M2.魔王、見つかる
「マーラくーん、どこに隠れてるのー。お願いだから出てきてちょうだーい」
僕を呼ぶ声がさっきからずーっと聞こえてる。
僕の中に封印されてた人間のお姉さんの声だ。
名前は…たしかマフユさんだっけ。
思わず隠れちゃったけど、本当は会ってお話しするはずだったんだ。
困ったなあ、今から出ていくのは怖いし、格好悪いし、恥ずかしいし。
でも、ずーっと隠れてると、見つかったら怒られるよね。きっと。
「どう、そっちにいた?」
【ううん、見つからないわ】
?
おかしいな。マフユさんは一人のはずだよね?
自分で自分とお話してるのかな?
『こっちにもいなかったわよ』
えっ!?
(ダメ、見つからない)
ええっ!?
マフユさん、何人もいるの?
僕は気になって、外の様子をそーーーっと見た。
見たこともない服を着たお姉さんが、あちこち見ながら歩いてくる。
あれがマフユさんか。
きれいな人だなー。
…。
うん? マフユさんと目が合った?
《発見。こんなところに隠れていたのね》
うわっ!
見つかっちゃった…。
僕が扉を閉じる前に、マフユさんが扉を全部開けちゃった。
《もう、心配したんだから。さあ、出てらっしゃい》
マフユさんがニッコリ笑いながら手を差し出す。
僕は軽く手を握り、隠れ場所から外に出た。
?
マフユさん、僕より強いけど、ものすごく強いって程じゃない。
シュリーお姉さんの少し上ぐらいだ。
じゃあ、さっきのは僕の思い違いだったのかな…。
「あ、見つけたのね。さすが私」
(先生だから、生徒を探すのは得意?)
【マーラくん、なんでこんなところに隠れてたの?】
『マーラくんって、やっぱり可愛い』
えええっ!?
マフユさん、五人もいるの?
みんな、見たこともない服を着てる。
しかも、みんな同じぐらい強い…。
僕は自然と身構えた。
「こら、オタクな私。マーラくんが怯えてるじゃない」
『失礼』
「さあ、マーラくん。怖がらなくても大丈夫だから、私とお話ししましょう」
<は、はい。あ、あの、その前に、一つ聞いてもいいですか?>
「ええ、いいわよ。ああ、それとね、私には敬語を使わなくていいわよ」
<はい…じゃなくて、うん。マフユさんって、一人じゃなくて五人だったの?>
「私は一人よ。四人は分身みたいなものかな。人手が欲しい時に呼び出すの」
そういうと、マフユさんは一人を残して消えちゃった。
残っているのは、僕を見つけたのとは違うマフユさん。
このマフユさんが本体なのかな。
強さは…うわわっ! と、とんでもなく強い!!
そうか、さっきは分身してたから1/5だったんだ…。
「さあ、それじゃ、お話ししましょうか。貴方のことや、この世界のこと。私に教えてね」
<はい>
よかった。マフユさん、怖い人じゃないみたいだ。