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クズ豚仕様……(´;ω;`)

ウィスカ(水曜日)

 初めての授業の日がやってきました。緊張で汗かきまくってます。


 制服はどう贔屓目に見ても汚かったので、真夜中に共同洗濯場に行って洗ってきました。洗濯機みたいなのがあって驚きました。どうやら浄化魔法が使われた魔道具らしいです……。


 近くに使い方と説明が書いてあった。たぶん、平民が多いからパニックになるのを防ぐためだろう。

 日本の洗濯機とは違って、合成石鹸はない。洗剤は浄化魔法だけですむので、必要がないのだ。

 お日様の匂いや洗剤のフローラルな香りとか好きだったから、少し残念だ。


 小型洗濯機の魔道具に制服をいれて、生徒証を所定の位置にかざし、扉を閉めると自動的に洗濯が始まる。洗濯する物は制服だけなのでそれほど時間もかからず、洗濯(……洗濯?)が終わった。


 生徒証というのは生徒手帳のカード版のようなものだ。


 生徒証には、


 名前:チュベローズ・テリセン

 クラス:D

 生まれ:ナジュム 2

 歳:13

 今日:シノッチャ 15 ウィスカ


 と書かれている。これを日本語訳のような感じにすると、


 名前:チュベローズ・テリセン

 クラス:D

 生まれ:9月2日

 歳:13

 今日:3月15日 水曜日


 となる。 この世界の曜日・月・日にちは地球と殆ど同じなので、こんがらがらなくていいから嬉しい。


 夏休みはワッカが始まってからウフィが終わるまでで、ウパーシの最後の週から三週間ほどが冬休み、シノッチャからノンノを跨ぐ形で二週間くらいが春休みだ。……やっぱり、よく分からないから対応させてみる。


 1月:フォルン

 2月:ソート

 3月:シノッチャ

 4月:ノンノ

 5月:レラ

 6月:ワッカ

 7月:エレルシ

 8月:ウフィ

 9月:ナジュム

 10月:ガイム

 11月:クルクパ

 12月:ウパーシ


 月曜日:ゲアラハ

 火曜日:ティーナ

 水曜日:ウィスカ

 木曜日:クラン

 金曜日:サハブ

 土曜日:ウィール

 日曜日:サウレー


 だ。誕生日は生徒証に記述されているが、歳をとるのは自分が生まれた月になったら。


 つまり、ナジュム1が来たら、私は一歳、歳をとる。


 仮にナジュム31に生まれたとしても、その人はナジュム1が来た時点で私と同い年だ。


 新学年はナジュムから。

 つまり、次のナジュムが来たら私は中等部一学年生から中等部二学年生になる。


 というか、改めて考えると夏休み、三ヶ月くらいあったんだな、すげぇ。ずーっと続けばいいのに……と私は思っていたが、そこら辺は過去の自分も普通の子供と同じだったようだ。


 この世界の夏休みについて想いを馳せていたら、教室に着いた。ここにくるだけで、ちょっとした運動になる。すごい。同じ敷地にあるのに広すぎて、一時間以上歩いた。もしかしたら、二時間くらいかかったんじゃないかと思う。


 記憶を探ると、バッシスという乗り物を使えるらしく、クズ豚はそれを使っていた。それを使うと、それほど時間がかからない。お金はいるけれども。


 でも、ダイエットのために、私はそれを使わない。


 汗だくになりながら、明日からはもう少し早く来ようと思った。まだ3月なのにこの汗の量は酷い。それか浄化魔法を使えるようになりたい。私の前世知識からいうと、浄化魔法という奴は身体に使っても大丈夫のはずだ。


 ―――ガラリ


 と教室の扉を開けたら、がやがやしていた教室が一瞬にして静まり返り、私へ視線が集中した。その中には咎めるようなものも、蔑んだ視線もある。……胃が痛む……


 初等部・中等部は現代の小学校のように席が決まっている。高等部に行くと、自分で授業がある教室に行くようになるらしい。私の席は一番前の列だ。やった!と思ったのは当然だ。


 先生の話を一番前で聞けるなど、学校一の優等生を目指している私にとってこれ以上ないベスト席だろう。異世界だからチョークの粉が……とかなさそうだし。


 席は所謂大学の教室のような感じだ。私が座ったらこの席壊れるんじゃないか、と思ったが、自分の席に来て分かった。


(……なに、あの席……)


 目の前が霞みかけた。

 普通、三席あるのだから一番端に私、真ん中が空いて一番向こうの端に他の誰かが座るはずなのだ。なのに、その席には誰もいなかった。

 追記すれば、後ろにもいない。今日は時間を間違えたので、間もなく授業が始まる時間だ。

 つまり、全員、席に着いている。……私、一人?


(そう言えば、私一度この席、壊して……)


 思い出した。

 そうだ。初等部(だいたい9歳と10歳に入学する)から、どんどん体重が増えていった私は去年、ついにこの席を壊した。席自体は魔法で直してもらったが、一つでは支えきれないから、と私だけ二つの席を一つとして使っていいことになったのだ。なお、その際、椅子の強度を上げてもらっている。


(み、じめ……)


 涙目になった。他の人の視線がなければ、ぼろぼろ泣いているところだ。当時の私は「私だけ特別!」とか思っていたが、間違いなく周りの人間達は嘲笑したことだろう。私はクズ豚を頭の中で踏み潰してシュール・ストレンミングをぶつけている。


 絶対にダイエットして痩せる。

 元はいいはずなのだ。たぶん。覚えていないけど。そこが元々こんなクズ豚を生み出した原因なのだから、元はいいはずなのだ。たぶん。……何度もいうが、たぶん元はいいのだ。ぼんやりと覚えている限り、私の家族は物凄い美形しかいないから。


 ぼんやりと覚えている顔の両親が本当にこのクズ豚の両親なら、美形サラブレットである私は多分かなりイケるんじゃないかと思う。ボンッキュッボンのナイスバディな美人になれるはずだ。いや、絶対になってやる。


(……なんて思ってないとやっていられないわ)


 悲しみに暮れつつ、私は席へ座った。ちゃんと、二つの席を一つの席として使って。初めは頑張ってみたのだが、どうやってもこの尻ははみ出してしまう事が分かり、諦めた。


 心が痛い。


か、わいそう……(´;ω;`)

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