03 読者様を呼び込む秘策
草原で 兎戯る 水浸し
フランツィスクス・アイレンベルク
そんな初夏に少し早い6月の水遊びを終えてエイスニルへ帰ってきた俺を待っていたのは、冒険者ギルド受注課のダンディなおじ様こと受注課第一係長のアスムス氏であった。
と言うのは俺の予想通りに上薬草の調達依頼が増えていた事と、事前に「疫病対策の上薬草を集めるために10日間冒険者を雇いたい」と受注課に依頼を出して冒険者を雇っていた事が合わさっていたからで、疫病対策を遅らせたくないギルドとしてはわざわざ依頼発注数を調整するために俺を待っていたらしい。
それを聞いて若干申し訳ない気持ちになったが、結論から言えば今頃出発のはずが現時点で納品完了という10日前倒しのスケジュールとなっている。
俺は発行されたFランクの真新しい免許証を受け取りに行った際に受注課から上薬草を持ってくるよう声を掛けられ、運ぶと直ぐに鑑定課で品を調べられた。
上薬草は合わせて1,000本弱を持ち帰れたのだが、ウサちゃんと戯れていた最後の採取分はろくに鑑定をしていなかったために不合格品も混ざっており、4時間ほど鑑定を受けた結果として結局Eランク48単位分にあたる960本が認められた。
これでもしも50単位分の依頼を受けていたら2単位を落として依頼成功率96%となっていたところだが、今回は成功分だけ受注するという形なので100%成功と言う形で納まった。
どうも仕事の見積もりは、自分の予定よりかなり余裕を持って設定しておいた方が良いらしい。無茶は禁物である。
なお不合格品となった残りの上薬草であるが、俺が持っていても調合なんて全く出来ないのでサービスとばかりに無償で提出しておいた。
不合格品とはいえ何人分かの薬にはなるだろうし、患者が1人でも減ればその分だけ感染のリスクも下がるわけで、巡り巡って俺に利益が無いわけでも無い。
情けは人のために非ず。
さて肝心の冒険者点数であるが、今回は依頼が出るであろう品物を俺が自費で事前に調達しておき、他の冒険者と別れた後に1人で調達依頼を請け負った形となったので、Eランク達成4点×48単位分の合計192点は1人で総取りとなった。そしてさらに疫病の早期対策に貢献したとかで賞1回が追加され、納品数×1点の計48点を加点された。
そのため俺の合計は240点となって、晴れてDランクへと昇格したのだ。ただし報酬の方は192万Gのままで、諸経費を差し引くと92万Gの儲けである。
「すみません、フランツさん。ランクアップされた方の免許証は、基板自体を新しくお作りするので1週間ほど掛かります」
「…………またかよ」
シンシアが若干申し訳なさそうな表情を浮かべながら、冒険者免許証が渡せない事を告げた。
カードを作るのに2週間掛かると言われて兎と戯れて帰ってきたら、今度はカードを新しくするので1週間待ってくれと言われたわけである。
2週間も待った上でまた1週間待ってくれというのは確かに長く感じられる。
「ちなみにランクアップしない普通の更新なら、どれくらいの時間で済むんだ?」
「同ランクの一部更新は該当部分の入れ替えだけで済みますから、この都市で行うのでしたら長くても1時間ほどです」
通常の冒険者免許証の更新作業は、カードの基盤をそのままに『点数』や『依頼達成率』など一部の板を嵌め変える形で行う。
そんなに簡単に済むと言う事は偽装し易いと言う事でもあるが、世間的な冒険者の評価はS~Fの冒険者ランク部分で見られており、各種の恩恵もそこで発生するために他を偽装してもさほどメリットは無い。
メリットが皆無というわけでは無いが、正式な依頼を受けられるのが実数を把握している冒険者ギルドだけな上に偽装が発覚すると免許剥奪となるので偽装している冒険者はあまり居ないだろう。
もちろん入れ替え作業には特殊な工具や資材、技術などが必要とされるので、俺程度ではやろうと思っても出来ないのだが。
