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二つの刻の中で…  作者: 白い黒猫
一章

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6/8

違和感

 四季館の警備員たちにも来てもらい、前回同様、来場客の退避は無事に終了した。

 そして警察と消防が到着して十分ほど経った頃、眞光がやってくる。

 それは前回と同じ流れだ。


 だが今回は、余計に違和感を覚えた。

 初対面のときは気づかなかったが、このタイミングで来るのは早くないか?

 そう思ってしまう。


 警察相手にも、眞光は変わらず堂々とした態度で応対している。

 一応、俺を守るスタンスで動いてはくれているが、そもそも、何のためにこいつはここにいるのだろうか。


 冷静に考えれば、一番の出資者であるスポンサーとはいえ、顧問弁護士事務所のおそらくトップクラスの人間が、このスピードで駆けつけてくるものなのだろうか。

 こういう立場の人間なら、部下を向かわせれば十分なはずだ。


 受け取った名刺には「眞光弁護士事務所」とあった。

 父親がやっている事務所なのかもしれないが、それにしても、使い走りのような立場には見えない。

 まるで、あらかじめ事故が起こることを予期していたかのようにも感じる。


 だが、それにしては彼は、前回と一言一句変わらない言葉で警察と会話している。


 俺は、時雨結の小説の設定を思い返す。

 ループは、11月11日生まれの人間が核となって引き起こされる。

 同時に亡くなった「11日生まれ」の人間も、ループ現象に巻き込まれる。

 それ以外の人間は、ループのたびに同じ行動を繰り返す。


 ということは、田中稔が核ルーパーで、俺はサブルーパーなのだろう。


「事故のあったエリアの隣にいたところ、大きな音がして……向かってみると、赤い車が壁に激突していました」


 俺は警察の質問に、今回の行動に即した返答をする。

 部屋の入口で突っ込んでくるところを見たか、音を聞いて現場に向かったか………その程度の違いは些細なものらしく、警察の反応も大きくは変わらなかった。


「事故を目撃して動揺されているのは分かりますが、もう少しお付き合いいただけないでしょうか?」


 警察の要請で、実況見分を行うことになる。

 俺以上に現場を見ていないこと、そして女性にこの現場を見せたくないという俺の要望もあり、十和一絵には前回同様、先に会議室へ行ってもらった。


 今日は、実況見分の後も少し残ってみる。

 眞光の行動を見てみたかったからだ。


 だが、警察に裏取引を持ちかけるような様子もない。

 弁護士として淡々と事実確認を行い、今後争いになる可能性を想定して、資料請求の手続きを部下に指示しているだけだ。

 特別なことは、何一つしていないように見える。


 俺の視線に気づいたのか、警察との話し合いを終えた眞光が近づいてくる。


「どうかされましたか?」

「いえ……お若いのに、ずいぶん堂々となさっているなと」


 眞光は苦笑した。


「いえ。十年この仕事をしていますので、若くもありませんよ」

「事務所までお持ちとは、さすがですね」

「父の事務所です。ですから私は、ただの一職員ですよ。

 それでは、会議室の方へ参りましょうか?」


 今回は、眞光と連れ立って会議室へ向かうことになった。


「ところで……あのキッチンカーの運転手は……」


「亡くなっていました。衝突の際に、他の車の部品が飛んできて心臓を貫いたようです。

 ですから、痛みや落下の恐怖は、あまり感じずに済んだのが不幸中の幸いでしたね」


 あまりに冷静にそんなことを言われ、俺は自分の顔が引きつるのを感じた。


「あんな亡くなり方をして、幸せも何もないでしょうに」

「……確かに」


 野次馬が溜まっている場所を通るため、しばらく二人は無言になる。


「でも………あなたは幸せですよ。事故に巻き込まれずに済んだのですから」


 そう言って、眞光はにっこりと笑った。

 俺は何も言葉を返せなかった。


 会議室に到着してからの流れも、大枠は変わらない。

 眞光が皆に挨拶をし、うちの会社とイベント会社の法務部とのコンタクトを求め、釘を刺した上で事件の説明と今後の対応方針を示す。

 そして、俺と十和一絵との面談。


 精神的な疲労は変わらないまま、俺は家に帰り着き、深いため息をついた。

 テレビニュースも、ネットの様子も、前回と変化はない。


 ビールを飲みながら、ため息をつく。

 タブレットで田中稔のインスタグラムを眺め、考え込む。


 そして、眞光以上におかしな点に気づいた。


 もし田中稔が核ルーパーだとしたら、なぜ今回も事故に巻き込まれた?

 俺は、彼と同時に死んだから、ループに巻き込まれているはずだ。

 普通、自分が大事故に遭うと分かっていたら、避ける行動を取るのではないだろうか。


 時雨結の小説でも、主人公たちは最初、そうしていた。

 俺自身も、あの部屋へ無防備に向かうことは避けた。


 もしかして、夢だと勘違いして、気のせいだと思い、今回も同じ行動を取ったのだろうか。

 だとすれば、四回目はさすがに避けてくるはずだ。


 そうなったら、何とか田中と連絡を取り、二人で協力すれば……。

 とりあえず、この状況を話し合える仲間とは、会えるはずだ。


 俺は、田中稔のインスタグラムとFacebookのアカウントをフォローしておいた。


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