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二つの刻の中で…  作者: 白い黒猫
三章

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16/20

困った状況

 私は部屋で【11:11:11〜廻る世界〜】というタイトルの本を読み終わり大きく溜息をつく。

 それは本に感動したとかというわけではなく、今自分が置かれている状況に対してだ。


 多分私一回死んでいる。そして今読み終わった小説の主人公のようにその後自分が死んだと思われる一日を繰り返している。

 2031年7月11日の11:11:11私は自分が仕事をしていた展示場でよく分からない衝動を受けて気を失った。そして気が付いたらその日の朝に戻っていた。

 訳が分からないまま過ごしたループ1回目の時、私が前回立っていた所に赤いキッチンカーが壁を突き破って突っ込んできたのを見て、『コレ私死んだんだ!』と冷静に判断してしまった。

 多分かなり動揺していたとは思うが、そのショックもトコトン突き詰めてしまうと冷静になるというのを初めて知った。

 こうしてみると、就活の時の緊張とは衝撃って大したものではなかったと思う。


 11月11日の人が7月11日の11時11分11秒に死亡してループ現象に入る。これは今世間を騒がしている小説で描かれているのとまさに同じ現象。それで勉強の為に読み返してみたのだが、本は面白かったが私としてはそれをどう参考にすべきか悩ましい所だった。

 本の中では土岐野(トキノ)(カイ)はイベント会場で起きる事故において、最初は被害を最小限に抑えようと奔走する。しかしいくら助けてもループしてしまうと元の状態になるだけで、事故現場から離れてしまう。そして憂鬱な毎日を過ごしていると、ある日不思議なラジオを聴いてそれにより佐藤(ヒロシ)という別の年のルーパーと出会い希望を取り戻すという物語。

 私の場合どうこれを参考にできるのか?

 展示場内においては、私が飛び込んでくるキッチンカーの動線に入ることなければ被害者はいない。運転手以外は……。

 かといって少し離れたところで起こる高速道路の玉突き事故を私のような小娘が止められるはずもない。

「十和ちゃん、あちらのお客様を避難させて!」

 逆に舞原監督に庇われたことで、悲惨な事になっているであろう運転手の様子は見なくて済んで、指示を受け事故現場から来場者を遠ざけるように動くだけ。

 毎回助けられて動くだけで、何の力もなく申し訳ないと思う。

 それなのに何故私が毎日無駄に仕事しにこの七星四季館に通っているかというと、やはりここに何かの秘密があるような気がしているから。


 眞光というトカズの弁護士が来て、舞原監督や私の上司らが共に対応して私は早々に別室への移動を命じられてしまう。

「残ってここで何かお手伝いします!」

 そういくら主張しても、入社3年目のペーペーにはこの場は相応しくなく、それより取引先関係との連絡をやれ! と追い出される。

 私は頭を下げてこの美術館の本館である会議室に移動する。

 展示室を出て左前方のガラスの上部はブルーシートで覆われた大きな穴があり、左をチラリと見るとキッチンカーが突き破ったであろう部分にもブルーシートが貼られている。

 もう7回目なのでこの異様な風景も見慣れたを超えて、見飽きた気もする。

 それでも何かヒントがないかと視線を巡らせる。

「え?」

 美術館入り口方面で、規制線内で誰も立ち入り出来ない筈の場所に、一人の男性が立っていた。

 男は三十代前後という感じで、サラサラな髪。まあ、格好いい感じ。

 Tシャツにジーンズ、それに斜めがけの小さめのデイバッグ。


【 I CAME HERE FOR YOU 】


 Tシャツには、そんな言葉が書かれている。

 その男は、私に向かって手を挙げて微笑んできた。

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