「ランクアップして基板自体を新しくする人間なんて、1日にそう何人も出ないだろう。すると知識認定の『魔法2』を持っている職員があまり居ないのか?」
冒険者免許証の『S~Fのランク』と『属性・魔法部分』には各属性の力が結晶化した輝石の加工品が使われており、ランクアップなどをするとその部分を新しくしなければならない。
だが水の輝石と火の輝石と隣り合わせにすると、輝石同士が干渉してしまうので調整作業をしなければならなくなる。
ちなみに俺のカードに使われている輝石は「ランク」1ヵ所、無属性を除いた「属性」7ヵ所、水の「魔法」4ヵ所の合計12ヵ所で、輝石の強さも1~3とバラバラだ。
同じくらいの大きさの輝石でも内包している力には差があるので、その差を魔法の鑑定で数値化してから、それに応じた組み合わせで連結作業を行わなければならない。
そう言う調整作業を行う時に必要とされるのが、知識の『魔法』である。
「…………確かに、魔法2を持っている方が多いですとは言えません」
シンシアは言い辛そうに、回りくどい肯定で返してきた。
中等校卒業者で魔法の教科の成績が良ければ、こういう調整作業に必要な魔法1の認定を持てる者も居る。
だが魔法1が総論で魔法2が各論と言われており、数値の組み合わせが理解できるのは魔法2からだ。
魔法1は計算式の本を見ながら一々調整しなければならないのでとても時間が掛かる。道理で1週間も掛かるわけである。
「しかし1週間後か。どうしたものか」
「免許証は新しいものが出来るまでFランクのものを所持するしかありませんけど、Dランク冒険者として依頼を受ける事は出来ます。免許証発行から4時間での昇格決定は、私が受け持たせて頂いた方の中で最短記録でしたよ」
「…………と言う事は、他の担当者が受け持っている冒険者の中にはもっと早い昇格だった奴も居るのか?」
「はい。聞いた話では、免許申請中に討伐依頼が掛けられていたBランクの転生魔物を倒して、免許発行と同時に256点を獲得された転生者がいらっしゃるそうです」
「なるほど。魔物退治なら素材の鑑定に時間が掛からないだろうからな。鑑定時間を差し引いた分だけ昇格決定が早かったわけか」
FランクでBランクの魔物を倒すとは、さぞ高名な読者様に違いあるまい。
俺が冒険者ギルドの職員となった暁には、ぜひ冒険譚を聞かせて頂きたいものである。
「ランクCまで残り360点か。まだ先は長いな」
「フランツさんは、ランクCを目指しておられるのですか?」
「ああ。冒険者ギルドの受注課員になるには、ランクC以上の実務経験が必須だろう」
「私はフランツさんが、他の転生者の方のように、高位冒険者を目指されるのかと思っていました」
俺が理想を語ると、シンシアが驚きの表情を浮かべて聞き返した。
冒険者ギルドの職員と領地調査官とでは、どちらの給与が高いのか微妙なところである。
それに転生者としての力を持っていたら、普通の職業よりも冒険者になる方が稼げるだろう。
「いや、冒険者として無茶をする気は無い。冒険者ギルド員は目標の一つなんだ。ランクCになれば、資格的には受付以外に成れるだろう?」
俺はそう言ってFランクの冒険者免許証の裏側の資格を見せた。
そこには転生で持ち越せたものと、天使に勧められて転生ptで獲得したものとで、沢山の資格が並んでいる。
受注課にあると便利な算術3、商学1、地学1、史学1、法学1、医学1、魔法2、魔物2、動物2、植物2、鉱物2、毒物2。
鑑定課に必要な鑑定2、魔法鑑定2。
免許課に必要な算術3、魔法2。
査察課に必要な戦闘技能3、魔法技能3、馬術1。
これは俺が凄いのではなく、転生時の天使の仕事が完璧だったからだろう。
貴重な質問数の一つを使用して「今の俺の状態から中堅以上の冒険者ギルドの職員になるには、どうptを割り振れば良い?」と聞いただけの成果は充分に出ている。
今ならば「実務経験が必要な受注課」と「性別的に無理な受付嬢」以外の4課で採用されるかもしれない。
