2本場<状況>
建物の中に入って一番先に目に入ってきた光景は、まるで災害が起こって避難してきたかのように人々がテントやブルーシートの上でうなだれている。
テントやブルーシートはキレイに1階から屋上までキレイに並べられておりまさに避難施設と言っても過言ではない光景だ。
「こちらがボクの家です。」
その家は青いテントでかなり小さく、2人だけでも窮屈さを感じられるくらい狭い空間だ。部屋?の真ん中にちゃぶ台が置いてあるだけだ。机の上に手を置けるよう座ってもテントにうつかれる程しかスペースがなく机の対にイノリが座っていて暫く静寂な空気が流れていた。自分は周りをきょろきょろして落ち着かない様子を見ていた。そんな様子を見ていたイノリは
「今、お茶でも出しますね。」
といってテントから出ていった。
「お茶か・・・最近スポーツドリンクしか飲んでいなかったぁ」
なんてぼやいていると、イノリがきゅうすとコップを持ってきてくお茶を入れてくれた。俺はお茶をすすり1息ついて今一番疑問に思っていることを尋ねた。
「君は1人で住んでいるのか?親とか兄弟は一緒じゃないの?」
それを言った瞬間イノリの顔は暗くなり、無責任な発言をしてしまったような気がして
「すまない・・・」
と一声かけた。
「いえ良いのですよ。どちらにしてもこの話もしなければならない事でした。」
「どういう事でしょう?」
「先ほどボクが言ってた重要な願いのことです。」
「勾玉の事よりも大事なことだったけか?」
「はい、その通りです。実はボクの父と母と妹が盗賊に捕まってしまったのです。」
何となくこの一言で状況とイノリの重要な願いがどういうものなのかを理解した。ここから暫くイノリから詳しい話を聞いて数分後
「つまり、町の人たちがこの建物に移った後、月末、5人づつを賭けての盗賊に勝負事を強要され負けたら奴隷にされるという地獄のような時間があってその所為で、残り70人位まで減ってしまいこのままだと全員が奴隷になってしまう事を防ぐために救世主が欲しくなって君が勉強している召喚術を使い俺を呼んだ。それで今月末の勝負事に勝ちこの町の人たちを全員救ってほしいと。そういうわけだな。」
「はい、理解が早くて助かります。」
「う~ん・・・というか勝負事って何をするんだ?」
「すみませんが分からないのです。」
「知らんのかい!!」
「ホントにごめんなさい」
「じゃあ取りあえず勝負事の事は考えといてやるから、幾つかの俺の質問に答えてくれ。」
「はい!喜んで。」
俺がした質問はこの町はこの国のどこに該当するものなのかだ。その質問を聞いたイノリは世界地図を持ってきて指をさし教えてくれたのだが、俺が知っている世界地図とは全く違うもので混乱した。ここは地球じゃないのか?ただ、その割には日本語で話しているし世界地図に表記されている字も日本語だった。そういえば聞いたことがあった、世界というものはいくつも存在し俺らが住んでいる世界とは異なる世界のことを【異世界】と呼んでいると。つまり俺は俺が住んでた世界にはいないと言う事。さらには俺は異世界に転移してしまったこと。
世界地図を見て初めて今自分に置かれている状況が把握できたのだ。元の世界に戻るにはイノリが使っていた魔術を使うしかないのかもしれない。そう考えていくうちに1つの結論にたどり着いた。タダでさえ異世界に来てしまったという面倒な状況になっているのに、さらなる面倒ごとは起こしたくはない。だからイノリからのお願いを断り元の世界に返してもらうようお願いしてみるか。
「あの、イノリ君だっけか?」
「はい?」
「すまないけど君の願いは俺じゃない誰かにお願いしてくれ。俺にもやらなきゃいけないことがあるんだよ。それに俺には人助けなんて向いてないんだ。」
彼は今までに見せたことのないような絶望した顔で
「分かりました。ごめんなさい。」
と言ってうなだれていた。俺はお茶を飲みをして
「君の願いを断っておいて言いづらいんだが、君の術で俺を元居た世界に戻してくれないか。」
「元居た世界・・・ですか?マサチさんはここの世界から来た人ではないのですね。それは本当にごめんなさい。ボクが使った召喚術が他の世界にも影響を与えてしまうことは知りませんでした。なのに突然呼び出してしまって。何とお詫びしたらいいのでしょう。」
イノリはどうやらこの世界のつわものを呼ぼうとしてたらしい。
「いや、いいんだよ。というより君も異世界の事を知っているのか?」
「はい!魔術の勉強をしている際、この世は世界がいくつも存在していると言う事を学んだことがありましたので。」
「成る程ね、イノリ君ほどの真面目な子ならきっとこの状況から幸せな状況に変えられると思うよ。」
「あ・・・ありがとうございます。少し自信を持つことが出来ました。さてあの場所に行きましょう。ボクがマサチさんを元の世界に戻して差し上げますね。」
「ああよろしくな」
そして2人は立ち上がり実験場に向かっていったのだ。俺の異世界冒険もこれで終わりか。短かったけどちょっぴり楽しかったなとしみじみ感じていた。
麻雀シーンを早く書きたいぜ!!!そのシーンまでがなげぇな(苦笑)
とりあえず次回からやっと麻雀に触れていくと思いますのでお楽しみに!