クラス分け
今日は入学式の日だ。俺は『旅人の休息所』に届いたグランバレー学院の制服に袖を通す。この制服は男子は黒を、女子は白を基調とし、所々に金色の装飾が施されているシンプルなデザインになっている。俺はこのデザインが好きだ。
「うーん、こんなものか?」
宿泊先の部屋に備え付けられた姿見を見ながら、しっかり着れているか確認する。身だしなみからちゃんとしておかないとなめられるからな。
用意ができた俺は部屋を出て宿泊先の入口付近でフランを待つ。女の子というのは用意が長いというのは心得ている。よって俺は気長に待つことにした。
数分後、用意を終えたフランがやってきた。用意といっても初日ということで持ち物はない。俺たちは手ぶらで学院に向かう。
「やっと学院生活だね。うぅー、頑張るぞぉー!」
「テンション上がりすぎだろ。まあ、気持ちは分からんでもないけど」
「ちがうちがう。ナーガスのテンションが低すぎるの。もっとアゲてこぉー!」
「お、おぉーー?」
「ふふふ、ノッてきたね〜。よーし、今度は一緒に!」
「「おぉーー!!」」
「朝からうるさいんだけど。もっと静かにしてくれない?」
「うぉぉ!リラか……」
俺たちがテンションを上げていると、リラが急に話しかけてきてとても驚いた。これでリラに驚くのは二度目だな。
「あれ、ナーガスの知り合い?」
「ああ、合格発表の時に知り合ったんだ。彼女はリラ=アーロン。ちなみに入試の成績はフランと同じだ」
「え、すごい!私とナーガス以外にも満点がいたんだね」
「リラ、この子はフラン=ノーツだ……って知ってるんだったよな」
「うん、私結構物知りだから。よろしくね、フラン」
「うん!よろしくね!」
こうして俺たちは三人で学院に向かった。もちろんテンションはいつも通りに戻して。
◇◇◇
学院に到着したら、門の前にいた教師に講堂に入るように言われた。どうやら講堂で入学式が行われるらしい。
講堂の座席は自由だったので俺たちは並んで座った。俺が真ん中でその両隣に二人が座るという感じだ。
少し待っていると男性の教師が出てきた。もうそろそろ始まるのだろう。
「えー、皆さんおはようございます。まずは本校にご入学いただきありがとうございます。さて、まずは学院長の挨拶から参りたいと思います。それでは学院長、お願いします」
次は学院長の挨拶ということでエレナさんが出てきた。前は座った状態で会ったので気付かなかったが、エレナさんは意外と身長が高いらしい。
「みんな、おはよう。私がグランバレー学院の学院長を務めるエレナ=クロイツだ。まずは入学おめでとう。君たちのような優秀な生徒が入学してくれて嬉しく思う。次に君たちも既に知ってると思うが、今年度からクラス分けの方式が少し変わった。最初は例年通り、入試の成績でクラスを決めるが、三ヶ月に一回のペースで成績に基づきクラス替えを行うことにした。もちろん最初は成績が良くても後で落ちる場合はあるし、その逆もある。これは互いに切磋琢磨し、競争し、高みを登っていってほしいという願いだ。みんなも是非頑張ってくれ。以上で挨拶を終わりとさせていただく。ご清聴ありがとう」
滑り込みで入試の手続きをしたから、そんな情報は全然知らなかったな。……待てよ?もし魔法の授業があれば俺の成績はどうなる?いや、今は考えないでおこう。
その後も式は続き、全体で一時間ほどで入学式は終わった。途中、チラッと両隣を見るとフランは真面目に話を聞いていたが、リラは少しウトウトしていた。その様子が少し可愛かったというのは黙っておこう。
そして俺たちはそれぞれのクラスへと向かった。俺たちは成績上位なのでAクラスだ。
Aクラスには合格発表の時にギャーギャー騒いでいた公爵家の長男がいた。名前は……うん、忘れた。そしてもう一人、こっちは忘れてはならない(というか忘れられない)人物もいた。
「あー!フラン=ノーツじゃない!」
「えっと、入試の時に会ったよね?」
「やはりAクラスだったのね……。やるじゃない」
「う、うん、ありがとう……?」
意外と彼女も頭はいいらしい。まあ、未だに名乗らないが。
俺たちが教室に入ってすぐ女性の教師が入ってきた。俺たちは指定の席につく。
「皆さん、おはようございます。私がAクラスの担任を受け持つことになったイツキ=ノーカスです。よろしくお願いします」
イツキ先生は簡易的な挨拶の後、学校についての説明をした。今日はどうやらそれで終わりらしい。
「今日は以上となります。何か気になることがあれば私のところに来てください。ではこれで終わります。みなさんはこれから学生寮に向かってください」
こうして今日の予定を終えた。今からは放課後だが、学生寮の自分の部屋に荷物を置きにいかないといけないらしい。早速行くか。