朝起きたら女の子だった件。 その1
朝起きると、女の子になっていた。
「え、なんで?」
どうやらこのことに親は気づいていないらしい。
なぜって、母さんはいつもと同じように俺と接してくれていたからだ。
お陰で、朝顔を洗うまで全く気がつかなかった。
そんな俺はと言えば、こんな不可解な現象が起きているにもかかわらず、まだ寝ぼけているのかこんなことを考えていた。
……よかった、トイレ行く前に気づいて。
いや、これホントに。
もし気づかずにトイレなんて行ってたら、多分めっちゃ叫んでたと思う。
……どんな風にって、そりゃぁまぁ、『俺の息子がぁぁあッ!?』てな具合になるだろうな。
俺は鏡に映る美少女の口を苦笑いに歪めながらため息をついた。
いや、ホントに美少女なんだって。
ナルシストとかそんなんじゃなくてマジで。
この子が俺自身じゃなけりゃ、完全に一目惚れしてたってくらいには結構完成度の高い美少女。
いやね?
こんなこと起きたらいいなぁとか、たまに寝る前に布団の中で妄想してたりとかするけど、いや、まさか実際に起きてみると色々戸惑うものだな。
「いつまで鏡見てんの、早く変わってからない?」
そんな風にいつまでもジッと鏡の中の自分を見つめていたら、死んだ魚でも見るかなような目で妹が言った。
「いや、ごめん。
つい見惚れてた」
「お兄ちゃん、そんなナルシストだっけ?」
「いや違うけど」
たしかに、いくら自分の顔だからといっていつまでも洗面所を占領し続けるのは良くない。
俺は最後に夢じゃありませんようにと願いながら頬を引っ張って、そして鈍い痛みが頬に伝わってきたことにちょっとした安心感を覚えながら、俺はそこを離れた。