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転生研究所『吉良上野介になりませんか?』

ボケ「ここは転生研究所。仕事の斡旋を生業とする会社の1部署。『転職』とまでは考えていないけれども『こう言う風になってみたい。』と考えているかたと、『今の状況を誰かに代わって欲しい。』と考えているかたを仲介するのが当研究所。今日も一人のお客様がお見えになったようであります。」

ツッコミ「こんにちは。」

ボケ「いらっしゃいませ。」

ツッコミ「受付でこちらを案内されたのでありますが……。」

ボケ「希望条件はございますか?」

ツッコミ「……そうですねぇ……。自分が偉くなりたい。と言うわけでは無いけれども、偉い人が私に頭を下げて来る。……だからと言って講演会みたいな目立つ場所では無く、内密にお願いされる……。そんなシチュエーションがあれば是非。」

ボケ「偉い人に頭を下げられたい。と言うことは、何か一芸に秀でている人物になりたい。と言うことで宜しいでしょうか?」

ツッコミ「そうですね。このことに関してはこの人。と言う立場になってみたいものですね。」

ボケ「……となりますと、こちらになりますでしょうか?」

ツッコミ「そんな虫のいい条件があるのですか?」

ボケ「はい。吉良上野介は如何でしょうか?」

ツッコミ「あの吉良上野介ですか?」

ボケ「はい。将軍から朝廷とのやり取りを指示された大名が、必ず指南をお願いしに来る人物であります吉良上野介その人になる。と言う依頼であります。」

ツッコミ「興味深い人物ではありますね。でもそんな人物が何故?」

ボケ「はい。依頼主であります吉良上野介からのメッセージでありますが、『先日。江戸城内で浅野内匠頭に斬りつけられました。』」

ツッコミ「あまり良いシチュエーションでは無い場面の上野介ですね。」

ボケ「幸い傷は浅く、斬りつけて来た人物もその場で取り押さえられ、即刻切腹の沙汰が下されました。」

ツッコミ「今でしたら初犯のため執行猶予付きの有罪判決辺りで収まるのでしょうが、時代が時代。立場が立場でありますからね……。でもこれで上野介も安心することが出来たのではないのですか?」

ボケ「事件は解決したのでありますが、少し不穏な動きがあるようでありまして……。」

ツッコミ「なんでしょうか?」

ボケ「浅野の家臣の動向が……。」

ツッコミ「江戸に集まっているのですね……。」

ボケ「はい。しかも家臣たちが集まっている場所が麹町。この麹町には江戸時代。徳川の御三家や関ヶ原の戦いの現場において、徳川の家臣の中で唯一活躍した井伊家の屋敷が建ち並んでおります。」

ツッコミ「一等地も一等地ですね。」

ボケ「この麹町は既に江戸城の郭の中にあり、しかも麹町と江戸城の間には石垣は無く土手しかない防備の薄い場所。故に重要大名の屋敷が配置されている。言い換えればそれだけ厳しい警備体制が敷かれている麹町に浅野の家臣が集結しています。」

ツッコミ「雇われているわけでは?」

ボケ「ありません。あくまで潜伏しているようであります。」

ツッコミ「徳川の重鎮中の重鎮が住み、江戸城の防備の薄い。最も危険な場所に?」

ボケ「はい。16名の浅野の家臣が潜んでいます。」

ツッコミ「警備体制に不備があった?」

ボケ「いえ。当時の江戸は監視社会。それもただカメラが設置されているだけで事件のあとになって初めて調べられるような生易しいものではありません。拡大解釈に次ぐ拡大解釈がされた太平洋戦争中の治安維持法の状態が当時の江戸でありました。」

ツッコミ「普通でしたら……。」

ボケ「真っ先に処分しなければならない人物が麹町に潜んでいるのであります。」

ツッコミ「本当に潜んでいるのですかね?」

ボケ「そんな情勢でありますので上野介も気付かぬはずはありません。幕府に対し、隠居を願い出、受理されます。」

ツッコミ「隠居してしまえばこっちのもの……。」

ボケ「……と思ったのも束の間。幕府から屋敷の移転を命じられます。」

ツッコミ「それまでは何処にあったのですか?」

ボケ「北町奉行所のすぐ近く。」

ツッコミ「遠山の金さんの……。」

ボケ「はい。北町奉行所は裁判は勿論のこと。警察や検察に刑務。更には消防。司法、行政に至るまでの治安にまつわるあらゆる分野を一手に引き受ける強力組織であり、そこで働くかたがたの住居が建ち並んでいます。その近くに吉良邸は構えられていた。勿論江戸城の郭内に。」

ツッコミ「ある意味、最も安全な場所ですね。」

ボケ「そんな最も安全である場所からの移転を幕府から命じられる。」

ツッコミ「今の場所に吉良邸があると迷惑と思っている……。」

ボケ「浅野の家臣は勿論そう思っていたでしょうし、もっと言うならば……。」

ツッコミ「そんな治安組織の中枢で騒ぎを起こされては困る人物が居た。と……。」

ボケ「収めなければなりませんからね……。」

ツッコミ「で。吉良上野介に与えられた屋敷と言うのは?」

ボケ「隅田川の対岸にある本所。」

ツッコミ「そこはどのような場所なのでありますか?」

ボケ「江戸時代随一の倉庫群。」

ツッコミ「サスペンスの臭いしか漂って来ませんね。」

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