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〇二、〝ふぁんたじー〟おお、〝ふぁんたじー〟



       ○



 まったくもって、わからない。何一つわからない状況だった。

 ここはどこなのか、自分が一体どうなっているのか。

 しかし、少女はただ膝を抱えて悩んでいるわけにもいかなかった。

 何もわからなくても、濡れっぱなしの体は冷えてくるし、お腹もすいてくるのだ。

 それ故に、少女はまず部屋中を探索し始める。

 調べていくと、隅のほうにクローゼットらしきものが見つかった。

 中を確認すると、数えるほどだが衣服が収納されている。


 ――おお。こりゃ助かったわ。


 と、喜んで手に取ってみたはいいのだが。


(うーーーむ……)


 見つかった衣服はどれも男もののようで、少女にはブカブカだ。

 それでも裸よりはマシだと、着やすそうなものを選び、試着してみる。

 変な汚れでもないかと心配だったが、基本どれも綺麗なものだ。

 多少黴臭くはあったが、それは部屋全体に言えることだから仕方ないだろう。

 場合が場合、状況が状況なので、許容範囲として我慢せねばなるまい。

 さすがに下着はなかったが。

 それでもシャツとズボンを発見して、どんどん着こんでいく。靴もあった。

 試着後。


「これはまた。まあ……うん」


 独り言も、なんだか冴えないものになる。

 鏡で確認してみれば、ハッキリ言ってものすごく不恰好だった。

 似合いもしない服を無理くりに着こんだから、仕方もないが。

 それでも少女としてはいかがなもの、なのだ。


 ――もうちょっと、こうなんかないわけ?


 再びクローゼットを探るが、適当なものはなかった。


「っとに、もう……」


 小さく舌打ちをしてから、少女はあるものを発見する。

 部屋の中央に置かれた大きな机に、衣服らしきものが放り出されていた。

 近づいて手に取ってみると、革製のコート。やはり男もの。

 破れ目がないか、変なものがついていないかと調べたみたが、埃をかぶっていることを除外すればおかしなところは特にない。


 ――これ、いいかも。


 少女は早速そのコートを着て、鏡の前に立った。


「おおお……」


 鏡で服装チェックをしながら、少女は歌うようにつぶやく。

 部屋の主の趣味なのか、それとも『ここ』ではこういうものが普通なのか。

 それはわからないがないが、少女の感覚からすると、


 ――〝ファンタジーもの〟の、衣装みたいや……。


 現実の中世ヨーロッパ、ではなく、〝ファンタジーもの〟というがミソか?

