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1.転生したら魔王だった件

 私は夢を見ていた。

 可愛い男の子になって、お姉さんたちとキャッキャウフフしてる夢。

 イケナイこともしちゃう、されちゃう素敵な夢。

 ずっと見ていたかったのに、私そっくりなお姉さんにギュって抱かれたところで終わった…。



『…お……』

 (…何か…聞こえた?…)

『…ま……よ……』

 (…女の子の…声?…)

『…はお…ったのじゃ』

 (…この声…どこかで…聞いた?…)

『さあ、目覚めるがよい』


 …ん…もう…そんな時間なの…?

 私、羅山真冬(らやままふゆ)は半分意識を取り戻した。

 外は明るいのがまぶた越しに分かる。

 アラームは鳴ってない。しばらくウトウトできそうね…。

 そう思ったんだけど、すぐに違和感を覚えた。

 …今日はゴミの日なのに、ずいぶん静かね。いつもなら何かしら聞こえるのに…。

 !?

 寝返りを打とうとして気が付いた。この寝心地、自分のベッドじゃない!

 さらに気付いた。この肌触りは…シルク? 私、ジャージが部屋着兼パジャマよ? そもそも、シルクのパジャマなんて持ってないわよ?

 それに、この香り…。私、部屋には消臭剤な人なのよ。お手洗いは芳香剤だけど。

 導き出される結論は一つ。

 …ここ、自分の家じゃ…ない!?

 何本かの縦線。サーッていう擬音。

 血の気が引いた。完全に目が覚めた。

 やばいやばいやばいやばいやばい!

 やばすぎるでしょ、これ!

 …OKOK。落ち着きなさい、私。

 昨夜は日付が変わる前にベッドに入った。これは確かよ。

 眠りにつくまでは、いつもと何も変わらなかった。これも間違いないわ。

 それなのに…。

 どうしよう。怖くて目を開けられない…。


 カタッ。

 小さな音。反射でビクッてなった。

 ん? 微妙に揺れた?

 ササッ、サー。

 擦れるような音。ヤダッ! 何かが近付いてくる? あ、止まったかも。

 ………。

 ……。

 …。

 この気配、枕元に誰かいるわ。

 音を立てない。何もしてこない。何も言ってこない。つまりは、私を見てるってこと。

 見る人が見れば、寝てるフリはすぐバレる。呼吸のリズムとか、唾をのむ動作とかでね。

 …こうなったら、覚悟を決めるしかないわね。

 えーーい。なるようになれーっ!

 私は気配がする方に顔を向け、ゆっくりと目を開けた。

 そこには、めちゃめちゃ可愛らしい少女の姿。

 司教のような衣装で、ちょこんと座って微笑んでた。

 髪はプラチナブロンド。ピ○チ姫っぽいカット。

 オッドアイ。右が緑で左が青。…これ、カラコン…よね?

 年齢は十二歳ってとこ。小学校の先生な私の目は確かよ。


 ゆっくりと上体を起こし、あたりを見渡す。

 私が寝ていたのは、天蓋が付いた広いベッド。

 私たちがいるのは、そんなベッドがあって当然な、広くて豪華な部屋。

 家具やら調度品やら、ちょっと時代がかってるけど、見るからに高価そうな物ばかり。

 うん。この部屋でジャージはない。シルクのパジャマで寝てたのが当たり前に思えてきた。

 一通り観察を終え、私は少女に向き直った。

 それを待っていましたとばかりに、彼女が口を開く。

「目が覚めたか、マーラよ。で、気分はどうじゃ?」

「?」

 マーラ? 私が?

 違いますよ。私は羅山真冬です。

 いろんな意味で小学生が大好きだから教職に就いた、ある意味アブナイお姉さんです。

 ご立派な魔王様呼ばわりは止めてください。

 しかし残念ね。

 今の問いかけ、優しさと慈しみが溢れてたわ。

 普通に出会って真冬って呼び掛けられてたら、ハイスペックなのじゃロリキターーーーーー!って素直に盛り上がれたのに。

「どうしたのじゃ、我が背マーラよ」

 訝しげに私を見つめるのじゃロリっ娘。

 彼女にとって、私はマーラ。それで間違いないらしい。

 しかも、「我が背」ときちゃいました。

 これは古語。女性が親しみを込めて恋人や夫を呼ぶ言葉。現代語だと「あ・な・た」とか「ダーアリン」ね。

 ………。

 ちょっと待って!

