第59話 モブじゃなかったんだ。私たち・・・
静かな人だかりが覚醒したのはある人物の声によるものだった・・・
「・・・なんでこんなに静かに固まってるんだろ。・・・すみませーん。通りますね〜。ウインディ、ヒカル。ゆっくり進んでね・・・あ、居た!お姉ちゃん。」
人混みかき分け突き進むとポカーンとしたレミリア王女と、1人楽しそうなユウキ、そして、小さくなったクルードとルナがそばを飛んでいた。
「お!黒龍!早かったね〜。」
「ウインディ達のおかげだよ。・・・で?何したの?」
「いきなりそれですか。・・・特に何も?」
「「「「「な、な、な・・・」」」」」
ワナワナと震えながら、観客が声を出す。
「「「「「何もじゃねぇーわ!なんださっきの?!?!」」」」」
「・・・ハッ!ユウキ!すごく怖かった!でも楽しかった!もう一回する!」
とチャレンジャーなレミリア。
「・・・レミリア王女様、何があったのか聞いても?」
「はい!是非とも聞いてください!黒龍様!クルードが大きいので、下に降りれなかったんですが、ユウキがわたしを抱っこして飛び降りたんです!!」
「・・・特に何も?・・・へー。」
ジト目でユウキを見つめる黒龍。
「・・・あはは・・・。すみませんでした!ちょっと確認したいことあったからさ。つい、ね?」
ジト目に耐えきれなくなったユウキが謝罪し、言い訳を始める。
「つい、でユウキ姉ちゃんが危険にさらしてどうするの!駄目でしょ!めっ!」
ザワ!
「いいなー。わたしも黒騎士様にめっ!ってされたい・・・。」
「あんな弟が良かった。」
「欲しい。」
「フレンド申請したい。」
「抜け駆けはさせないわよ!」
「そう!我々『黒騎士見守り隊』は彼のことを見守るのが役目!」
「そんなものあったの?!入れてください!」
「あ、わたしも!」
「私も!!」
と外野も平常運転に戻りつつある。
「黒龍のめっ!って可愛いよね。わかる。」
外野の話の中に自然と逃げ込もうとするユウキ。
「お姉ちゃん?」
「ハイ、スミマセン。」
「黒龍様!続きがあるの!あのね!最初、ユウキはなんか人間爆弾みたいに落ちる!って言ってたんだけどね?全然そんなことなかったの!小さい竜巻を作り出したあとにそれを足場にしてゆっくり降りたの!ユウキに抱っこされてる時なんかあったかい感じがあってね、最初は怖かったんだけどホッとして楽しくなったの!」
「竜巻に乗った?もしかしてカマイタチの事?あったかくなったっていうのはアレ使ったの?」
レミリアの話を聞き何を使ったか的確に当てる黒龍。
「うん。そうだよー。」
「そりゃ目立つはずだね。いや、ね?ユウキ姉ちゃんが行った後、国王様に聞いたんだけど、クルードがこの国の上飛んだら大騒ぎにならないかって、聞いたんだけど。『もう遅いだろうな。』って言ってたんだよね。」
「あぁ、その件についてはそこのノアとラタに怒られたところ。」
話に突然自分たちの名前が言われたことで、まだ固まっていた2人が動き出す。
・・・固まりすぎでしょう。
「「・・・ハッ!!」」
「おはよー。2人とも。」
「お姉ちゃんがご迷惑かけました。2人から何か言いたいことはありますか?」
「・・・とりあえず、あの竜巻の技ってどれくらいで覚えれるの?ってか、あんな感じで使える技なの?」
とカマイタチの事について聞いてくるラタ。
「え?ああ、カマイタチね。あれは風魔法のレベルが10になったら覚えれるよ。使用時の説明にはコントロールできる攻撃魔法だね。追尾機能つけたりするためのものなんだろうけど、足場にできるんじゃないか。と思って思いつきで試した!」
「・・・サポート用の魔法じゃなくて、攻撃魔法なのに、あんな使い方・・・。」
呆れるラタ。
「ありえねぇ。さすがというべきかなんというべきか。」
信じられない顔をするノア。
「いやいやいや、そんなことより!なんでそんなにスキルレベル上がってるんですか?!もうMAXっておかしくないですか?!」
と赤い髪の女の子が言う。
「?君は・・・誰だっけ?」
見たことある気がする。・・・けど思い出せない。
「お姉ちゃん、この人ギルドで絡んできたえっと、名前は・・・フミさんだったような。」
「っ!覚えてくださっていたんですね!黒騎士様!・・・ユウキ様!私はあなたのプレイを見て心を入れ替えました!お願いします!クランに入れてください!私をお側に!」
「・・・フミって確か・・・絡んできた子?また、ノアとラタファンで入りたいっていうならお断りだよ。それにクラメンこれ以上増やす気ないし。」
思い出した後嫌そうな顔をするユウキ。すぐに断ると伝えるが、
「いえ、ノア様とラタ様のファンであることは否定できません。ですが、入りたい理由は違います!!
