初めての魔法授業
クラン(木曜日)
今日は朝から緊張していた。前世を思い出してから、初めての魔法の授業。
いつも、魔法授業の時はさぼっていたから、授業を受けるのも初めてだった。
「はぁ~い、みなさぁ~ん。おはよぉ~ございまぁ~す」
にこにこ笑顔で教壇に立ち、挨拶をしている女性は魔法授業担当の……え~っと。う~んっと……はは、名前を覚えていないや。ずっと『胸に脂肪だけいった頭の軽い女』と呼んでいた。本名は全く思い出せない。
「今日も元気に頑張りましょ〜」
改めて彼女を観察する。男性の下心を思いっきり逆なでするような魅力的な肢体は、少し緩やかな服の上からでも分かるほどに起伏が激しいようだ。紫色の髪は、緩やかに波立ち、背中へと流れている。
こんな豚が貴女のような美人にナマ言い続けてて本当にすみません……ほんと、すみません……。
一応、名前を思い出そうと頑張っては見た。そして自信を持って言えるようになった。
覚えていないのは、彼女だけではない! 担任の先生の名前さえ覚えていない! それなのに、どうして彼女の名前を思い出せるだろうか?!
……反語を使ってはみるものの、威張れることではない。
カハール先生の名前が分かっていたのは……記憶に残っていたからだ。
「今日はぁ~、魔法理論の続きをしまぁ~す」
間延びした口調で言う先生が話し出した内容に、瞳が曇った。
『魔法理論』
前世の記憶の中にも、私の記憶の中にも―――存在していない言葉だった。
「じゃあ~、教科書を開いてくださぁ~い」
そう言われても、私の手元には教科書もノートもない。
いつになったら、あのごみ屋敷は片づき、そして教科書とノートは見つかるのだろうか。私はだんだん、見つからないのではないかという思いが増すのを感じていた。
もしかしたら、捨てたのかもしれない。
勉強に全く興味のなかった私ならあり得る話だ。
……それだけは勘弁して欲しい。
「というわけで~……」
そもそも、何で私は授業を受けたくなかったのだっけ。
入学当初は、結構張り切っていた覚えがある。
お姉様やお兄様のようになるのだと―――
「テリセンさぁん」
「っ! は、はい」
「ぼうっとしてたけど~、大丈夫~?」
「だ、いじょうぶです」
魔法授業担当の美人先生は、私をじーっと見つめてきた。
探るようにも思えるその視線にたじろぎ、「何でしょうか?」と聞こうとしたのだが、先生のにっこり笑顔に言葉を飲み込んだ。
「ちゃぁ~んと、授業聞いてくださぁ~い。もうすぐ春休みだからって気を抜いてぇ〜居眠りなんて駄目ですからねぇ~」
「は、はい」
頷けば、先生はそれ以上何か言うことなく、授業へ戻っていった。変な緊張に、私の額から汗がにじみ出る。それを手の平で拭って、気合を入れ直した。
しかし、授業を真面目に聞き始めたはいいが、予備知識が少なすぎて頭に全く内容が入ってこない。
「―――……ですからぁ~、火・水は敵対関係にあり~、それぞれの力を持つ者達は抑止力として組ませる場合が多いで~す。また―――」
分からない授業と言うものは、とても退屈に感じる。
連日の大掃除、長距離の歩きでの登下校、と、慣れない運動に前世を思い出すという普通はしない脳の活動。ここ数日、今までにないハードスケジュールだった。加えて、食事もまんぞくにとっていない。
そんな私にとって、先生の唇から発せられる理解できない呪文の声は、心地のよい子守唄に等しい。疲れた身体に、ゆっくりと馴染んでいく。
(……ひとり、で……まほーの……れんしゅー……した……い……)
必死に、眠りの精を追い払おうとしたところまでは、霞む頭で覚えていたのだけれど。
――――気づけば、教室に誰一人おらず、空は綺麗な茜色に染まっていた。
ついにバテちゃったローズ……(´・ω・`)
でも実はバテる予定ではなかったという(←
授業って分からないと眠くなりませんか? 数学とか居眠りタイムでした。で、チャイムが鳴った瞬間、何故か目が冴えてばっちり起きる(笑)
皆さんがローズのダイエットに対して色々心配なさっているようなので、活動報告に私の叫びを書いておきました。よかったら読んでやってください。
あと、リアルの私がダイエットしたいのでこれからも色々アドバイスよろしくお願いします!