免許課なんて狙い目だろうが地味な気もするので、出来れば頑張って受注課か査察課、あるいはお宝を鑑定できる鑑定課辺りになるのも悪くない。
シンシアははぁっと溜息を吐いてから、俺に免許証を返してきた。
「確かに希望してギルド職員に空きが出れば、採用されるかもしれません。でもフランツさんなら、ランクCよりも上を目指せると思いますよ?」
「上を目指していたら、死亡して天上にまで上がってしまった。なんて事になりかねない。もしもCランクに上がってギルドに雇われたら、同僚としてよろしく頼むよ」
冒険者も稼げると言えば稼げるが、今回はたまたま得意分野だっただけの気もするのでこれで一生食べていけるなんて自信は持っていない。
時間だけは沢山あるので、冒険者を長く続けてからギルド職員になっても良いのだが。
「私も年を取ってきましたから、いつまで受付課に居られるか分かりません。もし同僚になられるのでしたら、お早めにお願いしますね」
その呟きを聞いた俺は、シンシアに内心を読まれたのでは無いかと冷や汗をかいた。
ギルドの受付嬢は1年更新の契約職員で、基本的には十代後半までが多い。シンシアは初等校を卒業してから4年働いて現在15~16歳くらいのはずなので、あと4年は居ないかも知れない。
ここで「契約を打ち切られたら、うちに来ると良い」と言えば、一体どうなるのだろうか。
若干そんな誘惑にも駆られてしまったが、俺は現在ランクDの冒険者である。
30歳でランクDというのは、15歳から15年間働いて総収入が600万Gに届かず、世間的には年収20万G程度だったと見なされる人だ。
正規国民の平均年収は30万G台、つまり現在の俺の評価は平均の三分の二。
ご近所さんから若干可哀想な目で見られるレベルでしかない。
逆にシンシアは綺麗所の受付嬢で、ランクCとかランクBが寄ってくる相手だ。
「そうだな。頑張るとするか」
時々、必要な時に必要な条件を満たせていないなぁと見送る事がある。
端的に言うとヘタレである。
各地でハーレムを築くのは、転生ptの高かった作者様と読者様にお任せする。
まあ俺もランクが上がったら考えるとしよう。今はDランクなので許して欲しい、明日から頑張る。
「さてと、アイテムも使ったし補充がてら街を見回ってくるかな」
「はい。またのご利用をお待ちしております」
俺はシンシアに見送られながら冒険者ギルドを後にした。
「そこのお嬢さん!いや、若奥さん!今夜は魚なんてどうだい?」
「……わたしの事ですか?」
「そうだ!入荷したばかりの獲れ立てピチピチの魚たち。どうだい?どれも美味しそうだろう。それはそうさ、こいつらは今朝獲れたんだ」
石畳と煉瓦の綺麗なエイスニルの街並みを歩いていると、客引きの明るい声が方々から上がっていた。
交易都市エイスニルに面している巨大な内海は、外海と殆ど同じ塩分濃度の塩湖である。
外海からは切り離されているので生態系は違うが、それでも豊富な魚介類に恵まれており、海上交易も盛んに行われ、内海周辺の文明発展に大きく寄与してきた。
「1匹でこの値段なのですか?」
「もちろん!格安だろう?ムニエルにすれば美味いぞ」
「それなら1匹下さい。一番美味しいのはどれですか?」
「おっしゃ毎度ありっ!」
どうやら商談がまとまったようである。
ムニエルなら、塩、胡椒、薄力粉、油、バター、オリーブオイル、レモン。付け合わせは、にんじん、インゲン豆、じゃがいもでも良いだろう。
あとはパン。スープはとうもろこし、塩、牛乳で作る。
俺はワインを飲む習慣がないので、そちらは単に水で良い。
水属性3の俺は、MP消費と引き替えに魔力濃度の濃い純水を生成する事が出来る。これは冒険者としてだけではなく生物として非常に有利で、どんな環境であろうとも飲み水に困る事はない。
それにしても腹が減ってきた。
こういう時に独身貴族は辛いものである。
「さて、昼食はどうしようかなぁ」
俺は基本外食だ。水だけでは、腹は満たされない。
