第65話 本物が現れた!
「それじゃ、メリーさん!私がファイヤシールド張るからトレントに向かってファイヤシュートを撃って!」
「うん!わかった!」
私がファイヤシールドをメリーさんの前に張りトレントの鋭い枝の攻撃を防ぐ。
「ヒュァー!!」
枝に火魔法が燃え移り混乱するトレントにファイヤシュートがぶつかる。
【トレント:LV15】
HP900→300 MP200→180
弱点:火、光 属性:闇、土、木
「後3分の1だよ!」
「わかった〜!」
他のトレントはシールドを避け回りこませて攻撃してくる。それは、私が叩きおとす!できるだけ、剣は使わない方向でいこう!
でもトレント一体じゃないからなぁ。それに、クリスタルディーアもいるし。さすがにきつい。不意をついて背後に回れたらクリティカル狙えるんだけど。
・・・・・・あ!あれ使えるかな。試してみよう。
「メリーさん、ちょっと前に出てくるけど魔法撃ちまくっていいから!」
「え?わ、わかった!」
私は了承を得て、前に駆け出す。とりあえず、燃えて残りのHPが少ないやつに試す。トレントは目の前に現れた私に魔法を放ってきた。これはロックシュートか、それを避けて私はトレントの前から消え失せた。トレントは私を見失いキョロキョロする。
そのトレントに背後からファイヤシュートを撃つ!
「ヒュァー!!?」
最後のひと鳴きをして、粒子となって消えた。
うむ!成功!さっガンガンやって倒しまくるよ!
それからはユウキの独壇場となった。
もちろん、ファイヤシュートを撃つメリーさんも少しずつダメージを加えていたが、とどめはユウキが行っていた。そんな感じで、トレントはすべて討伐。メリーさんの元に一旦戻る。
「メリーさん、大丈夫?」
「うん!大丈夫。だけどMPがなくなったからちょっと休憩するね。」
「うん。タルト食べてて、私は鹿の討伐してくる!」
「うん!頑張れ!」
応援を受けて、すぐに戦場に戻る。
さて、蹴り殴って倒しまくるか!!
5匹の鹿が私に向かってくる。他の5匹は私に魔法を撃とうとしているようだ。連携攻撃か!望むところだ!!
前の5匹を魔力纏で手と足を強化し、なぎ倒していく!魔法を目の前にいる私に向けて撃とうとした後衛の鹿にはアレを使って姿を消し、背後に滑り込む。そして、とある1匹に背後から蹴りを入れる!
「キュルァァ!?」
一瞬で粒子に変わる鹿。残りの4匹にも突撃する。
そして、
「ふう。終わったー!!!」
いやぁ、疲れましたなぁ。
ピロン♪
ユウキのサブジョブ暗殺者のレベルが8になりました。
ピロン♪
ユウキの殴りのレベルが10になりました。レベルがMaxのため進化して鋼の拳LV1になりました。
ピロン♪
ユウキの蹴りのレベルが10になりました。レベルがMaxのため進化して鋼の蹴りLV1になりました。
ピロン♪
ユウキの潜伏のレベルが3になりました。
ピロン♪
ユウキの火魔法のレベルが8になりました。
ピロン♪
ユウキの魔力纏のレベルが7になりました。
潜伏は結構使えるなぁ。目の前にいたはずなのに消えるってことだもんね。そりゃ、油断するわ。うんうん、もっと練習して、レベル上げていかないと。潜伏と魔力纏のコンビはいいな。背後からの攻撃はクリティカルだからダメージは倍。そして、魔力纏で強化したら倍の倍!大ダメージだね。でもなぁ、MPの減りが少なくなるし、戦闘中にタルト食べるのもなぁ。ポーションの材料探そうかな?でもなぁ、精霊の祈りってどうすればいいんだろ。精霊に会ったことすらないし。称号でお気に入りにはなったけど。見たことないし。とりあえず保留か。
さて、残りはどうなったかね?
メリーさんのところに戻ろうと後ろを向くが、誰もいない・・・あれ?
どこ行った?いや、待てよ。私が戦闘してる際に移動しちゃったのか?
・・・迷子になっちゃった。周りを見渡してもよくわからない。んー。まあ、方角はわかるから、北方向に行ってみるか。南に行くために歩いてたんだから北に行けば戻れるよね。
しばらく歩いていると、人がいた。でも、みんなじゃないな。聞いてみるか。
「すみませーん。仲間とはぐれてしまって、ここがどこか聞いてもいいですか?」
「ん?お前は誰だ?迷子?ここは鉱山へ行くための道だ。」
「鉱山へ行く道?そんなに奥に進んじゃったのか。戻らないと。」
「待て、お前は誰だ?」
おっと、自己紹介もせず帰るところだった!
