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大魔法使い(予定)・猫の子ミコン~現代魔法は苦手だけど、破壊力抜群の古代魔法は得意なんです~  作者: 雪野湯
第三章 すれ違いと仲直り

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擦り下ろしリンゴ

 小物感全開のチンピラが三人、ペンギンが歩くように肩を左右に揺らして歩いています。

 私は彼らをちらりと見たあと、レンちゃんとラナちゃんへ視線を移しました。


「今日はせっかくのお休みですし、それにラナちゃんがいますから、お馬鹿さんたちの処理はこの地区の見回りに任せましょう。お願いしますね、ガルドーさん」

「ああ、任せとけ。すぐに見回りに――」



――はぁ、金払えだと? ツケとけや、ババア!――


 

 チンピラ三人が出店で串焼きを売っているお婆さんから串焼きを奪い取り口に運んでいます。

 お婆さんはチンピラたちに怯えて、擦れた声を上げることしかできません。



 私は席を立ちました。


「すみません、レンちゃん、ラナちゃん。窃盗を見過ごすことはできませんし、何よりお婆さんを放っては置けませんので、ちょっと行ってきます」


 そう言葉に出すと、レンちゃんは……。

「手を貸そうか?」

「いえ、あの程度なら私一人で十分です」


 私はぺこりと頭を下げて、チンピラ三人のもとへ向かいました。




――定食屋『もぐもぐヒット』・テラス


 ミコンは無法者を懲らしめるべく、歩き出した。

 それをレン・ラナ・ガルドーが見送る。

 ラナは心配そうに声を上げて、レンとガルドーがそれを受け取る。


「だ、大丈夫? ミコン、一人で……」

「問題ないよ。見たところ、三人の男の実力は大したことはないから。それに、ミコンの武術の腕前は私でも手こずるくらいだし」

「むしろ、ミコンの暴走が心配だぜ」


 と言って、ガルドーはちらりとレンを見る。

 レンは――

「そうだね、やっぱり手を貸した方がいいかな。ミコンが無茶をしないように……」




――ミコンパート


 私は無駄におらつく三人の男の前に立ち、通せんぼしました。

 無論、彼らはそれに疑問の声と下らない脅し文句を口にしてきます。


「止まりなさい、そこの三人」


「ん? なんだ、獣人? 学生服?」

「おい、邪魔だぞ。どけや、兄貴の邪魔になってっぞ」

「何のつもりか知らねぇが失せろや、ガキ!」


「ハイハイ、すぐに失せますよ。あなたたちがお婆さんにお代を支払ったらね」

「おだ~い? なんだそれ?」


「あなたが手にしている串焼きの代金のことですよ」

「ああ~、これかぁ。こいつはツケで買ったんだぜ。なぁ、婆さん!」



 三人の内、串焼きを手に持つリーダー格っぽい男がお婆さんを睨めつけながら脅しを籠めて声を荒げました。

 お婆さんはその瞳に一瞬びくりと体を(すく)めましたが、私の姿を目にして、安堵した様子ではっきりと男たちへ答えました。


「何を言ってんだい!? 金も払わず勝手に持ってったじゃないか!」

「んだと、ババア! 人を泥棒呼ばわりする気か!?」



 この頭の悪そうな声に、私が言葉を返します。

「泥棒呼ばわりも何も泥棒でしょう。というわけで、お金を払ってください。大人しく払ってくれさえすれば、大事(おおごと)にはしませんから」

「おおごと? 何言ってんだ、このクソガキ。だいたい、何の権利があって――」


「誰だって不条理は正したいと思うもの。権利以前の問題です。いいから、お金を払ってください。お婆さんの串焼きは美味しいでしょう。それに対する対価はしっかり支払うのが筋です」


