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大掃除 二日目

 目が覚めて、ひとまず扉と窓を開けて風を入れる。どうやら、この一階には殆ど人が寄り付かないようだ、と昨日わかった。……そうです、私が原因です。悪臭漂う私の部屋から周りの人たちは逃げ出したらしい。まあ、よく見たら蟻とか列をなして私の部屋へと来ていたから当然だろう。よりつけない。Gも当然の如く、湧きまくっていたし。女の子からしたら恐ろしい魔の巣窟だ。男でも嫌だろう。


 そういう訳で、私が部屋を片付けているのは誰も知らない。担任の先生くらいだ。一階には誰も来なかったので、つまり、私は生まれ変わってから他の誰かに出会っていない。いや、カハール先生とか、あの男の子とか、事務の人とかは別だ。


 二日目の掃除が始まる。再び、事務からゴミ袋を受け取り、ごみをゴミ袋へ放りこむ作業が始まった。ひたすらそれしか行わない。ずーっとごみをゴミ袋へ放り込み続ける。何が出てきたかっていうと、手をつけるのも気持ちの悪いものが沢山。食べ終えたカビが生えた食べ物の残骸や、カビの生えた下着類、そして大量の虫達。どう見ても、ここに巣を作っていますね、お菓子あげるから出て行ってください。


 共同スペースだっただろう場所のごみが残り少なくなった(同室の子の部屋に入れるくらいまで減った)ところで、早急に同室の子の部屋のゴミに取り掛かる。ひとまず、もし同室の子が様子を見にきてくれたりした時用のスペースを作っておきたい。……どれだけその可能性が低くとも、1%、いや、0.00000001%でも可能性があるなら私はスペースを作る。そして早急にこの部屋から私の痕跡を消すのだ。


 そもそも(たぶん)可愛い同室の子の部屋に私(クズ豚)のエキスがあると思っただけで吐く。自己嫌悪で首が吊れるレベル。……どれだけ、私は私が大嫌いなんだろう。いや、大嫌いなんだけれど。


 取り掛かった同室の子の部屋だったはずの空間のごみ達は総じてただのごみだった。どんどんゴミ袋が増えていく。20袋貰って来たが、既に10袋は詰まっている。あと10袋でこの部屋のごみがなくなるとは思えない。どんだけ押し込んだんだろう。たぶん、1年間分以上のごみがここに詰まっているのだろうと思う。気が遠くなる。よく発狂しなかったなDクラス。いい人過ぎるのか、それとも私の家がかなりの権力を持っているのか。そんなことないと思いたいけれど、でも態度や容姿はこれだが、一応私は伯爵家だ。しかし困った。貴族事情とか興味を持っていなかったから分からない。どれくらい影響力があって何をしては駄目なのか。……前世は庶民だったし。


「ふう……」


 汗を拭く。どんどん汗が出てくる。とめどなく。この二日で一キロくらいは減ったんじゃないだろうか。

運動したのと汚物の酷い臭いのせいで、全くお腹が空かなくて昨日目が覚めてから何も食べていない。もう疲れてぐっすり寝たしね、昨日。

食べるには食堂に行かなければならないが、どうにも気が引けて足を向けていない。

食事は活力の元だからどうにかしなければならない。幸い、前世の私は世界一周旅行をしたついでに、好奇心に任せて色々作り方を覚えたからレパートリーも豊富。主婦にもなっていたので、子供ために、栄養面もちゃんと考えられる食事だって作れる知識がある。


(ナイス、前世の私……!)


 その事実に狂喜乱舞した。

 それというのも、この世界の食事は美味しくない。前世での食材・調理法・食事の数々を知ったために以前より増して「美味しいものが食べたい」と思う欲求が強くなっている気がする。だって、チーズやヨーグルト、チョコレートは勿論、プリンなどと言ったものは見たことも聞いたこともない。しかし、それよりなによりも、それだけしかない食事達でよく自分はこれだけ太れたものだと感心した。絶対に痩せるけれど。

 甘い甘味といっても、砂糖なんてものを豊富に使うものではない。少し甘い程度をお菓子といっているのだ。これでは食生活が貧しすぎると今の私は思えてしまう。

 ケーキなんて夢でさえ思っていなかった。クッキーも同じだ。……ダイエットするから私は食べられないけれど。こちらの私は料理なんて出来ないが、前世の私はばっちり料理をしていたので、知識を持った今の私は料理は出来る。前世の知識があるという最大の強みは『自分の世界が広がる』という点に尽きる。今まで全く学んでいなかった分野の知識・文化・行動などが手にはいるのだから。


(……まあ、前世の私も来世の自分に使われるとは思ってなかったでしょうね)


 前世の知識は現世の私にとって大変有用なものばかりだ。特に、武術関連や栄養関連、勉強関連は学生であり、そして運動を必要としている私に必須の事項だった。

 いらない情報など全くない。しかも打ち所がよかったのか、欲しい情報が完璧な状態で思い出せる。どういう仕組みなのだろうか。全く分からないが必要なのは正確な知識なので、とてもありがたい。神様、ありがとうございます!


 ―――必死に頑張ったおかげで、なんと同室の子の部屋のごみは殆どゴミ袋に詰める事が出来た。奇跡か。


 しかし、部屋にもう一つ別の部屋が出現した。ちょっと愕然。思っていたよりも寮部屋は広かったようだ。床は汚れたままで寝転べないし、ひどい状態のままだ。ごみもまだまだ残っている。共同スペースも私の部屋もあるし、どうやらベランダっぽい場所もある。


 ……それにしても、未だに教科書が見つからない。きっとあの魔の巣窟にあるに違いない。そうだ、あるはずだ。……教科書……あるかな……? なんだか不安になってきた。


 しかし、今日はもうこれ以上は何も出来ない。風呂に入って、また再び寝て、そしてまた明日頑張ろう。


(明日こそ、教科書が見つかりますように……)


 とりあえず、前世の知識に従ってお星様に願って寝てみた。


教科書、見つかったらいいね……。

栄養士の部分削除(2013/8.22)

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