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第11話 無知の代償

その頃のザハロニア・・・・・・


side.プリムローズ


私が四歳の時にお姉様は聖女として選ばれ、教会に行った。その頃のエルドレット男爵家は困窮していて、ちょっと裕福な平民よりも劣る生活をしていた。

正直、幼すぎて私はあまり覚えていない。


ただ、その日を境にお母様はたくさんのドレスや宝石を、お父様は調度品などを買うようになり、豪華な食事を摂るようになりました。


二人は私には無関心で、一緒に食事を摂ることもなければ、二人が家にいる時間もかなり少なくなっていった。そうなると、使用人たちも好き勝手にするようになった。

私の食事はおざなりで、自分たちの食事を貴族並みに豪華にするようになった。


私はいつもお腹を空かせていた。


「お母様、お姉様はいつ家に帰って来るの?私、お姉様に会いたい」


ある日、邸でお母様を見かけて私は慌てて追いかけてそう問いかけた。だって、この広い家に私しか住んでないみたいで寂しかったから。それに、誰か居れば使用人の暴挙を止めてくれると思ったから。


「お姉様は忙しいの。少しぐらい寂しくても我慢しなさい」

「お母様も、お姉様には会えないの?」

「私は母親だもの。お父様と一緒に会いに行っているわよ」


ずるい。お姉様は毎日、お母様たちに会ってるんだ。きっと、お母様たちと一緒いに豪華な食事を摂っているんだろうな。私なんて毎日お腹を空かせてるのに。

浮浪者みたいに邸の中を彷徨って、使用人の食べ残しで食い繋ぐ毎日だ。


お母様に会ったのだって一ヶ月ぶりだ。

お母様は私に興味がないみたいで、こんなに痩せているのに、ドレスだってシワだらけでサイズが合っていないのに気づいていない。

当然だよね。だって、こっちを見てないもの。


お母様は使用人に命じて荷物をまとめていた。足りないものを取りに来ただけみたい。二人とも、お外にこことは違う邸を持っているのは子供ながらに分かっていた。

きっと三人で住んでいるのだろう。どうして、私だけ除け者?役に立たないから?

じゃあ、役に立てば私も家族にしてもらえるのかな?

美味しいものをたくさん食べて、綺麗なドレスを着て、使用人に馬鹿にされない生活を送れるようになるのかな?


私も聖女になれば、お姉様のようになれる。


私の願いを神様が叶えてくれたのか十六歳になった時、私は聖女に選ばれた。

それもただの聖女ではない。

歴代の聖女の中で一番神聖力の高い大聖女だと教会の人たちが騒いでいた。


私はよく分からなかった。

でも「良くやったわ」と私に抱きつき、喜ぶお母様や「お前は我が家の誇りだ」と言うお父様を見て、凄いことなのだと思った。


これで私も家族になれると。


だけど、そうはならなかった。

ウィーラントが私の家族を断罪してしまったのだ。ウィーラントはお姉様の婚約者だ。正確には”だった”だけど。


聖女と王族の婚姻は義務だそうで、ウィーラントは婚約者の実家状況が気になり、訪ねて来たことがあった。それがきっかけで私は彼と運命的な出会いをした。

社交界でお母様たちの評判があまり良くないらしくて、抜き打ちで来たそうだ。


王族の評判にも関わることだから色々と知って対処をしておかないといけないらしい。


そこで私の現状を知ったウィーラントはとてもお怒りになった。更に、現状を知って放置していたお姉様にも。

私は嬉しかった。私を気にかけてくれる人がいることが。


ただ、お姉様は聖女だから殿下でもなかなか会えないのと、会えたとしても聖女として確固たる地位を築いているお姉様を断罪することができないとウィーラントは言っていた。そのことを申し訳なく思っているみたいだったけど私は別に気にしない。