故郷であるエイスニルはとても大きな交易都市なので、中心市街地でなくとも食堂や露店が沢山ある。
この発展は地理的要因に基づくもので、ラシュタル王国に属しながらルーバント王国が内海へ出る河川を完全に抑えているために、内海を介する交易で2国分の輸出入を管理できる点が最大の強みであろう。
そんな内海の先には山脈によって陸送を阻まれるガルバイス帝国内の港があり、遠方のブラムド王国とは海路が最短距離で繋がる。
リグレイズ王国は陸と海のどちらであってもエイスニルを通さなければラシュタル王国の王都へ繋がらない。
これだけの理由があれば、それを上回るマイナス要因が無い限り発展しないわけが無いのだ。
そのためラシュタル王国とルーバント王国は、交易都市エイスニルを巡って幾度となく戦火を交わした。実際に今から200年ほど前の数十年間は、エイスニルがルーバント王国領だったこともある。
現在は自国の王都がより近いラシュタル王国がエイスニルを手にしているのだが、ルーバント王国の力が強くなれば未来永劫平穏で有り続けるとは限らない。
ルーバント王国の力がある日突然跳ね上がる可能性は、実は転生者によって皆無ではなくなっているのだ。
世界には転生者が次々と現れており、適合する身体が見つからなくて出遅れた後続も増えている。
(転生者が世界に与える影響は絶大だろうなぁ。でもまぁ、この辺りで一番影響が大きいのは転生竜だけど)
希望通りの力を得て、一体何が不満だというのだろうか。
…………多分、ものすごく不満なのだろう。
俺だって水属性と水魔法を伸ばして海洋生物にでも転生させられていた日には、海上船舶を根こそぎ襲撃していたかも知れない。
(あるいは、もう竜として馴染んでいるのかも知れないけどな。転生を自覚するまでは、竜として生きていたのだろうし)
仮に転生竜が「生きて子孫を残すために近隣を餌場にしたいから、住んでいる人間が邪魔だ」と言う目的に基づいて行動しているのだとすれば、それは生物として自然な行為だ。
人間だって街を作るために周辺の魔物や動物を追い出しているのだし、人間の国家と自然界とを問わず、生存圏や縄張りを獲得出来るのはいつだって力の強い側である。
しかし転生竜はステータスが高すぎるので、「ちょっとした住処の確保」や「軽い脅し」でも人間が受ける影響は物凄い事になっている。
難民キャンプが国や領主からお目こぼしを貰っているのは、転生竜という天災にも等しい存在が原因だと分かっているからだ。
(リグレイズ王国と海上交易を行っている我が国は、難民キャンプが土地の不法占拠だからと言って強硬手段も取り難い。それに入都する難民は、正当な手続きに則って入ってきているし)
我が国の都市や街へ入る場合、その者の身分によって入地条件が変わる。
前提として、ラシュタル王国では6つの階級が定められている。
1.王族…………王家
2.爵位貴族……公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵家
3.下級貴族……爵位貴族家の次男以下・大臣・将軍・代官等で当代~数代続く
4.正規国民……一般人・下級貴族から代替わりで落ちた者
5.限定国民……農奴や鉱奴のような賤業。 半国民扱いで権利制限
6.奴隷…………奴隷の子孫・刑罰の一種・戦争捕虜など。 主人の所有物扱い
正規国民以上は、国内全ての都市や街へ自由に入れる。
文明や国力を維持するためには一定水準の知識や技術を持った国民が一定数は必要である。正規国民はその階層として定められているため、都市間の往来が自由なのだ。
我が国の進学率も、正規国民以上のみで計算している。
限定国民は、居住都市以外では冒険者証を示すか高い入地税を支払う必要がある。
社会を維持するためには過酷な労働に従事させる者も一定数が必要である。限定国民はその層として定められているため、都市間の往来が不自由となっている。
賤業から逃れるためには、冒険者になるなど個人的な才能を示す必要がある。
