1.選ばれし者
彼の名は大島 健。防衛省直轄の対宇宙人組織ACRの戦闘員である。
数年前、地球は宇宙人により侵略行為を受けた。
戦いは三年にわたり、争いは治おさまったかに見えたが、再び魔手が迫り、宇宙戦争が始まった。その際に、ACRが発足され、特殊な戦闘訓練を積んだ精鋭たちが、侵略者対策に乗り出した。
健は今、宇宙人と交戦していた。
「ぐわ!」
攻撃を受け、吹っ飛んだ健は、後方の壁に激突した。
「今、楽ニシテヤル」
星人が光線を放った。
(光線なんてきいてねえ!)
健は光線を喰らうと、全身がみるみる真っ黒に染まり、その場に倒れた。
(体が、動かねえ……)
「他愛モナイ」
星人がそう言って去ろうとすると、上空から光の玉がおりてきて、健を包み込んだ。
周囲の時間が止まり、端正な顔立ちをした長髪の女性が、健の前に現れる。
「君は一体?」
「私は遠い惑星から来たシャナ。侵略者を倒すため、君に協力したい。君の体を貸してはくれないだろうか?」
「貸すって、俺の意識はどうなるんだ?」
「もちろん、残しておく。だが、断れば君は死に、私はあやつを倒せん」
「わかった。あいつを倒せるなら、一時的にだが貸してやる」
女性が健の中に入り込むと、彼を包んでいた光が消え、時間が動き出した。
「ホオウ? 我ノ光線ヲ受ケテモマダ死ニ損ナッテイルカ」
健は真剣な表情を見せると、先ほどの女性、もといシャナに変身する。
(こ、これは!?)
シャナは一瞬で星人の懐へ潜り、腹部にパンチをお見舞いした。
「悪い悪い、隙だらけだったんでつい」
星人はくの字に折れ曲がり、吹っ飛んで後方の壁に激突する。
「グ!」
シャナが右手を前に突き出すと、手の平から放たれた光線が星人を直撃して粉砕した。
「……………………」
シャナは光に包まれると、健の姿に戻った。
「なんだったんだ?」
健の横に半透明のシャナが姿を見せる。
「うわ!?」
驚いて尻餅をつく健。
「ダサ」
「お、お前なんなんだよ!?」
「私は戦闘種族のヴェルドーレ人、シャナ。あなたが生きてるのは、私が憑依しているおかげなんだ。……ふむふむ、君は大島 健というのか」
「ちょっと待て! 俺は名乗ってないぞ!」
「ああ、私は憑依した相手の記憶を読むことができるんだ。当然、今考えてることもね」
(出ていってくれ……)
「出ていってもいいけど、あなた死ぬよ?」
「他に術はないのか?」
「どうかしらね。とりあえず、あなたの中は居心地がいいわ」
シャナはそう言って姿を消した。
「あ、おい!?」