 私が我が背?

 名前と見た目で「まるで、ぼ○勉の先生みたいですね」って言われる私が我が背だと?

 のじゃロリっ娘、あなた、気は確かなの? いいえ、その前に、目はちゃんと見えてるの? 私のどこをどう見たら男に見えるの?

 もしかして…、あなた、百合ロリ?

 そうね。あなたが相手なら、私は全然OKよ。でも、それなら我妹わぎもって呼んでほしかったわ。

「まさか…。もしやとは思うが、そなた、わらわのことがわからぬのか?」

 ウルウルなのじゃロリっ娘。

 小さく頷き、肯定を返す私。

「ええい! これでもわからぬか!」

 私は毛布をはぎ取られ、押し倒された。

 華奢な体が私の上に乗る。

 あれっ?

 胸がつぶれる感覚が…無い?

 それに、私の身長…、彼女と同じぐらいじゃない?

 肩の位置はほぼ同じ。つま先の位置もほぼ同じ。

 まさか…今の私って…、子供?

 全力で否定したい考えが浮かんだ。

「さらにこうじゃ!」

 私は耳元でフッとされ、耳たぶを甘噛みされた。

 掻き上げられた彼女の髪が頬を撫でる。

 ああ、なんていい匂いなの。

 快感が全身をめぐる。私の股間が反応する。

 ん?……ついて…る?

 そういえば、我が背って呼ばれたわね。

 ………。

 ……。

 …。

 まさかまさかまさかまさかまさか!?

「ちょ、ちょっとごめん」

 のじゃロリっ娘を押しのけ、立ち上がる。

 私の股間はもっこり! どこのシ○ィーハ○ターよ!

 こ、これは…。

 少し震える手でパジャマのズボンを引っ張り、恐る恐るのぞき込む。

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 言葉では言い表しようのない衝撃!

 私、パンツ穿いてなかった…。

 じゃなくて、ご立派なマーラ様が全力で自己主張してた…。


 私は思考停止中。

 男の子になってるのは理解した。

 頭の中では五人の私が「どうしてこうなった」のポーズで踊ってる。

 マーラ様もおとなしい。見た目は大人なんだけど、サイズはお子様に戻ってる。

 一方、のじゃロリっ娘は可愛らしいポーズで思案中。

 沈黙を破ったのは、彼女の方だった。

「まさか…、そなた、真冬なのか?」

 えっ!?

 あなた、私の名前を知ってたの?

「え、ええ。そうだけ…」

「そうか! やはりそうであったか! 皆の者! プランBじゃ!」

 色々聞こうと思ってたのに、のじゃロリっ娘に遮られた。

 それにしても、プランBか…。

 今までのやり取りから考えると、私が真冬って分かったからプランBなのよね。

 マーラくんだったら予定通りってことか…。

 あ、マーラくんっていうのは、本来ここにいるはずだった、今の私と瓜二つな少年のことよ。

 もしかして、マーラくん、私の家にいたりする?

 ま、それを考えるのは後でいいわ。

 今考えなきゃいけないのは、なんで私が男の子になってるのかよ。

 のじゃロリっ娘は、間違いなく何か知ってる。

 ということで、さっそく聞いてみるわよ。

「あ…」

「カーマ様、お召し物を持ってまいりました」

「うむ。入るがよい」

 私の発言は、部屋の外からの凛とした女性の声に遮られた…。

 これは偶然…よね。悪意を持った何者かが、わざとやってたりしないわよね?