 そうなると、散乱している本も気になってくる。 

 薄暗がりの中、適当なものを拾い上げ、ページをめくってみた。


 ──読めない……。


 紙面には見たこともない文字ばかりが並んでいて、どうしようもなかった。

 日本語どころか、アルファベットですらない。


「…………こりゃいかんわ」


 少女は本から情報を得るのを、諦めた。

 もしかすると読めるかもと期待したのだが、無駄だったようだ。

 それから、もう一度部屋を見回してみる。 


 ――あれは……。


 壁にドアらしきものを発見する。

 近づいてみると、一応ドア的な感じではあるがノブもなく、下手をすると壁に描かれただけの絵みたいに見える。


 ――ちゃんと、開いてくれたりするのかしらン……。


 少女は期待と不安を感じつつ、ドアを触れた。

 スベスベとした、大理石みたいな感触。

 その途端。

 ドアは音もなく、自動的に開いた。極めて、スムーズに。


「おおお……」


 よくわからないが、何らかの技術(テクノロジー)が使われているっぽい。

 ドアの向こうには、暗い通路が続いている。

 道路トンネルをそのまま縮小したような、何とも無機質なものだった。

 少女は出る前に、部屋を振り返ってみる。

 その時やっと気づいたのだが、部屋に明り取りの窓は一切はなく、数ヶ所小さな灯りがぼんやりと点っているだけだった。

 光源がどういう原理で灯っているのかは、わからなかったが。

 しかし、あの容器など諸々のものを見るに、おそらく蝋燭の火ではないだろう。

 一方通路には灯りとなるものは何もなかったが、少女には何の支障はなかった。


 ――なんか、よく見えるわ……。


 少女の眼は真っ暗闇の向こうも、ごく自然に見通すことができたのだ。

 見えるとは言っても、視界に映るのはどこまでも続く無機質な通路のみだが。


 ――まるで猫だね……今さらだけど。


 考えてみれば、あの薄暗い部屋の中でもほとんど不自由しなかったのだ。

 その肉体、少なくとも視覚は〝以前〟のものとはまるで別物である。

 少女が足を踏み出すと、部屋のドアが音もなく閉まった。

 閉まったというのか、通路の壁に溶け込むように、消えたのである。


 ――もしかすると、まずったかも……。


 もう外見からは部屋の入り口はわからない。

 壁を見ながら少女ちょっとばかり、自分の浅慮を悔やんだ。

 その、直後──


 バチン


 と、小さな火花が散るような音がした。


「…………へ?」


 視界が一気に明るくなる。

 気がつけば、少女は見知らぬ街の中にポツンと立っていた。


 ――え。ここ、どこよ……。


 狭く薄暗い壁にはさまれた狭い場所。どこかの路地裏であるようだ。

 目を前に向けると、大通りらしきものが見えている。


「うむむむ……」


 いきなりの状況変化に、少女は脅えた野良猫のようにうなってしまう。

 無機質な空間から、一気に人の匂いがする場所へと叩き出されてしまった。

 ただし、この場所もあまり長居したいようなものではないが。


 ――そういや、あたし……どっから出てきたわけ?