奴隷は、持ち主か委任状が無ければその場で捕まる。
彼らは「使い捨ての労働力」、「重犯罪の抑制」、「限定国民の不満の捌け口」、「戦死者家族への慰め・戦争の戦利品」のために存在するとされ、家畜同然の扱いを受けている。
腕に管理番号を示す烙印が押され、馬と同様に所有者が分かるようにされている。
これらのいずれにも該当しない他国民は、商業証・労働証・条約締結国の冒険者証のような何らかの入地資格証を示すか、短期滞在が認められる高い入地税を支払う必要がある。
だが難民たちは突然住んでいた都市を転生竜に襲われて着の身着のままに逃げ出しており、さらにこの交易都市エイスニルへ辿り着くまでに持ち出した財布の中身など空になっている。
そこへ難民対策によって2週間1万Gにまで要求されてしまうので、そのまま入地税を払い続けられる者など殆ど居ない。
よって難民は難民キャンプに留まる事を強いられているのだが、我が国からは最低限にも満たない支援しか与えられないので、彼らが生き続けるためには家族の誰かが難民キャンプに訪れる業者から品物を買うための金を稼ぐ必要がある。
そして港などは人手が欲しいので、半年間で3万Gの発行手数料が掛かる短期労働証を申請してでも、難民の中から体力のありそうな男を都市内へと招く。
ここで需要と供給が一致し、法的にも正当な入地が成立する。
(…………もちろん問題は多いけど)
例えば半年間の短期労働証を申請した雇用者の中には、発行に掛かった3万Gを勝手に難民の賃金から差し引いている所もある。
最低賃金は月に1万5千Gと定められているが、一日3食の食事と屋根のある住居を用意すれば毎月の賃金を1万Gに抑えられるため、難民は大部屋に押し込められて半年間で本来の半分にあたる3万Gしか手元に残らないような生活を強いられている。
そうやって雇用者側は難民を「自分が扱える限定国民」であるかのように使い続け、不要になれば短期労働証を更新せず都市外へと追い出して新たな者を雇うのだ。
だが難民は立場が弱く、そのような悪条件でも働かざるを得ない。
本来であれば、いつまで経っても国民資格を得られず入地税を支払い続けなければならない他国民は、さっさと国元へ帰ってしまった方が良い。
だが転生竜のせいで家や財産、故郷すらも失い、帰り道には竜が居座っている。
上手く国元へ帰れても、住み込みの仕事を見つけなければ生活資金が尽き、身売りをするか、犯罪で奴隷に身を窶す道しか無くなる。結局どこへ行っても似たり寄ったりだ。
住み込みの仕事が見つかれば……などと甘い事は考えない方が良い。
数万あるいは数十万人も同時に発生した難民の新たな働き口など一体どこにあるというのか。そもそもリグレイズ王国の南部は壊滅的で、周辺の経済も同様に酷い事になっている。
この件でリグレイズ王国に対策を求めるのは難しい。
難民のために新たな土地を開拓して街を作れと言っても、開拓しやすそうな土地は先人達が既に開拓済みである。
だが転生竜を倒せと言っても、相手は転生ptを各ステータスに振りまくった高名な作者である。
「読者様をエイスニルに呼び込むには、どうしたら良いのだろうか」
作者の暴走を止められるのは、やはり読者様であろう。
前世で積み重ねたptを割り振り、人類の英雄クラスに転生なさって各地でやり過ぎた作者をお叱りになっておられるのだ。
もしも俺が冒険者ギルド内で権限を持ったら、まずはそんな読者様のためにギルド受付嬢の見直しを図ろうと思う。
例えば読者様が「猫耳幼女が良い」と仰せになられれば、獣人の採用にも積極的に取り組まなければなるまい。
あるいは女性読者様が「爽やか系の長身美男子も置いて」と言われれば、誠意を持ってあまり並ばなくて良い女性専用窓口を作ろうと思う。
なお沢山善行を積まれた読者様のご趣味が優先となるのは、人類平和のためには致し方がないところである。
俺は皆が幸せになれる素晴らしい未来を模索すると、差し当たって腹を満たすべく食堂へと入っていった。