第30話 テンプレって必ずあるんだ
さてさて、今日はPVPか。なにが起きますかね〜?ログイン!
「んー。まだ時間があるから、先に冒険者ギルドに行くかな。」
「あ!ユウキさんだ!」
そう声をかけて駆け寄ってくるのは、
「イアン!久々だねぇ。元気してた?」
「ユウキさん、今日ノア様とPVPって聞きましたよ?!どうしてそうなったんですか?」
イアンも様付けで呼んでるのね。
「えーっと、ノアのせいで不快な気持ちになったからかな?まあ、すぐ終わるよ。」
「えぇ、ノア様強いですからね!」
いや、私の方が、強いと思うよ?多分。
まあ、イアンには黙っておこう。
「さて、イアンはこれからどこ行くの?生産ギルド?」
「いえ、予定はないんです。とりあえず、ログインしただけなんで。」
「じゃあ、一緒に冒険者ギルドに行く?」
「はい、ご一緒します!」
イアンと共に冒険者ギルドに向かう。
〜冒険者ギルド〜
「いい加減にしてください!さっきから言っているでしょう!他の冒険者に迷惑です!帰ってください!」
なんか、慌ただしいね?どうしたんでしょう?
「何で報告がないんだ!討伐されたら報告するのが当たり前だろ!一体誰だ!情報をラタ様とノア様に流させているやつでてこい!」
あれ?これ、私じゃない?
んー。もう少し様子見しようか。
「西のボス討伐したやつをここに呼出せって言ってんだ!」
あー。私だね。ここの知り合いであるセルフィーさんを怒鳴りつけている馬鹿はどなたかな?
「ギルネスト様が呼んでいるって伝えろって言ってんだよこの!この!NPCが!!!」
ぶち!
「ねえねぇ、そこのお兄さん。そこ邪魔なんだけど。」
「ああん?今、俺がこの受付に話ししてるのが見えないのか?!」
「邪魔だと言ったんだよ!どけ!」
威圧発動!!!
「っひ!」
顔が真っ青になり後ろに倒れて尻餅をつく。
私は蔑んだ目を向けて言う。
「それで?私に何か用?」
「・・・ぇ。」
「君は西のボスを倒したやつに用があるんだよね?だから私に用があるんでしょう?何?」
威圧は解除しない。標的は目の前のバカに集中しているが少し漏れているのか、他の冒険者の緊張が高まる。
「・・・ぉ、お前が、討伐者?じゃあ、なんで、ノア様と、ラタ様に情報を流させているんだ・・い、いるんですか。」
「名も知れてないやつが。西のボス討伐したなんて言って信じるの?それに強制的に流させているんじゃなくて勝手に流してるんだからね?こっちの知ったことではないよ。理由なら本人に聞け!」
「っ!っは、はぃぃ!」
「ユウキ様その辺にしておいてあげてください。私に免じて。」
セルフィーが頭を下げてきた。
「セルフィーは被害者なんだから頭下げなくていいのに。」
「いえいえ、収まらせることができなかったのは、私ですから。」
「ふむ。しょうがない。セルフィーに免じて許してやる。セルフィーに感謝してこの世界の人間をNPC呼ばわりするなよ?したら、次はないよ?」
最後に釘を刺して、威圧を解除する。
「は、はぃぃぃ!!」
威圧が解除されて、立ち上がれるようになったギルネストは瞬く間に走り去って行った。モブだなー。テンプレって起きるんだね。
さて、固まってるイアンの肩を揺らして起こす。
「おーい。イアン?起きて!」
「はっ!ユウキさん、一体何が?ユウキさんが何かスキルを使ったのはわかったんですがそれから体が動かなくなって、それで、その!」
パン!
「っ!」
「落ち着いて?イアン。ちょっと苛立って、ここで騒いでいたやつを脅しただけだから。ね?」
私は手を鳴らしイアンの思考をリセットさせる。
「は、はい。」
「ふむ。じゃあ、少し受付で話があるから、イアンはそこの席に座ってこれ飲みながら、おかし食べてて。はい。クッキーとジュース。」
そう言って、クッキーと回復ポーション(プルの実味)を渡す。
「はい。」
イアンが椅子に座り、お菓子を食べ始めるのを見てセルフィーに向き直る。
「さて、用件を済ませようか。」
「はい。西ボスの討伐の証として1つ部位をいただきたいんですが、よろしいですか?」
「うん。えっと、【竜の毒牙】でいい?」
「はい。大丈夫です。・・・確認しました。標準より大きさが大きいようですね。この大きさであれば、全長、3メートルぐらいでしょうか。」
「牙だけで、大きさってわかるもんなの?すごいね。当たりだよ。」
「ユウキ様。西ボスのには賞金が付いてまして、価格が50万Gとなります。こちらは、大金ですので、ホームを持っていれば預けたりできます。こちらの、冒険者ギルドでも口座を作っていただければ、預けることは可能です。そのままのお渡しとどちらにしますか?」
「預けたりできるの?じゃあ、お願いしようかな。とりあえず、30万は口座に、残りは私にちょうだい。」
「かしこまりました。・・・あのぉ。あの方が食べているのはユウキ様がお作りになられたものですか?」
「ん?イアンの食べてるクッキー?そうだよ。・・・クッキーはないけどお菓子作ろうか?でも今、材料がなー。お弁当なら作れるよ?昨日ねバックスピークの肉で唐揚げ作ったんだ!それでお弁当作ってあげるよ。」
