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ひき肉少女、終幕

 鼻を覆いたくなるような臭い。

 どしん、どしん、と信じられないスピードで追ってくる緑色の肌をした怪物から子供達は必死で逃げていた。


 怪物の名は、ホブゴブリン。

 ギルド内でも、Cクラスの実力があれば一人でも討伐出来る怪物だった。

 しかし、子供達は全員ギルドの最低クラス、Eレベルにも満たないような実力の持ち主ばかり。必死に生きて逃げることが出来ている時点でも奇跡に近い。


 ―――バタッ


 一人、最後尾を走っていた人物がこけた。その音に走っていた者達が立ち止まりかけるが、こけた相手と迫ってくるホブゴブリンを視界にいれた瞬間に、恐怖に顔を歪ませて誰一人その人物を助けることなく、逃げる。


「ちょっと! 何逃げてるのよ!!! 私を誰だと思ってるの!? いやっ! 私は特別なのよ! こんな怪物に……殺されたりしないわ!! いやっ! いやああ!!」


 痛みと疲れで立ち上がることも出来なかった彼女は、既にその肉厚ではちきれた制服を握った。他に何も縋るものがなかったのだ。生れ落ちて始めて全力疾走した彼女の身体を一瞥したホブゴブリンは、迷うことなく持っていた棍棒を振り下ろした。一瞬後には、ひき肉と化して彼女の命は尽きる。



 ――――はずだった。



「大丈夫かっ!?」

「実力もないのに何でここに入ったのよ!?」


 精悍な顔立ちの少年と美しい少女。

 彼らは一瞬にして、ホブゴブリンの右手を切り落とした。


「ブオォォオオオオ―――!!」


 すさまじい怒りを宿して、ホブゴブリンの標的は彼らに向けられる。

 ひき肉になる筈だった少女は、助けてくれた少女をキッと睨みつけた。


「遅いわ! 私、死ぬところだったのよ!?」

「―――はあ?」


 その後も散々、ひき肉の少女は美少女へ罵詈雑言を喚き散らす。少年のほうはホブゴブリンと交戦中だったが、それでもひき肉少女の科白は耳に入っていた。美少女は仕方なく、他の生徒達を助けるのに手間取っていたと話したのだが、その後にひき肉少女が叫んだ家名に美少女は蔑んだ眼を向けた。


「平民を助けたですって!? 何やってるのよ!! 私はテリセン伯爵家のチュベローズよ!! 誰よりも先に助けるのが当然でしょう!?」

「―――ああ、貴女が『テリセン家の豚女』? 本当に豚みたいな身体で腐った頭をしているのね」

「なんですって!?」


 ひき肉少女は美少女の科白に憤った。

 自分は世界で一番可愛くて特別な存在なのに、なぜこんな女に見下されなければならないのだ。

 そんな傲慢で理不尽な怒りに目の前が真っ赤になったひき肉少女は助けてもらえたお礼も言わず、睨みつける。それを美少女は冷たい目で見下ろした。


「話は聞いたわ。貴女が無理やり彼らを連れてきたそうね?」

「私には実力があ―――」

「ないから死にかけてるんでしょ。貴女のような屑を助けるのはどうかと思うけど、同年代を見殺しには出来ないわ。仕方ないから助けてあげる」

「なっ……!」

「だけど―――」


 美少女は時折魔法を放ってくるホブゴブリンの攻撃からひき肉少女を守りながら、言葉を続けていた。しかし、最後の通告をする前にひき肉少女の人生は幕を降ろした。


「しまった!―――リア!!」

「ちょ、何してるのよ!?」


 少年が一瞬眼を離した隙にホブゴブリンの投げた石が彼の後ろを通過してしまった。美少女は慌てて魔法を使い、軌道を逸らしたが―――


「ガッ―――!!」

「げっ」

「ああ!」


 ひき肉少女に運悪く当たってしまった。

 幸いだったのは、その石がそれほど大きくなく、ひき肉にならなかったことだろう。





 こうして、ひき肉少女の人生は大きく変わってしまったのだった。




需要があるかを見る為に。ほろほろ書く。続きに興味があったら……マイリスしてくださると嬉しいです(*´ω`*)

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