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なんだかんだで4年経ちまして

かあさまが亡くなってからもう4年が過ぎて、夏で12才になっていた。

この4年間、毎年交易馬車の商人が来た時に顔を出して、できるだけ事前に情報を聞いてこの間の過ごし方を決めていた。



村に来る商人は交易馬車という仕事柄なのか、商売っ気より長期間の旅に耐えれるよう体力が重視されているようで、貫禄たっぷりのゴツイ気のいいおじさんだった。


過去に交易商のおじさんとして会話はこんな感じだった。


~1年目の質問~


-- この4年間は体づくりの期間なんで、まず長旅にどんな事がスキルが必要です?


「そりゃ、食い(もん)を探せなかったら飢え死んで終わりよ。ほとんどが山や森ん中を行くんで、決まった水場はあるが食い物はそこの場所で調達するもんよ。ボウズ、長旅するんなら狩りはできんと話にならんぞ」



この答えを聞いて、村の狩りが得意な人に弟子入りして狩りを始めた。

幸いこの村の周りは全て森なんで、狩りの獲物は豊富にいる。

むしろイノシシやらキツネが畑が荒らし、狼が家畜を襲うのでその辺りは積極的に狩らないと村が無くなる危険があるらしい。


肉は食べて、毛皮は交易馬車が来た時に塩などと交換するので、狩りの成果が交易馬車との取引量に直結する。


弟子入りして最初はひたすら罠の作り方と、獲物の解体作業を仕込まれた。


罠は工作の延長みたいで面白いところもあったから、それなりにできるようになっていった。

苦労したのは、森の中の散策は、平地の3倍体力を使う。体力のない僕は、罠の設置と確認でしが森の中に連れて行ってもらえなかった。まぁ、その往復だけでばててたので、師匠の見立て通りだった。


問題は獲物の解体作業だ。初めて師匠がイノシシの腹にナイフを突き立てて内臓を腑分けする所をみて吐いちゃったからね。


そりゃ、前世は、親は普通の会社員で、ウサギとかイノシシの子供とかは動画でカワイイっていってた町中の子ですよ?

家の手伝いで小魚の内臓(ワタ)抜き位はやったことあるけど。


やっぱり魚と違って、イノシシだと生き物を殺してるっていう抵抗感が半端ない。


解体に慣れだしたのは二月ほどたってからだ。

大体一年間を、この師匠のもとで罠や矢の準備をしたり、解体をして過ごしていた。

解体を始めてからは、皮の切り方を失敗して毛皮を傷つけたり、内臓を傷つけて肉の質を落としたりしてしまい、その度に師匠が背中で語って教えてくれた。


~2年目の質問~


-- 目標を知るために、この村から王都まで行くのにどれ位の日数が掛かりますか?


「そうだな、俺が普段交易で回ってるのはここら一帯で一番大きな町のクレイを中心に回っているんだが、王都方面にゃ行ってないんだ。このニラガ村からニベツ村まで馬車で7日。ニベツからクレイまでは馬車で3日だ。まぁ、間に村で商売すっから、クレイにつくのは大体倍位は見といたほうが良い。そっから先はたしか、クレイから乗り合い馬車で4日でアソウの港に行ってから、船で行くのが王都には最短だったと思う。船は出航さえすれば2日位で王都に付いたはずだ。ま、天候次第だろうけどな」



交易商のおじさんから教えてもらった道のりをまとめると、こんな感じになる。


ニラガ村→<馬車 7日>→ニベツ村→<馬車 3日>→交易都市クレイ→<馬車 4日>→港町アソウ→<船 2日>→王都


で、滞在やらなんやらで倍かかるとして、ほぼ一月。多分この見積もりはうまくいってだろう。

聞いてはいたが、この村の辺境具合にほんと頭が痛い。


一月森で生活できるようにならないといけないのか・・・

次第に背も伸びて体力も付いてきたとは思うが、まだ師匠には狩りには一緒に連れて行ってくれなかった。

でも、この年から空き時間で弓の練習が始まった。まだ力が無いので遠くに飛ばせないが、筋トレの意味合いもあるんだろう。

しっかし、師匠の弓は弦の張りが強い。僕は少し弦の張りを緩めて使っている。


この頃になると、獲物の解体で気分が悪くなることは無くなって、毛皮を傷つけることも減っていった。



~3年目~


-- 現実的な問題として、大体王都までの旅費はどれくらいかかります?