「よ、よよよよろしいのですか?!是非ともよろしくおねがします!」
よ、多いなー。まあいいか。
「ちょっと待ってねー。んー。米は少しあるね。あ、器どうしよう。んー。」
「器でしたらすぐに用意してきます!」
と言って窓口の奥に入っていった。
素早い。
弁当の中身は〜、唐揚げとご飯となにがいいかな。野菜が少しあるからそれも入れて、んー。少し中身が寂しいけどそのくらいしかできないなー。卵さえ入手できれば。卵焼き作れるんだけど。他にも親子丼とか。んー。バックスピークって鶏みたいって黒龍言ってたな。セルフィーにバックスピークの卵は入手できるのか、それは食べれるのか聞いてみるか。
「お待たせしました!これでよろしいでしょうか。」
セルフィーさんが持ってきたのは可愛らしい小さな丸い木製のお弁当箱だった。なかなかいいね。
「じゃあ借りますね。
オリジナル/セット/お弁当/唐揚げ弁当/調理!っと。」
【手作り唐揚げのお弁当★】
品質:B 出来上がり度:9
効果:空腹ゲージ50%回復
HP30%回復
説明:手作り唐揚げが入ったホカホカのお弁当。冷めても美味しいお弁当。色合いのバランスも良い。一定時間HP常時回復5%(効果時間:1時間)
「はい、できたよ。」
セルフィーに手渡した。
「うわぁ!!美味しそうです!お昼ご飯じっくり味わって食べますね!」
目をキラキラさせてお弁当を見つめながら言った。
「ふふふ。よく噛んで食べてね。」
そういった後、私の顔を見て、顔を赤くして俯くセルフィーさん。どうしたんだろうか?
「セルフィーさん?大丈夫?」
「だ、だいじょうぶれす。」
「ユウキさーん!そろそろ試合の時間ですよー。」
「あ、いけない。ごめんね、セルフィーさん。私行かないと。」
「は、はい。こちらもすみませんでした。あれ?試合って何ですか?」
「セルフィーさんはノアって冒険者知ってる?そいつと対戦するんだ。場所は噴水広場だよ。もしよかったら応援に来てね!」
「ユウキ様の、応援・・・。行きます!あ、今から行きます!私も連れてってください!」
「え?仕事は?」
「大丈夫です!代わりはいくらでもいるんで!」
「「「「ずーるーいーー!!!」」」」
他の受付さんが叫ぶ。
「さっ!行きましょう!」
私の腕を引いて前を歩くセルフィーさん。
「イアーン行こー。」
「はい!あれ?こちらの方は?」
「セルフィーだよ。ギルドの受付嬢さん・・・だよね?」
「まあ、それだけではないですが。他にも。サブのギルマスしてます。」
「「え?」」
「マジ?」
「マジです!」
うわぁー。すごい人だったのね。セルフィーって・・・。いつか、ギルマスにも合いそうだな。
「あ、話変わるけどさ。東の街道の道沿いにバックスピークって名前の魔物出るらしいけどその魔物の卵って手に入るの?それで、その卵食べれる?」
「バックスピークの卵は食べられますし、入手もできますよ。ですが、入手は少し難しいです。巣の近くには常に雌鶏が居ますし、手なづけるのも一苦労しますしね。」
「方法は自分で考えないとね。卵が調達できれば色々作れるんだよね!試合が終わったら取りに行こうかな。」
PVPはHPが3割まで先に削れた方が負け。私が勝ったら、スキル拷問を使用。
ノアが勝ったら・・・あれ?何にも決めてないな。後で聞くか。
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〜噴水広場〜
「おっ!来たな!我が魔王に挑む勇者よ!」
「・・・・・・・・・。」
かわいそうなものを見る目で見つめる。
かわいそうな人がいるんです。目の前に。
「そんな目で見るなぁぁ!!しょうがないの!ファンクラブから言ってって言われたの!」
「ファンクラブ?そんなのあるの?」
「お前もトッププレイヤーになるのなら覚悟しとけよ。」
「大丈夫。そういうの作ったら破壊するから。」
「破壊してほしいって思って作る奴らもいるぞ。」
「大丈夫だよ。ノアが負けた際の拷問を見て作る人なんかいないでしょう。」
「拷問・・・嫌だぁぁぁ!帰りたくなってきた!」
「負けなければいいんじゃない?そういえばさ、ノアが勝ったらどうするの?」
「あー。考えてなかったな。・・・じゃあ、街の中ではフード脱ぐというのは?」
「えー。」
「まあ、勝てばいいんじゃないか?勝てば。」ニヤニヤ。
「うん。じゃあ勝つね。さて、どんな拷問にするかなー。」ニヤニヤ返し!
「おいそこの2人さっさと始めろよ。あとが詰まってんだから。」
とラタが言う。
「ハイハイ。あとなんか詰まってないでしょ。まったく。」
「じゃあ、やるか!」
「うん!殺りあおう!」
「え?なんか変じゃなかった?!」
「気のせい気のせい!アハハハハ!」
「こ、黒龍・・・ユウキおかしくないか?」
「頑張ってねー。ユウキお姉ちゃん、ハイになってるから。」
「い。」
「い?」
「嫌ぁぁぁーー!!」
女の子みたいな声を出す変質者ノア。さて、殺ろうか。