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二つの刻の中で…  作者: 白い黒猫
一章

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7/9

核はどこに?

 フォローしてみたものの、ループするとそれはなかったことになる。

 次の回で、その事実に気づいた。

 そして田中稔は、八回目のループに入ってもなお、毎回同じ行動を取っていた。

 赤いキッチンカーに乗り、あの時間に高速道路のあの場所を走行し、事故に遭い、美術館へと吹き飛ばされてくる。


【今日、首都高速の××エリアを11時ごろ通ってはいけない。

 そこは大事故が起こって危険だ。生き残りたいなら、そこには絶対行くな】


 さすがに我慢できず、朝起きた段階で田中稔にSNSへメッセージを送った。

 気味が悪かったのだろう、返事はなかった。

 そしてその日、田中稔は高速道路から落ちてこなかった。

 高速道路では大事故が起こったものの、展示会場は無事だった。

 トークショーも予定どおり行われることになり、逆な意味で慌てる。

 予報どおり午後には晴れ、客足も問題ない。

 俺の様子が少し妙だったこと以外は、特に支障もなくイベントは終了した。


 冷や汗をかきながらトークショーを終え、控え室で冷たいドリンクを飲んでいたとき、田中稔から返事が来ていることに気づいた。


『あなたは何者?

 なんで事故のことを知っていたんだ?』


 何と返すべきか、一瞬迷う。


「逆に聞きたい。

 君はなぜ、毎回あの道を通った?

 あそこで事故が起こるのを知っていたんじゃないのか?」

 そう返してみる。


『何言ってるんだ?

 分かるわけないだろ! そんなこと』


 その返事に、俺は首を傾げるしかなかった。


「君は……ルーパーじゃないのか?」


『は? 何それ!』


 話が、どうにも噛み合っていない。

 俺は改めて、田中稔についてネット上の情報を調べ直し、唖然とする。


『ヤロウだけど、今日が誕生日のオレ♪』

 3月3日。

 バースデーパーティーを開いてもらっている投稿だった。


 田中稔は、ルーパーではなかった?

 だから、記憶がない。


 大型トレーラーの運転手や、亡くなった家族連れの運転手の誕生日も調べてみた。

 だが、11月11日生まれの人間は見つからなかった。

 彼らは毎回事故に巻き込まれ、同じように亡くなり、

 ループして元どおりになり、また死亡する。

 それをひたすら繰り返している。


 なぜだ?

 俺は、一回目のことを必死で思い返す。

 あの時、誰か他にいたか?

 少なくとも、時田の追悼コーナーには俺しかいなかった。

 だとすると……。

 田中の車の助手席に、もう一人誰か乗っていたのだろうか?


 だがその場合、二回目か三回目の時点で、

 知人が事故に遭うと分かっていれば、忠告するか、回避するよう動きそうなものだ。

 訳が分からなかった。


 十五回目のループの朝、俺は朝一でプロデューサーの佐々木に連絡を入れる。


「あのさ、作家の時雨結さんなんだけど、連絡をつけられないかな?」


『は? 何で突然』


 同じ作品に携わっていても、原作者と監督って意外と会わないものである。

 ほとんどがプロデューサーや編集者を介して連絡を取り合う。

 なぜって? 直で製作陣と接触すると揉めがちだからだ。


 脚本家の時田と時雨結が密な関係になっていたのは、時田の脚本に時雨結がいたく感動したとかで、プロデューサーや編集者が「そんなに喜んでくれるなら」と、場を設けて顔合わせさせたからだ。


 同じストーリーテラーとして意気投合したのか、二人で時々飲む関係にまでなっていたようだ。

 時雨結からはよく分からないが、時田は「聡明で素晴らしい女性」「彼女の生み出す世界は完璧で美しい」と褒め称え、いつになく熱く語る様子から、惚れていたんだと思う。


 途中から時雨結作品は二人の共同脚本なのでは?と疑うほど、密に仕事をしていた。

 そして新作の「11:11:11〜廻る世界〜」の執筆も、時田が協力した風な記述があとがきにある。


「いや、時田の追悼コーナーもあるから招待したいかなと」


『あ、まあ。確かに時田は喜ぶかもしれないけど』


「俺もお話してみたくて、できたら今日中に連絡をつけてくれ」


 そう言って電話を切った。

 無茶だと思うが、今日中に何とか会うしかない。

 俺には明日がないのだから。


 本棚に行き、改めて本を手に取るが、

 著者近影に写真はなく、簡単なプロフィールがあっただけで、

 どんな女性か分からなかった。

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