第52話 会議
文章を一部訂正しました。
[とある緊急会議室]
そこは、楕円のテーブルが置かれ、周りに椅子があり、座れるようになっている。会議室。部屋の奥にはホワイトボードが置いてある。ホワイトボードには会議する内容がでかでかと書かれていた。
【例のあの人がはじまりの国の好感度100%に今日なるかもしれない件について。】
「で?実際にこの件起きそうなのか!近藤!」
少し太ったおっさんが近藤に聞く。
「はい。起きると思います。今最後のNPCに会いに行ってますので。」
「それって王様だよね。」
と瑠璃がいう。
「まさか、こんなに早く好感度システムを使いこなすやつが出てくるとは、思いもしないぞ!βのときはポンコツしかいなかっただけか。」
太ったおっさんが愚痴る。
「あのイベントが開始されるのは良いんですが、さすがに早いと思うんです。そこで、開始されるのは1週間後から1ヶ月後に書き換えたほうがいいのでは?」
キリッとメガネをかけた秘書みたいな感じの女の人がパソコンをカタカタしながら言う。
「良い案だ!金木!今すぐ実行しろ!」
と太ったおっさん。
「開発部長、それは良い案なんですが、その間に例のあの人は倍強くなりますよ?」
と近藤。
「うぐ。・・・近藤、なんであの子だけスキル上がりやすいのかわからないのか?」
開発部長と呼ばれたおっさんが言う。
「わからなかったです。そういったスキルかと思ったんですが、何も出なかったし。」
「ねえねえ、例のあの人って、ユウキのこと?」
瑠璃が例のあの人についての名前を出した。
「「「・・・・・・。」」」
じとっと瑠璃を睨む複数人。
空気読めよ的な感じ。
「えー。あー。すみません。」
気まずそうに目をそらし謝る瑠璃。
「・・・はあ。で、そのユウキさんは今どれくらい強いんだ?」
と開発部長。
「えー。契約獣の中に、ルフがいます。」
「「「「・・・はあ?!」」」」
その場にいた近藤以外が叫ぶ。
「瑠璃は会ってるだろ。あの場に召喚してたし。」
「・・・あ。いたね。でも小さくなかった?もしかして、孵化したて?」
「まあ、孵化はしたてだが、数日経ってるからどれくらい強くなってるか、どのくらいの段階まで大きくなれるのか俺は知らん。」
「そこはしっかり調べろよ!」
と開発部長が叫ぶ。
「その件については大丈夫です。今私の部下に張り付かせてるので。近藤だけでは無理があると考えての行動です。」
と金木さんが答える。
「さすがだな。近藤も金木を見習え!金木の部下ということは忍者職とかか?」
と開発部長。
「はい。他のものになっても良いとは言ってるんですが、忍者かっけーじゃんって言って聞かないもので。」
とため息つく金木さん。
「あー、じゃあ、隠密とか覚えてる?」
と近藤。
「はい、当たり前です。一般プレイヤーが知らないスキルで使えるスキルですから!」
と金木が言ってるが・・・
「じゃあ、背後に気をつけるように言ったほうが良いぞ?ユウキも持ってるし、レベルかなり上げてて、今パーティには弟がいるからついてくる人間には敏感になるはずだ。」
と、忠告する近藤。
「あの、隠密をですか?よく身につけれましたね。それに弟がいると言いましたが、なぜでしょう?」
「あー、ユウキの弟ってのが、今はじまりの国で2番目に噂になってる黒騎士だ。名前は黒龍っていうんだが、知ってるか?」
「黒騎士様ですって!」
バンッと机を叩き立ち上がる金木。
「姉弟で噂になってるのな。で?なんでなんだ?」
と開発部長。
「ユウキと黒龍は本当の家族でして、それぞれの事を大切に思ってます。もしそれを壊すまたは邪魔したら死んだほうがマシなくらいの苦痛を与えられます。主にユウキから。」
「・・・く、苦痛?」
「何をされるかについては置いといて、聞きたいことがあったんですよね。」
と改まった感じで会議室に集まった人々を見る。
「なんだ?ってか、何をされるか教えろよ。」
と開発部長。
「拷問ってスキル組み込んだやつ誰ですか?」
「はっ?拷問?あー。そういうのはえーっと・・・金木じゃなかったか?」
「私ですね。忍者といえば拷問ですよ!ね?みなさん!」
同意を求め見渡す金木さん。
「とりあえず、金木。お前はゲームの世界で。俺に殺されろ。一回で良いから、な?」
笑顔で伝える近藤。
「は?なんで・・・ぇ。まさか・・・」
なんとなく悟った金木さん。
「まじか?」
とひくついた顔で聞く開発部長。
「マジです。」
死んだ目になる近藤。
