と貝、野菜とをハーブで蒸し焼きにしたようで、アクアパッツァみたいだ。

魚の身を食べると、口の中でホロッと崩れるほど柔らかくて、塩味も貝の出汁も効いていて、本当に美味しい。

森で作った野草と干し肉のスープから比べると、そこには塩によって天と地ほどの差があった。果物のジュースも甘酸っぱくて飲みやすい。


僕が料理にかぶりついていると、鎧を着た男たちが3人入ってきた。


「前もって言っておくが、飲みすぎるなよマルセロ。あとギュンター隊長も。まぁ、言っても聞かないでしょうけど」

「小管はちゃんと先輩の言うことを聞きますよ、気絶したら飲むのをやめるので。でも隊長殿は酔ってたら死んでることにも気付かなさそうですが、はっはっは」

「お前らなぁ、もちっと上官が敬え。しかし期待してるところ悪いが、今日は酒抜きだ。明日の船に乗り遅れたら、ハウフの奴にどんな嫌味を言われるか。優秀な幼馴染を持つ苦労がお前達には分かるまい。というわけで女将、そこのカウンターの兄ちゃんのと同じ物を人数分頼む」


今日は酒は無いと言われた二人は不満を口にしたが、隊長と言われた人をからかっているだけのように見える。

身なりからして兵士みたいだ。ここは王都の直前の町だ。兵士が多くなるのも仕方ないだろう。


せっかく感動の料理を前にしているけど、絡まれると面倒そうなので関わらないように、僕は静かに味わって食べることにした。

それなのに、その隊長と呼ばれていた人が僕に話しかけてきた。


「すまんね兄ちゃん、おや、偉く若そうだが一人かい?親はどうした?」


「母は4年前に亡くなりました、父はそれよりも前に。それで、王都に親類がいると聞いて訪ねてみようかと旅の途中です」


男はバツが悪そうな顔になった。


「そいつはすまなかったなぁ。詫びの印に、ここは奢らせてくれ。で、兄ちゃん名前は?」


「ディアスです」


「亡くなった母上の名は?」


母の名までを聞いてきたのが不意を突かれて、つい本当の名前を答えてしまった。


「マルテです」


兵士達のもとに料理と飲み物が出された。そして、兵士達はグラスを掲げ、


「ディアスの母マルテに」


と隊長が言うと、二人も声を揃え


「ディアスの母マルテに」


杯を掲げたあと、隊長が僕をみて片目をつぶった。

軽い人達に見えるけど、どうやらそれだけじゃ無いみたいだ。


3人が食べ始めて雑談が繰り広げられていたが、誰かが


「そういえば、マルテと言ったらあの元王子妃と同じ名前だな」


食器の音が止まった。


「あの元王子か・・・」


もしや、この人たちは両親の事を知ってるんだろうか?

ついうっかり母の名前を口にしてしまったけど、初めて村の外で両親のことが聞けるかもしれない。

危険だけど、探りを入れてみる。


「へぇ~、母は姫様と同じ名前なんですか?僕は辺境の村の出なんで詳しく知らないんですが、どういった人なんですか?」


ちょっとだけ踏み込む。


「ん?いやぁ、まぁとっくに公表されてることだしな。今の王には兄がいて、その兄は先王の妾の子だったんだよ。それが、妙な家臣の口車に乗ったらしく、先王から国を乗っ取ろうとして国外追放になった。で、妃様も確か王子についていったはずだ。まぁ、良い噂は聞かなかった人ではあったけど、そんな度胸があった風にも見えなかったしな。まぁ、兄ちゃんがもっと小さい時の話だ」


えぇっと、この人は何を言ってるんだろう。

多分、この人が言っている今の王の兄っていうのが、きっと父様のことだろう。


国を乗っ取ろうとして?国外追放になった?


いや、聞いてた話と違うよ~


真の王様と言っていた父親が、実はクーデターに失敗した王子だったらしいけど、すぐには信じられないので、まずは真偽を確かめることにします。


読んで頂いてありがとうございました。

この作品で当初から構成にあった、父親の素性を初めて知る場面になります。

今回前半かなり駆け足になってますが、ちょっとテンポアップを意識しました。


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