 でもいいわ。もし故意だったとしても、今回は許そう。思わぬ収穫があったからね。

 そうかー。

 のじゃロリっ娘はカーマちゃんか。

 私的にはホームセンターを連想しちゃう名前ね。

 でも、可愛いから全然OK。可愛いは正義。可愛いはすべてに優先するのよ。タグの先頭は書き換えたわ。

「はい。失礼いたします」

 扉が開き、メイド服姿の女性がぞろぞろと入ってきた。

 扉を開けたメイドさんは、そのままで頭を軽く下げてる。

 先頭に何も持ってない人が一人。彼女だけ服の色が違うから、きっとメイド長さんね。

 続いて服を大事そうに抱えた人が二人。

 その後に脱衣カゴを持った人が二人。

 最後に何も持ってない人が四人。

 着替えを持ってくるメイドさんが十人。カーマちゃんって、かなり高い身分なのね。

 メイドさんは全員が、なかなかの美人さん。女の私が素直に感心するレベルよ。


 メイド長さんが一礼し、口を開く。

「では、お召し物を替えさせていただきます。カーマ様、こちらへお越しください」

「うむ」

 カーマちゃんはベッドから下りた。

 残された私は、どうしたらいいのかしら?

 何をしていいのかわからない。誰かに何かを聞ける雰囲気じゃない。

 仕方がないのでカーマちゃんを目で追う。

 おおっ、自分で脱ぐんじゃなく、メイドさんたちに脱がしてもらってる。えっ!? パンツまで!?

 …そういえば、位の高い貴族のご令嬢は、着替えも入浴も全部使用人にやってもらうって話、読んだことがあるわね。

 おかげで人前で脱ぐことに抵抗がなくなるとかなんとか…。

「真冬様、失礼いたします」

 メイドさんにも名前で呼ばれた。しかも様呼び。私の名前、関係者には周知済みのようね。

 …ん?

 ちょっと待って。

 私もパンツまで着せ替えられちゃうの!?

 女性同士でも気まずいのに、今の私、男の子なんですけど…。 

 洒落にならない事実に気付き、私、焦る。

 でも、時すでに遅しですしおすし。

 メイドさん四人に囲まれてました!

 これは観念するしかないわね……と思ったけど、私、パンツ穿いてないんだった…。

「失礼いたします」

 メイドさんたちは慣れた手つきで私の腕をとり、パジャマの上を脱がせた。

 そしてズボンも脱がされる。

 …。

 意外に平気だったわね。

 っていうか、解放感いっぱいでむしろ爽快だったりして。おちんちんを見せたがる幼児の気持ちが少し理解できたかも…。

 !

 いきなり閃いちゃった。これも金冷法の効果かしら?

 ・プランAにはマーラくんが必要だった。

 ・プランBになったのは、彼がいなくなり、代わりに私がいたから。逆に言うと、男の子になった私がここにいるのは想定内。

 これって、マーラくんが私になっちゃうかもしれないイベントに失敗したってことじゃない?

 さらに。

 ・マーラくんと恋人以上の関係なカーマちゃんにも見分けられないほど、彼と今の私は似ている。

 ・カーマちゃんは彼を探す素振りを見せてない。

 この二つも合わせて考えると、私、身体はマーラくん、意識は真冬なんじゃないかしら?

 仮にそうだとしたら、新しい疑問が出てくるわ。

 元の意識がなくなるリスクを冒してでも行うイベントって、何なの?

 プランBってことは、失敗をほぼチャラにできるってことよね?

 全部終わったら、私は元に戻れるのかしら?

「終わりましてございます」

 メイドさんの声で、私は我に返った。

 目の前には姿見。どうぞ、ご覧くださいってことね。

 自分の姿を見るのは初めてだわ。

 どんな男の子になったのかしら?

 どれどれ…。

 おおっ!

 えっ!?

 な、なによ、これぇーーーっ!

 黒目黒髪で坊ちゃん刈りの男の子。

 それ以外の部分。顔立ちや体格はカーマちゃんそっくり。

 それが今の私の姿。

 これについて不満はない。いや、むしろ感謝しかない! 神様、ありがとうございます!