「申し遅れました、異界の冒険者のユウキと言います。ここの場所教えてくださってありがとうございました!」
「ふむ、異界の者だったか、ちょうどいい。ノアという名前とラタという名前の異界人を知ってるか?その者たちのところに案内して欲しいんだが。」
「え?ノアとラタにご用ですか?」
「知ってるのか?!偽勇者と知り合いなら尚更だ!案内しろ!」
なにやら、急に怒りを込めた言葉になった。
「落ち着いてください。えっと、名前を伺っても?」
「我が名は魔族の王キース!我の国に進軍し、我の国を傷つけてくれたあいつらを殺したくてここまで来た!」
・・・何してんのあいつら。
「・・・まあ、案内するのは構わないです。」
「む?お前の仲間じゃないのか?」
「確かに仲間ですけど、やらかした時には知り合いじゃなかったですし。それに、国が悪いことをしてないのに固定概念で傷つけるとか絶縁関係になりたいくらいですし。」
「・・・お前、面白いな。」
「ん?そうですか?普通だと思いますけど。」
「いや、普通はその固定概念とやらに付きまとわれるはずだ。それなのに、お前は我を魔王としてではなく人として扱っておる。」
「まぁ、人だしね?角とか翼とか生えてるけど、話ができる時点で、“人”でしょう?」
「・・・・・・本当にお前は面白いな!気に入った!!これをやる!」
そういって、指輪を渡してきた。
「え?何コレ?」
「これはな!我のお気に入りという証だ!【王家の証】とも呼ばれている。宝石に紋章が彫り込まれているだろう。これは我が王家の紋章だ。これがあれば魔族の国に無償で入れる!もちろん、我が城にもだ!国に来たら、遊びに来い!」
「でも、こんなのポンポンあげていいの?」
「ポンポンはあげておらんぞ?お前のような異界の者に初めて渡すし、この世界の者にも、滅多に渡さん。」
ふむ、なんだろうか、王族関係のアイテムコンプリート目指してるわけじゃないんだけど。
「まあ、いただけるなら頂きますけど。キース様は一人でここに来たんですか?」
「む、様はいらん。呼び捨てで良い!まあ、ゴミの掃除をしに来ただけだからな!連れは撒いてきた!」
「撒いてきたじゃないっすよ!何してんですか!あんたは!」
と自信満々で撒いてきたと言った後、指輪と同じ紋章が入った黒い制服の騎士さんが影の中から現れた。
「なんだ、お前ついてきていたのか。鬱陶しい。」
めっちゃ鬱陶しそうな顔だ。
「鬱陶しくてもついて行きます!宰相をあまり苛立たせないでくれます?!八つ当たりは俺にくるんですよ?!」
「夫婦の痴話喧嘩に用はない。・・・すまんな、ユウキよ。話が逸れた。では行くか。」
と腰に手を当てエスコートし始めた。
「ちょっと、何してんですか?!行かせませんよ!この先ははじまりの国の領土、許可なく入れば怒られます!それにその子ははじまりの国の王族のお気に入りですよ。セクハラまがいやったら同盟が破棄されて戦争ごとになるから!!マジでやめて!」
え?同盟?
「同盟組んでるんですか?」
「うむ、この世界のすべての国と同盟を組んでいる。戦争はしないという誓約を込めた同盟だ。我も他の国に手を出すことはせん。」
え?なら、何もしてない魔族を傷つけたということ?ノアとラタが?
・・・キースが帰ったらお仕置きかな?
「まあ、そんなことはどうでも良いお前はついてくるなよ。レイヴン。我はこれからデーt・・・ごほん。ゴミ掃除をしに行くんだからな!」
「ちょっ、今何を言いかけましたか?!彼女に手を出さないようにするためについていくに決まっているでしょう!」
この人レイヴンっていうだ。苦労性な人だな。頑張れ!
「ユウキよ無視していいからな?あいつは。」
「え?あ、はい。キース様・・・ぁ。えっと、キースはノアとラタを1回倒せば気がすむの?」
「うむ、仕方がないがな。1回でゆるしてやるのだ。異界人は何度でも生き返ってしまうからな。まあ、我らもだが・・・。」
「優しい王様なんだね。」
「っ!!そ、そうか?」
「うん!」
顔を赤く染めるキース。
それを呆然と見るレイヴン。
「まさか、魔族の王に優しいという人が現れるとか・・・ありえねー。ッガフ!!」
「何か言ったか?レイヴン?」
「鳩尾入・・・りま・・・した。」
「フン!」
あはは、レイヴンさんがなんて言ったか聞こえなかったけど。痛そう。
「じゃあ、行く?」
「おう!そうだな!!」
「・・・俺も行きます。」
何やらすごい人たちを連れて帰ってくる私って、どんな目で見られることやら。
はあ。