 周りを見ても、自分が出てきた、と思われる出入り口らしきものはなかった。

 通路を通って出てきた、というよりも、これは……。


「……わーぷ?」


 瞬間移動とか、そういったものに近いのではないか。

 どちらにしても、再びあの場所へ戻るルートは見つからなかった。


 ――これは、どうしたもんか……。


 少女は逡巡したが、この不潔な場所に長居したくはなかったので、


「まあ、しゃーないよね……」


 決心して、広い道へと出ていくことにした。

 どっちにしろ、あそこから出るつもりで歩いていたのだ。

 戻ったところで、どうせあの部屋には、水も食べ物もトイレ何もなかったのだから。

 近づくに連れて、ガヤガヤとにぎやかな声が大きくなってくる。

 そして、路地裏を出た途端少女は瞠目した。

 目の前に広がる光景。それを見て、確実にわかることが一つある。

 ここが、少女がかつて暮らしていた日本ではないということ。

 それどころか、地球上であるからすら怪しかった。

 ならばここはどこなのかというと、まるで見当がつかない。


『実は、ここ死後の世界なんです』


 そう説明されても納得してしまいそうだった。


 ――はあ……。どうしたものかなー……。


 広く大きな道を、色んな人間が行ったり来たりしている。

 その中を、少女もまた歩いているわけだが。

 足元はしっかりと固められてはいるが、アスファルトでも煉瓦舗装でもない。

 例えるなら学校のグラウンドみたいだった。

 顔を上げると、中世ヨーロッパ的な、建造物が立ち並んでいる。

 でも、それが本当にそういうものと似ているのか、少女にはわからない。

 中世どころか、現代のヨーロッパだって、ちゃんとは知らないのだ。

 せいぜいが映画などから得た、適当なイメージがあるだけだ。

 その映画にしても、ヨーロッパ映画ではなくハリウッド映画である。

 だから、まあ。

 そんわけで。


 ――やっぱ、〝ふぁんたじー〟だわなあ……。


 こんな程度の感想しか、頭に浮かばないのだった。

 少女は、往来を歩いている街の住人たちは伏目がちに観察してみる。

 道を歩いている物売り。

 単なる通行人。

 何か急ぎの用事がありそうな人。

 ただの暇人らしきヤツ。

 彼らの服装も、確かにそれっぽくはあるが、決してイコールではない。

 それっぽく……すなわち〝ふぁんたじー〟的なもの。

 すなわち中世ヨーロッパなどをモデルにした、架空世界。

 よくあるファンタジーものの舞台になりそうな、そんなの感じの──

 服装もそうだが、それ以上に異世界だと思わせられるのは、人種の多さだ。

 どこからどう見ても、人間ではなさそうな方々がたくさんおられる。

 この認識も誤りではないかと思いながら、少女は道行く人々を見た。

 角がはえたオッサン。尻尾らしきものがはえている女の子。

 とんがった長耳をした男性。獣のような耳をはやした女性。

 その他に、赤、青、緑とカラフルな髪の毛の数々。

 不思議な光景だが。しかしここでは彼らこそが普通なのだ。

 もしも彼らが見れば、一般的な日本人こそ異形の民に見えるかもしれない。

 少女はそう思った後、また不安になった。

 が、よく考えると、今の自分の容姿は平均的日本人とはまるで別物である。


 ――言葉……通じるのかな?


 少女は今さら心配になったが、響き合う人の声に耳をすますと、


「たーまご、たまご!」


「こぉーりや、こおりー!」


「高いよ、ボッんじゃねーの?」


「にいちゃんがわたしのおかしとったー!!」


「いらっしゃいませー!」


「ありがとーございましたー!!」


 聞こえてくる言葉、そのほとんどを少女は理解できた。


 ──日本語?