 何が素晴らしいって、この容姿なら、男の娘になれるじゃない。

 ウィッグつければカーマちゃんと双子姉妹で通るわよ。

 フフフ、夢が広がるわ。

 ………。

 ……。

 …。

 話を戻すわ。

 問題は衣装よ。

 上半身は裸。屋内だから、これは許せる。

 でも、下半身。これはさすがにどうかと思うの。

 だって、前が大きく開いた短い腰布なのよ。しかも、下着無し。

 お尻が半分隠れるだけ。他は丸見えよ。

 隠そうとする意志が一ミリも見えないんですけど!

 これなら全裸のほうがマシと思うのは私だけ?

 っていうか、大事そうに抱えてた服がこれなの?

 なんか納得いかないわ…。


「それでは、失礼いたします」

「うむ、大儀である」

 メイドさんたちは退室した。

 残っているのはカーマちゃんと私だけ。

 …カーマちゃんも、私と同じ衣装なのね。これは、そーゆー物だと割り切るしかないみたい。

 おかげでカーマちゃんを隅々まで観賞できてるわけだし、文句言ったら罰が当たるわね。

 ああ、育ち始めの裸体が眩しいわ…。


 さてと、ずっと黙ってたんじゃ、何も始まらない。聞きたいこと、いっぱいあるんだから。

「えっと、カーマちゃん、でいいかしら?」

「うむ。妾のことは、呼び捨てでよいぞ」

「そう言われても、初対面の子を呼び捨てにするのは、ちょっと抵抗があるわ」

「ほう。妾とは初対面とな。これは期待以上じゃったの」

「ごめんなさい。そう言われても、話が見えないんだけど」

「気にせずともよい。儀式はプランBで進行中じゃ」

「儀式? 何の?」

「そなたの真の力を開放する儀式じゃ」

「真の力?」

「そうくでない。儀式が終われば全てわかる」

「そうなの。じゃあ、その儀式とやらを続けましょう。次は何をするのかしら?」

「見てわからんか? 夫婦の契りを交わし、愛し合うのじゃ」

「えっ!?」

「何を驚くことがある。男と女がこのような姿でいれば、することは一つしかなかろう?」

「…」

 ぐう正論。

 しかも、それで私が知りたいあれやこれやが解決するとのこと。

 個人的にも満足できる。主に性的な意味でね。

 マーラ様は既に臨戦態勢。元のお子様サイズから、エッチな動画で見た男の人以上の大きさに…。

 いやちょっとこれはさすがに…いくらなんでも大きすぎでしょ。

「それでよい。では、始めるとしよう」


 二人はベッドの上でキス。

 これからくんずほぐれつが始まる。

「さあ、来るがよい」

 そう言い終えたカーマちゃんの体が光に包まれた。まるでスーパーサ○ヤ人ね。

 そして見る間に成長し、えちえちな身体のお姉さんに…。

 カ、カーマちゃん、あなた何者なの? 青いキャンディーも食べずに大人になるなんて、人間にはできないわ。

「ふふふ。どうじゃ、驚いたであろ?」

 声まで大人なカーマちゃん。正に、エロスの化身。

 インピオかと思ってたら、まさかのおねショタ展開へ。

 事態についていけてない私、無言で頷く。

「真の力を開放すれば、そなたにもできるぞ」

 えっ!? 今、なんと…?

 まさか、私も人間じゃ…ない?

「真冬よ、妾と一つになり、真の魔王・マーラ2世となるのじゃ」

 oh!Noooooooo!

 なんてこったい…。

 私、魔王マーラになるようです…。




「ではマーラよ、妾は先に休ませてもらうのじゃ」

「うん。お休み、カーマ」

 儀式えっちを終えたカーマは、元のロリっ娘に戻って眠りについた。

 私は切りのいいところまで情報を整理してから寝るつもり。知らなかった情報が一気に流れ込んできたから、処理しきれてないのよ。

 そんな中で、これは言っちゃっていいよねってのを、発表しておきます。

 目が覚めたとき、私、既に魔王でした。

 私、魔王に転生してました!

 初投稿です。

 自分では面白いと思って書いてます。

 読んでくださった皆様に評価していただくのは、まな板の上の鯉な気分です。

 話のペースは遅いです。投稿のペースも多分遅いです。

 褒められれば舞い上がります。貶されればめちゃ凹みます。

 そんな私ですが、よろしくお願いします。

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