「はぁ、くっそうぜぇガキだな。でも、ま、たしかに対価ってのは必要だな」

「おや、意外に物分かりが良くて助かりました。それじゃあ……」

「そいつが対価に値すればなっ」



 リーダー格は食べかけの串焼きを地面に落としました。

「ちょっ、あなた、何を!?」

「こんな糞まじぃ食いもんに、金を払う価値なんてねぇよ。だから、こいつが対価だ!」


 そう言って、リーダー格は串焼きを踏みつけて、ぐりぐりと地面へ押し込みます。

「へへへへ、これで問題ねぇな。そういうこった。じゃな、クソガキ。女だから見逃してやっけど、あんま下らねぇ正義感を振り回してんじゃねぇよ」

「ケケケ、兄貴。優しいなぁ」

「見ろよ、ガキが兄貴の優しさに感動してプルプル震えているぜ」



 三人の戯言(たわごと)が私の猫耳に当たり、ぴくぴくと震えます。

 私は砂と土に塗れた串焼きをレモンイエローの瞳に収め、呟きました。


「この串焼きの仕込みが、どれだけ大変かわかってるんですか? 付けダレの維持がどれだけ大変かわかっているんですか?」


「あん?」


「お婆さんは毎日毎日朝早くから起きて、お料理を仕込んでいるんですよ。寒い日も暑い日も、毎日変わらず仕事を行うという当たり前を維持するのがどれだけ大変かわかっているんですか?」


「おまえ、何言ってんの?」


「足腰が悪いのに、その日に使うお肉は毎日市場に出向き厳選している。そこまでしているにもかかわらず、料金はとてもお安い。それは、みんなに美味しい串焼きを食べてほしいからっ。喜んでほしいから!」


「は? だから、さっきから何言ってんの? バカなのか? アホなの? もしかして、この女、気狂いか?」



「そして、何より――食べ物を無駄にし、あまつさえ足で踏みつけるなんて、絶対に許せるか!!」


「ミコン、早まるな!」


 後ろからレンちゃんの声が背中にぶつかりました。

 だけど、その時にはすでに、リーダー格の顔面に私の拳がめり込んでいました。

「この、おたんちんがぁぁぁあ!」

「がはぁ!」


 馬鹿リーダーの顔が変形するほど拳を深くねじ込ませ、その勢いで近くにあった石壁に押し付けました。

 表面がざらざらした石壁に顔を押し付けつつ、一気に横へずらしてリンゴのように皮膚を()り下ろします。


「このこのこのこの~!」

「いでぇえ、ひぎぇぇえ!!」


 二メートルほど顔を()り下ろしてから拳を振りぬき、リーダーを地面へ叩きつけました。

 彼は血と砂に塗れた顔面の痛みにのたうち回ります。

「いでぇぇぇえ! いでぇぇえよぉぉぉ!」

「兄貴!?」

「だ、大丈夫か!?」


 駆け寄る子分AB。

 私は彼らに近づき、可愛らしい猫耳を軽く押さえます。

「やかましいですね。一端(いっぱし)の悪党をやってる分際で、顔肉が削がれたぐらいでガタガタ抜かさないでくれますか?」


「顔肉って……」

「お、おまえな……」


「なんですか? お二人も文句あるんですか? だったら、そこの兄貴とやらと仲良く、顔の肉、削ぎます? ん?」

「「ひっ」」


 二人は私の言葉と光の消えた瞳に怯えて、短く悲鳴を上げました。

 そこにレンちゃんとラナちゃんとガルドーさんがやってきます。


「はぁ、これだから。こんな風にやりすぎるから、前も問題になったのに」

「前も? 前も、ミコン、らいなことを」

「いや、以前の方が派手だったけどな。だからといってなぁ……」



 ガルドーさんは三人組へ顔を向けます。

 リーダー格は血塗れの顔面に痛み喚き、二人は兄貴分を心配しています。

 レンちゃんはラナちゃんへ治療を頼もうとするのですが……。


「ラナ、悪いけど彼の治療を」

「ぶんかった」


「いえ、その必要はありませんよ」

「ミコン、だっども」

「派手に血は出てますが、それほど深く押し付けてませんので表面が削れた程度。若いからひと月もすればきれいさっぱり治って傷跡すら残りませんよ」

「だ、ども……」

「それにですね……」


 私は飛び切りの笑顔を三人組へお渡しします。

「仮に傷が残ったとしてもいいじゃないですか? 悪党なんですから。顔に傷がある方が、箔が付くというものですよ。ね、お三人さん」

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