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最強最高の空間魔術師〜魔王討伐者、学院に通う〜  作者: 潮騒
第1章 空間魔法の使い手
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公爵家の長男



「はぁー、お前らは馬鹿なのか?こんな奴が魔王を討伐した訳ねーだろ?」


「そーだそーだ!真っ当に魔術師をやっている人に失礼だろ!」


「謝れ謝れー!」


 フランと別れた場所に戻ると、人だかりが出来ていた。どうやらフランが数人の男子に責められてるみたいだった。フランは黙ったままジッと男子たちを見ている。


 俺は近くにいた男子に声をかけて何があったのかを聞いた。


「俺も詳しく見てた訳じゃないんだけどな。どうやら真ん中にいる女の子が魔王討伐者のフラン=ノーツらしいんだけど、それに気付いたあの金髪の男子、公爵家長男のランドール=オーデンが彼女にけちをつけてるみたいなんだ。『お前は魔王討伐者なんかじゃないんだろ』ってな具合でね。周りの取り巻きたちも便乗してるみたいで、この有様さ」


「なるほど……。教えてくれてありがとな」


「おう、いいぜ!」


 あの派手な見た目と高慢な態度はやはり貴族だったのか。ほんと、貴族はああいう輩が多くて困る。中には常識がある貴族もいるんだけどな。


 俺は人混みをかき分けて騒ぎの中心に向かう。


「おい、何をやってるんだ」


「あ?てめーには関係ねーだろ?」


「俺はこいつの連れだ。バリバリ関係者だろ」


「ちっ、そうだったのか。ならお前も同類だな。どうせ嘘なんだろ?魔王を討伐したなんて」


「いや本当だぞ?まあ、俺はその件に関しては知らないが」


 自分でもとてもうまく嘘をつけたと思う。華麗な嘘さばきだ。


「知らないんだったら本当かどうかなんて分からないだろ。出しゃばんじゃねーよ」


「それなら嘘だという確証もないだろ。証拠もないのにやいやい言ってんじゃねーよ」


「あぁ?」


「文句があるなら聞くが?」


「フンッ、行くぞお前ら」


 ランドールたちはそのまま帰っていった。なんて面倒くさい奴らだ。あいつらが合格していたら毎日顔を合わせるかもしれないのか……。先が思いやられる。


「もうッ!なんなの、あいつら!」


「まあまあ、落ち着けって」


「むぅ〜〜〜」


 フランはさっきのやり取りを黙って見ていたが、何も落ち込んだりしていた訳ではない。彼女は怒りをため込んで一気に放出するタイプなのだ。それが爆発した瞬間を見たことあるが、あれは周りにも彼女自身にも良くない。よって俺が仲裁に入ったという訳だ。


「ありがとね、ナーガス。もう少しでやらかすところだった」


「礼はいいさ。まあ、何も起きなくてよかったよ。特に被害者が出なくてな」


 俺たちがそんな会話を続けていると、周りで見ていた人たちが寄ってきた。


「やっぱりあなたがフラン=ノーツなの?」


「あいつはああ言ってたけど、国王様が直々に公言してるからな。俺は信じるぜッ!」


「同い年で鼻が高いわ〜。ねえ、握手して!」


 瞬く間にフランは人に囲まれて、俺は人に押されて随分フランから離れてしまった。


 まあ、その内ほとぼりが冷めると思うので、そうなったら迎えに行くことにした。よって俺は少し離れた場所で人が離れていくのを待った。


「ねえ、あなたがナーガス?」


 声が聞こえた方を向くと、なかなかの美少女がいつの間にか隣にいた。


「おぉ、びっくりした……」


「質問の答えになってないんだけど。で、どうなの?」


「あ、ああ、間違いない」


 可愛い顔からは想像できない冷たい口調でそう言われて、さらに驚いた。人は見た目では判断できないな。


「みんなはああやってフランの方に行ってるけど、本当に凄いのはナーガスの方でしょ」


「……なんでそう思うんだ?」


「受験の得点欄、君だけ斜線だったでしょ?点数が明記されないってことは余程高いか、余程低いかのどちらか。そして君の合否の結果は合格だった。すなわち君の点数は満点以上ってことになる。少し考えたら分かることでしょ?」


 ほう、なかなかの洞察力と観察力の持ち主のようだ。まあ、それゆえに人を少し小馬鹿にしているようなのがたまにキズだが。


「たしかにそうだな。だが、人の点数を確認するってことは君もかなりいい点数だったと見受けるが?」


「まあね。一応満点だった。君には敵わなかったけど」


 なるほど、彼女も相当できるみたいだな。現状、俺たちの年代ではトップレベルの頭脳の持ち主だな。果たして彼女はどのくらい強いのだろう。


「じゃあこれから同じ学院に通う仲間になるな。よろしく頼む。えーと、」


「リラ。私はリラ=アーロン。よろしくね、ナーガス」


「ああ、よろしくな」


 簡易的な挨拶を交わした後、リラはすぐに帰った。そういえば彼女は何を基準にして俺にナーガスかと声を掛けたんだろう。まさかめぼしい人全員に声を掛けた訳ではないだろう。


 そんなことを考えていると、フランがやって来た。あの人混みもようやく無くなったらしい。とても大変そうだな。


「はあ、疲れた……。早く帰ろ?」


「あ、ああ、そうだな」


 こうして俺たちは帰った。入学式は三日後なので王都に滞在することになるだろう。制服は明日宿泊先に届くそうだ。ちなみに宿泊先はこの前と同じ『旅人の休息所』だ。


 こうして俺たちは色々あった一日を終えた。そういえばこの前フランに宣戦布告をしたあの子はどこに行ったんだろう。合格したのかな?


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