 最初はそう思ったのだが、どうも違うらしい。

 看板など、街中の文字を見ても日本語などどこにもなかった。

 よくわからないが、少女はここの言葉が理解できるらしい。

 それとも、本当に日本語、あるいはそれに極めて近い言語なのか――

 この点は保留するとして、ひとまず安心する少女ではあったが……。


 ――………これから、どうしよう? いや、ホントに。


 少女は、街中で一人途方に暮れる。

 知り合いもいないし、お金もない。何にもない状態で見知らぬ街に一人きり。

 不安になるな、というほうが無理な状況だった。

 行く当てもないまま、一人トボトボと歩き続ける。

 そんな時、


「おーい、そこの。ダボダボのかっこした、あんただよ」


 いきなり、後ろから若い男の声がした。


「ふぁい?」


 少女が振り向くと、見事な赤毛をしたやや童顔の青年がこっちを見ている。

 日本人でないのは確実だが、やはり記憶にある白人種とは違う。

 特徴的な深緑のどんぐり眼。そこは白人的なのだけれど、鼻筋などはどっちかといえばアジア系に近い気がした。

 記憶のみで明確な比較対象がないため、正確な判断できなかったが。

 着ている服は、黒と灰色で構成された、ロングコートに似た裾の長いものである。

 キリスト教の祭服──カソックに似ていなくもなかった。

 細部のデザインによるものか、それよりもはるかに活動的な印象だが。


「な、なにか……?」


「これ、あんたのだろ。さっき落としたぞ」


 青年はそう言って、小さな巾着袋のようなものを差し出してくる。


 ――なにこれ。おぼえがない……。


 もしかすると、この服に入っていたものかもしれないが。


「さあ………………?」


 とりあえず、少女は曖昧な返答をしておいた。


「いや……。さあっ、て……」


 頼りない少女の返事に、青年は困惑した様子だった。


「あんたのじゃないってか? でも、落とすとこを見たぞ?」


「もしかすると、落としのかもしれませんが……。この服、借り物なんで」


 少女は、腕を広げて見せた。

 ダボダボの服を見ながら、青年は納得したような顔をして、


「ああ。そんな感じだわな。でも、だったら余計に、落とし物したらまずいだろ」


 言って、青年は巾着を渡そうとする。


「どーも……」


 受け取ると、何が入っているのかはよくわからないが、見た目に反してけっこう重い。

 一応中身を改めるべく、少女がその場で巾着を開いた。

 と、どうしたはずみか、中身の一部がコロンと下に転がり落ちる。


「………」


「ありゃ」


 青年は黙り、少女は目を見開いた。

 それは、金色に輝く硬貨である。サイズは五百円玉くらいか。

 拾い上げると、何か動物らしきもの姿が見事な意匠で刻まれている。


「……その服の持ち主って、金持ちなんだな?」


 金貨を見ながら、青年はちょっと嫌そうな顔をした。

 嫌そうなというのか、面倒臭そうなというべきか。


「はあ、そうですね」


 服の持ち主など何も知らない少女は、まともな答えができない。


「何でもいいけど、早くしまったほうがいいぞ」


 確かに、道の真ん中で金貨なんかを剥き身にしているのは危ない。


「やっぱ、大金ですか?」


 金貨をしまいながら中身を確認すると、中では金銀が光を放っている。

 入れ物が小さいとはいえ、それでもかなりの量に思われた。 


「――当たり前だ」


 青年は、どこか疲労したような顔で少女を見つめる。

 コレ一枚の価値がどれほどか、少女は知るところではないが……。

 どこかで聞いた話では、江戸時代の一両小判が現代の十万円くらいの価値だという。

 青年の顔を見ると、


 『なんだこいつは――?』


 その視線は、明らかにそんなニュアンスを含んでいた。

 おかしなヤツだと思われるのは仕方がない。そこは少女にも自覚できるわけだが。


「──でも、しょうがないじゃないですか?」


「なにがだよ?」


 思わず声を出す少女に青年は引く。比喩ではなく、文字通り言葉のままに。


「自分の名前もわかんないんだから。ここがどこかも知らないんだから」


「…………そうか。そりゃ、気の毒だな」


 その言葉が終わらないうちに、青年は背中を向けていた。


 ――こんなやつに、相手にならんとこ。


 どうやら、そう判断されたらしい。


 ――ああ、こりゃしゃーないわ。あたしだって、そうする。でも。


 少女は、青年の服をグッとつかむ。自分でも、惚れ惚れするような速度だった。


「……………………」


 青年は無言で、すごく嫌そうな顔で少女の顔を見るが、少女はその手を離さない。


「助けてくれませんか? いえ、ぜひともお助けください」


「……………………なんで?」


 青年は、どこか諦めたような顔で尋ねてきた。


「あなたしか、頼れる人がいないからです」


「ひとつ確認するけど――俺とお前って、初対面だよな?」


「会ってからちょっとは経ってますね。なので、すでに初対面ではないかと」


「そんな理屈があるか!」


「かもしれません。しかし、そこを曲げてお願いします」


 服をつかんだまま、少女はペコペコ頭を下げる。