ただ、家族みんなで仲良く過ごしたいだけだとウィーラントに言うと何故か彼は涙ぐんでいた。


†††


「ウィーラント、どうしてあんなことをしたの?私はこんなこと、望んでいなかったわ」


まさか、お姉様を国外追放にするなんて。


「ケジメだよ。罪は裁かれなければならない」

「でも、私は家族と仲良く暮らしたいわ。それが私の夢だったの。お姉様やお母様たちが私にしたことは別に、気にしてないわ。大したことないもの」

「お前は優しすぎる」

「優しさじゃないわ。ただの、私の我儘よ。ウィーラント、お願いよ。せめて、お母様とお父様のことは許してあげて。お姉様のことは諦めるから。せめて二人だけでも。お願い。家族みんなで暮らすのが私の夢なの。お姉様の代わりに、お姉様以上に聖女として務めを果たすから」


国外追放になったお姉様は男の人と出ていってしまった。もう、きっと戻ることはないだろう。とても悲しいことだ。でも、悲しんでばかりはいられない。せめて、残った二人だけでも守らないといけない。


お姉様、お姉様の代わりにお母様たちを幸せにするわ。私自自身も、お姉様の分も幸せになるから、許してね。


ウィーラントは深いため息をついた後、私のお願いを了承してくれた。

本来なら大聖女である私を虐げた両親は貴族籍を剥奪されてもおかしくはないそうだ。それを私の慈悲ということでなしにしてくれた。そのことをウィーラントから二人に話すと、「さすがは私たちの娘だ」「孝行娘を持って嬉しいわ」と喜んでくれた。


良かった。


ウィーラントに宣言した通り私は聖女の務めを頑張ることにした。しばらく、ウィーラントに会えないのは寂しいけど、仕方がない。

私は聖女の力を自由に操れるまでは教会預かりになるそうだ。教会の人たちは、みんな優しかった。私が大聖女でウィーラントの婚約者だからだろう。


「聖女様は大聖女様ですから、神聖力もすぐに操れるようになりますよ」と言われた通り、私はすぐに神聖力を自由自在に使えるようになった。

その力で助けを求めに来た人たちの怪我や病気を治すと、とても喜ばれた。


誰かに感謝されたり、誰かの助けになれるのってとても嬉しいことなのね。

お姉様が嫌がって、サボっていたなんて信じられないぐらい誇らしいことだった。

ただ、その日から夢を見るようになった。

自分が自分ではない、別の誰かになっている夢だ。その時は、自分の体なのに自分の意思で動かせないのだ。


とても怖いけど、ただの夢だしこんなこと話したら変な奴に思われるかもしれないから黙っておくことにした。大聖女になったばかりだから、変な先入観で見られて評価されたくないもの。ちゃんと私の実力で評価されたい。


そして、大聖女として一番の務めを果たす時が来た。


「騎士の皆様は一緒には来られないのですか?」

「はい。我々は人々の悪意から聖女様を守るのが役目で、魔物関係は全て聖女様の仕事になるので」

「そうなのですね」


まぁ、私は大聖女だし普通の人がいても仕方がないか。

ちょっと結界があるところまで距離があるので歩いて向かうのは大変だったけどこれも大聖女の務めとして頑張った。


「ここに結界があるのね」


結界を張る前にまず、結界周囲にいる魔物の浄化をしないといけない。そのためには結界の外に出ないといけないと神官様は言っていた。

正直、魔物なんて見たことないからよく分からないけど、神聖力が歴代聖女の中で最も少ないと言われているお姉様でも問題なく浄化できていたのだから大聖女である私なら余裕よね。神官様もそう言っていたし。


「・・・・・・へぇ?」


意を決して結界の外に出ると今まで生きてきた中で一度も見たことのない異形の姿をした生き物が複数いた。これが魔物と呼ばれている生き物なのだろう。


口から涎を垂れ流し、こちらを見る複数の目

瞬時に理解した。私は彼らに捕食される側なのだと。そう分かっても突進してくる魔物から逃げることができなかった。


「ぎゃああぁっ!!!!」


魔物の鋭い牙が私の肩に突き刺さった。骨が砕かれる音がした。


痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。


こんなの知らない。どうして、こんな目に遭うの?私は大聖女なのに。神様に選ばれた存在なのに。どうして?


どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?


どうして、みんな私に意地悪をするのっ!

やっと、みんなが関心を向け始めてくれたばかりなのに。どうしてよぉっ!

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