「旅費かぁ、クレイ町までなら毛皮で熊なら1頭、イノシシや狼なら10頭、ウサギなら30羽分あれば連れてってやるぞ。そっから先は分かんねぇなあ。まぁ、クレイ町からは通貨が流通してっから。相場にもよるがウサギの毛皮一枚で大体銅貨30枚位かな。宿が一泊銅貨20、飯は一食5枚ありゃいけるだろう。宿や飯は王都に近づくほど値段はあがるぞ」



現実が迫ってきた。


えぇっと、まず大体半分の行程になるクレイの町に行くまででウサギ30!町中にひと月居ることを想定するとさらに30で合わせて60匹!?さらにそこから先の旅費!??


師匠が大体ひと月でイノシシ4頭、ウサギ15羽。これは、村の収入になるので、あまり当てにはできない。

で、僕はというと、師匠程強く遠くまでは飛ばせないけど、それなりの距離までは飛ぶようになり、獲物も狩れるようになってきた。

狩りと合わせても森で食べれる植物や木の実、傷に効く薬草や毒の植物とかも師匠に教えてもらって森で生きるための知恵をつけていったが、今年の調子だとまだまだ足りなかっい。


それを、あと一年間で師匠の半分位の獲物を取れるようにならないと。



~3年目<追加の質問>~


-- 送ってもらった先のクレイで、仕事は探せる?獲物の解体とか狩りとかの仕事があれば最高です


「狩りの仕事っていうか、そこそこ大きい町だから職業ギルドがあって、仕事の斡旋をしてくれる。クレイの周りに狩場はないこともないから、狩りの仕事はあるかもしれんし、時節柄で狩りが無くても飯屋の給仕やらなんやらあるだろう。俺も職業ギルドでこの仕事をしてるんだからな。あん?普段は木こりをやってて交易商は冬場だけだ」


クレイまで行けば何とかなるかもしれないが、ある程度余裕が無いと簡単に詰みそうだ。顔見知りが居なくて土地勘がない所で金が無くなると、もうバッドエンドしか想像できない。


これまでは、師匠の手伝いをしてもらった獲物の肉を塩やら生活用品に替えつつ、カルロが細々と畑仕事をして暮らせていた


あまり期待はしてないけど、カルロにうちにどれくらいの貯えががあるか聞いてみたけど


「売れるものは、マルテ様が病に罹られたときに売っておりまして・・・申し訳ありませぬ」


まぁそうだろうね、このボロ家じゃぁね、元王様っていっても今は追い出された後だし。


最後はあの王家の証の短剣を売ろうかとも思ったけど、多分この村の人達相手には売れないだろうし、あれを売ってしまうと、王都に行ったときに多分詰む。そもそも身一つで王都に行くことになっている時点でほぼ詰みだし。


あの短剣を使って大貴族に会って協力を要請するしか、今の所手がないので、短剣は売れない、


この一年で俺がどれだけ獲物が取れるようになるかが勝負だ。


一年後に師匠の半分位獲物が取れるようになってたら、体力も付いていることだろうし、旅立つ条件もクリアできるだろう。


そして僕が12才になり、約束の冬が来た。


例年のごとく、交易商のおじさんが今年もやってきた。僕は交易商のおじさんがが店を出す村の広場で待っている。


僕の後ろでカルロが涙を流している。

狩りの師匠は険しい顔で、人垣の後ろの方で腕を組んでいる。


交易商のおじさんが僕を見つけて手を振った。


「おうボウズ!今年も来たぞ!!」


おじさんは馬車と止めて僕の肩を叩く。


「いよいよ今年だな。俺に任せときゃ無事にクレイまでは送ってやるよ!っとおめぇ、でかくなってないか?去年まで俺の肘位じゃなかったか?」


そう、僕はこの一年で大体手のひら分位身長が伸びた。大柄なおじさんの肘位だった身長は、肩あたりにまで伸びて、小柄な大人と変わらなくなっていた。

僕はおじさんに笑顔で答える。


「一年ぶりだからね、おじさん。値段は変わって無いよね?こいつで帰りに乗せてってもらうよ」


おじさんは笑顔で親指を立てる。



12才になり村から旅立つ準備ができて、やっと僕の異世界生活が始まるんだ。


それは、生まれ育ったこの村との別れでした。



読んで頂いてありがとうございました。

昨日の書くペースが良かったんで隔日じゃないですが上げました。

始めからペースを乱すと後で苦労するかもしれませんが・・・


読んでくれたそこのあなた、おいらの励みになりますので、いいね、評価、感想をよろしくお願いします。

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