 下げながら、自身の選択は間違いでなさそうだ、と思ったりした。

 あくまで見た感じ、しゃべった感じの印象だが、この青年は人が良さそうだ。

 それも押し付けがましいタイプではなく、頼まれると弱そうなタイプに思えた。

 積極的には関わらないが、いったん関わってしまうと無情になれない。

 人生では損をすることが多そうだが、今の少女にとっては好都合だった。

 青年は今も笑顔どころか、迷惑そうな表情でミクロカを見ているが――

 その表情、顔には不思議な丸みというのか、柔らかさを感じさせる。

 むしろやたら親切に、


「どうしたのー? 助けてあげるよー?」


 というタイプは、かえって信用しがたい、と少女は思っていたりする。

 逆に、


 ――こういうのがえーのだ。こういうのが……。


 不遜な思いは内にしまいこみながら、少女はひたすら青年に懇願する。


「どうかひとつ。色んなものを曲げてお願いします」


「…………無視しとけば良かった」


 顔をそむけながら、小声だがハッキリと聞こえる声で青年は言う。

 だが、少女の手を振り払うつもりなど毛頭ない。


「…………。……わかったよ」


 ややあってから、青年は敗者の顔でぶっきらぼうに答えたのだった。


「ありがとうございます!」


 少女はできる限りの愛想笑いを浮かべ、ペコペコと頭を下げる。


 ――やっぱ、女の子って得だね。


 この貧弱で、頼りなさそうな女の子の姿が良かったのかもしれない。

 やっぱり人間、相手の姿かたちで判断とか態度を変えたりするものである。

 もちろん、そこには個人の嗜好と、性格も入ってはくるのだろうが。

 大人と子供、さらにその子供でも、男の子と女の子では違ってくるのだろう。

 相手が変な性癖を持っていなくても、特別スケベでなかったりしてもだ。

 少女であることが、マイナスに作用することもあろう。

 だが、今回この場合に限っては、プラスばかりだったようだ。


「……人を助けるのは、出家の役目、とは言うけどなあ」


 青年は、そんなことをつぶやいていた。


「しゅっけ? って、なんです?」


「なんですか、て。坊主のことだよ。そんなことも知らんのか?」


 青年は不審そうな目つきで少女に聞き返す。


「ぼーず?」


 口に出して、少女は考えこんでしまう。


 ぼーずとは、つまり坊主──僧侶を意味するのか?


 彼女の生きた世界、国の常識だと、坊主といえば仏教の僧侶を指すが……。

 しかしまさか、この青年が仏教徒とも思えないし、見えない。


「お前な、この格好を見て、坊主とわからんのか?」


 青年は自身の服を指しながら言った。


「わかりません」


 そんなこと言われたって、この国、この場所について、少女は何も知らないのだ。

 わかったら、そのほうが不思議である。


「そもそも、ここはなんていうところですか? というか国名は?」


「お前な、一体どこの生まれだよ? 現在自分のいるところも知らないかよ」


「はい。ついでに言いますと、社会常識というのも、皆目わかりません」


「……こういう言いかたはしたくもないけどな? お前、どっかおかしいのか?」


 青年はジロジロと、少女を上から下まで凝視する。


「まあ、かもしれません。でも、自分ではわかりませんねえ」


「そういうもんかもしれんけど……困ったなあ」


 青年は渋顔になり、右手で頭を押さえる。

 見るからに困惑している様子だが、それは少女だって同じようなもので。


「あたしも困ってます」


「ちょっと待て。じゃあ、さっき自分の名前もわからんとか言ったのも……」


「はい。真実その通りです」


「えらいもんに捕まった……」


「そこはまあ、運命とか、そういうものだと思って諦めてください」


「本人の口からそんなこと言われてもな……」


 少女の勝手な言葉に、青年は深々とため息をついた


「立ち話もなんですので、どこかでお茶でも飲みながらゆっくりと話し合いません?今後のことについて……」


 と、少女は近くにある飲食店らしきものを見ながら、提案するのだった。


「お前が言うな、そんな台詞を」


 少女の物言いに、青年は本当に諦めたような顔で言った。


 ――ああ、やっぱりお茶とかあるんだ。ここにも。


 こんなことを考えつつ、さらに少女は、


「それから」


 と、言葉を進める。


「まだなんかあるのかよ、おい!?」


「ちょっとお腹もすいてますので、できれば食べ物もご馳走していただければ」


「どこまで厚かましいんだ、お前は!!」


 青年の怒号に何人か道行く人が振り向いたようだった。


「すみません」


 言葉では謝るものの、少女は自分の主張を撤回する気はない。


「……」


「……」


「わかったよ……! ついてこい」


 ついてこい、と青年は声を荒げながら歩き出す。


「はい」


 少女はそれについて行きながら、改めて街を見る。

 何度見ても、そこはやっぱり異世界で、〝ふぁんたじー〟だった。


(しかし何だな……。今あたしがしゃべっているのって何語なんだろ。感覚としては……ほとんど日本語なんだけどなあ?)




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