ユウキ様!どうか、お側にいさせてください!あなたの!」
「・・・はい?」
意味がわからないユウキ。
「この国の人たちとどうやって仲良くなったのですか?!なにか攻略のヒントとか!!!教えてくれませんか!」
「えっとー。・・・どういうことかな?全然わかんないんだけど。」
混乱中のユウキ。
実は・・・と事情を話し始めるフミさん、あの騒動を起こしてからこの国の人の店の方々に色々と言われ、アイテムを買おうとしても売ってくれないだとか売ってくれても値段が上がってしまっているだとか不当な扱いを受けているらしい。
「・・・マジ?」
と可哀想なものを見る目で聞くノア。
「・・・はぃ。」
泣きそうな顔になるフミさん。
「つまり、前にガッツさんが言ってたことが現在起こってる、と。・・・うわぁ。」
実際に見ると可哀想に見えてくる。
それで、この子は私のクランに入れば大丈夫だと思ったと?・・・そんな理由で入られるのは嫌だな。
「悪いんだけど、そういう理由で入られるのは困るんだよね。建前としては楽しんでいこう!って感じのクランだし。重い悩み付きの人はちょっと・・・」
「・・・お、お願いします!なんでもするんで・・・」
断っても、泣きながらお願いしてくる。
「・・・お姉ちゃん、このまま放置もできないよ?」
「うーん。」
どんなことを言えばいいのか悩むユウキ。
その様子を見守っていた外野の中から声が上がる。
「なあ。あんたが好感度100%にした人なのか?なんかコツとかあったりこれ使えばいいんじゃないか。気づいたことないのかよ。それを教えればいいんじゃないか?俺たちも知りたいし・・・。」
外野の中の紺色の髪の男性が声をかけてきた。
「あれ?ガロンじゃん。久しぶりだね!」
また黒龍が声をかけてきた人が誰なのか当てた。
「黒龍、久しぶり。あ、あのさ。そこのアイ・・・白い髪のプレイヤーとどういう関係?」
「お姉ちゃんだよ。この前話したでしょ。」
「え?!マジで?!」
・・・ジー(なんだ?こいつ見たことある。黒龍と一緒にいたときにあったんだっけ?いや、違うな。あれは・・・そうだ!)」
「思い出した!!北門でストーカーしてきたやつだ!」
「・・・はぁ?」
「っ!!」(汗)
威圧の含んだ声できき返す黒龍と、
急激に汗を流しながら焦るガロン。
「ガロンくん。少しお話ししない?」
「そ、そそそれは後にしよう!こっちの女の子の話を・・・「ユウキ様をストーカーしたと言いましたか?」・・・え?」
「最低ー。」
助けに入ったはずのガロン。墓穴を掘りフミからも軽蔑の眼差しを受ける。
「・・・なんでこうなるんだ・・・俺ついてねぇー」
今度はこっちが泣きそうになるようだ。
「あー。ほらほら、黒龍もフミも落ち着いて、ストーカーさんが泣きそうだから。」
この言葉で更に傷つくガロン。
「「「「いや、お前のせいだろ!ストーカー呼びはやめてやれ?!」」」」
えー。そんなこと言われても・・・。
「えっとー話がずれたけど、好感度上げるための策ならさっき見つけたよ?それでいいなら教えるけど。まあ、普通に会話して普通に生活するだけでいいと思うけど。」
策があると聞いてすぐさまガロンを放置し振り返るフミ。
「教えてください!!」
すごい必死だねー。
「えっとね?本屋で何が売ってるか知ってるよね?」
「ラタ様が流してましたね。確か、レシピでしたか。それがどうかしたんですか?」
「そのレシピってなんかプレイヤー専門のものらしくてこの世界の人内容読めないんだって。だから、一番簡単な方法としては、それを利用して少しずつ仲良くなればいいんじゃないかな。」
「わかりました!頑張ってみます!」
「あーうん。ガンバッテ。」
「それでは早速試してきます!失礼します!」
そう言って一礼して去るフミ。
「・・・さて、ごめんね。レミリア、ちょっと行きたいところあるんだけどそこ先に行ってもいい?」
「うん?お話終わった?どこでもいいからお散歩行こっ!」
元気よく返事をするレミリア。静かに待ってくれててすごくいい子だ。
・・・・・・。
無言でレミリアのことを凝視する複数の男プレイヤー達。それに気付き、レミリアをもう一度抱っこするユウキ。
「うわ!えっ?どうしたのユウキ!」
急に抱っこされたことに驚くレミリア。
「・・・レミリア、人間花火見たくない?」
「え?」
「そこのレミリアを変な目で見てる奴ら、花火になって見たくない?立候補したら特大花火にしてあげるよ?」
ビクッ!!!!
「・・・お姉ちゃん?やめてあげなさい。」
「ユウキ、わたし大丈夫だから。やめてあげて?」
「むう。レミリアまでそういうなら我慢する。」
(よかったー。レミリアちゃんまじ天使!)
(それに比べて・・・)
(おい、やめろ!今のが水の泡になるだろ!)
「それで、どこに行くの?お姉ちゃん。」
「んー。マリンダさんとこかな。世間話しに。」
「・・・お姉ちゃん、優しいね〜。」
「・・・ナンノコトカナー。」
さてさて、誰がフミさんにアイテム売るなって言ってるか探さないとね〜。そういうの面倒ごとしか考えれないからやめてって言わないと。はあ、めんどくさいなー。