「Sの女の子がなぜ、好かれてるんだ?おかしくないか?AIがMに育ってないか怖いんだが。」
と真面目な顔でふざけたことを言う開発部長。
「あのー。そのスキル組み込んだ人が金木さんなら、修正したらどうですか?レベルが上がるごとにできることが増えるとか・・・」
と今まで発言せず見守っていたコック服の男の人が聞く。
「陛下か。それは良いアイデアだが、できるのか?金木。」
と開発部長がいう。
「・・・いやいやいや、なんで僕の時だけあだ名で呼ぶんですか。織田っていう苗字て呼べば良いでしょう!」
と、織田さん。
「まあ、そんなこと置いといてだ。変更可能なのか?」
「・・・それが、その。できないみたいです。」
ごめんなさいとパソコンにうつ伏せる。
「「は?」」
「なんでだよ!」
と近藤。
「システムをいじればできるはずだ!」
と開発部長。
「さっきからやってるんですが、介入ができません!拷問スキルのみ!」
「介入ができない?いや、おかしいだろちょっと見せろ。」
とパソコンを自分の方向に反転させると、
「・・・なんだこれ。」
「さっきからその画面に移動して戻っても戻ってもダメなんですよー。」
パソコンに映し出されたそれは、
黒い蜘蛛が糸を吐き出し、画面を覆い尽くす映像だった。
「この蜘蛛って・・・ラウ!テメェか!」
「え?!この蜘蛛のこと知ってるんですか??」
と涙目の金木さんが聞く。
「知ってるも何もこいつは・・・「メッセージが入りました。」ん?」
近藤が蜘蛛の正体について言おうとした時、メッセージが来た。
《メッセージ1件》
無題
ユウキ様のお得意のスキルを今更いじろうとは良い度胸です。いじることは絶対許しませんので、無駄な抵抗はやめなさい。また、いじろうとしたら食い止めるだけです。
そこにいるであろうバカ共にお伝えします。もし、ユウキ様のこの世界での生活を邪魔した場合、ユウキ様のことを気に入っているAI全てが、襲いかかると覚悟しておいてください。
以上です。
byラウ
そのメッセージを見た近藤は固まった。
「ん?どうしたんだ?」
開発部長とその他の人もそれを見る。
「これは、大問題じゃないか?」
「AIが、勝手に?」
「嘘ぉ。」
「すぐにリセットする必要があるんじゃないか?」
「だけど、このメッセージが本気だったら、リセットすらできないんじゃ。」
「・・・どうすんだこれ。」
頭を抱える会議室の人々。
「・・・まず、近藤。この蜘蛛は、ユウキさんの契約獣か?なぜ、こういうことができるんだ。魔獣はこんな技術持ってないだろう。」
と難しい顔で質問する開発部長。
「こいつはもともと、チュートリアルをやっていたAIでして、ユウキのことを気に入りついて行きたがったため魔獣となり、今に至ります。」
「チュートリアルのAIだったわけか。なら納得がいくな。・・・次に対処法だが。とりあえず放置だ。このことは内密にしとくこと。この蜘蛛に返信は打てるのか?」
「ですが!危険です!AIが本当に何かしたらどうするんですか?!」
と騒ぐ金木さん。
「返信は・・・打てるみたいです。どう打ちますか。」
「こう打て。『我々は君のご主人の生活を害することはしない。だから、このことは内密にしていただきたい。こちらが何もしなければ暴れないことを約束してくれ。』と。」
「・・・・・・。」
カタカタと一字一句間違えないように打つ近藤。
送信して数分後、
「メッセージが入りました。」
《メッセージ1件》
無題
条件了承しました。そちらが何もしないのであれば私たちも何もしません。
そちらが行うイベントやクエストなどの情報なども漏らさないことを約束しましょう。そんなことをすれば楽しみが減りますし。そろそろ戻らないとユウキ様が心配させてしまうのでこれで失礼します。
プレイヤーとして私と出会っても、ユウキ様の敵にだけはならないことをお勧めします。
以上です。
byラウ
「はぁ。これでひとまずは大丈夫だろう。」
と肩の力を抜く開発部長。
「俺は、クランメンバーとして、ユウキのことをみていればいいですか?」
「ああ、頼む。とりあえず、解散だ。金木、例のイベントの実施日はリアルで1ヶ月後だ変更間違えるなよ。」
「・・・はい。」
「よし、これで解散だ。ログインしたいやつはしてこい!」
「はい!してきます!」
勢いよく立ち上がり、会議室から出る瑠璃。
「あいつは、空気読めなさナンバーワンだな。」
この言葉には全員が頷いた。




