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二つの刻の中で…  作者: 白い黒猫
2章

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14/20

敵か味方か

 時雨結との次の会合は、前みたいに誰かが乱入してこないようにと、ソファータイプの貸切会議室となった。

 そこにアオイネミが伴ってきたことは少し驚いた。

 むしろ、彼女のことを知れるいい機会なのではないかもしれない。なぜあの時、七星四季館にいたのか? そしてなぜ二人は消えたのか?


 俺と時雨結がソファーで改めて向き合う横で、アオイネミは飲み物を用意してテーブルに置く。そしてお盆を持ったまま時雨結の隣に座り、お盆を横に置いた。


「改めまして、よろしくお願いします」

「こちらこそ」


 時雨結はそう言って頭を下げる。俺も合わせて頭を下げてしまう。


「まず、最初にお聞きしたいのですが、舞原さんは、眞光氏と顔見知りのようですが、どういった関係なのでしょうか? そしてどう思われていますか? あの方のこと」


 あの時、二人は美術館にいたのか? と聞こうとする前に質問されてしまった。

 俺は、ループの中での眞光の立ち位置と、その行動がなんとも不可思議なものだったことを説明する。


「そういったわけで、得体が知れないというのが正直な気持ちですね」


 なるほど、と時雨結は頷く。


「その判断で間違っていないと思います。私たちにとってもそういう人物なので。

 そこでまず、貴方はどういうスタンスで彼と向き合うか決めた方が良いと思います。多分、彼は貴方のことを気にされているようなので」


 眞光が俺の何を気にするというのだろうか?


「スタンスとは?」

「身近な方が複数、7月11日に亡くなったから、単にこの現象に興味を持っているだけの人か……2031年のルーパーであって脱出した人であるのか」


「貴女がルーパーであったことを眞光氏は知っているのですか?」


 時雨結は頷く。


「彼は疑うというレベルでもなく、私とこちらのネミちゃんがルーパーであると確信して近づいてきていたので。

 まあ、ああいう小説を書いてしまったこともありますが」


「眞光は……」


 弁護士であるという以上に、現象とどういう関係なのか気になる。


「彼は2025年の核ルーパーと思われる十一残刻と、2026年の核ルーパーと思われる不死原渉夢と友人だそうです。

 だから二人を救いたいと思っているのは本音だと思います」


 友情から色々調べているということなのか?


「つまり協力者ではあるということですよね?

 俺はどちらでいった方がいいと思いますか?」


 時雨結は隣のアオイネミと顔を見合わせて悩んでいる。


「彼はトカズやフシハラの組織の中でもそれなりの地位があるようで、そのため強力な調査能力と実行力を持つ。その点では助かるのですが……。

 なにぶん性格がアレですので、自分にとって大切なもの以外はどうでもいいと考えている節があるんですよね。

 それに手段を選ばず、とんでもないことも平然と行ってしまう所があります。

 それだけに、情報を与えすぎるのも危険な気がします」


「与えてはいけない情報とは?」


 俺の質問に時雨結は少し戸惑い、口を開く。


「彼の今一番の関心は、十和一絵さんの死だと思います。おそらくは彼が計画して配置したものの、想定と違う結果となり驚き、その実態を調べようとしているのだと思います」


 そして俺をまっすぐ見つめてくる。


「これからお話することを、冷静に聞いてください。

 これが私とネミちゃんが調べた、今年の7月11日に御社で行われるイベントの一覧です。

 見てもらえますか?」


 周年ということで、今年は特にウチの会社のイベントは多いのは確かだ。

 最近の作品のスポンサーであることもあるが、そのほとんどにトカズコーポレーションやフシハラコーポレーションが関わっていた。

 そしてもう一つの、よくわからない人物のリスト。気になるのは、そこに十和一絵の名前が入っていることだけだった。


「これは?」

「眞光が今年の7月に入ってすぐ、私に資料として渡してくれたものです。

 11月11日生まれの人のリストです」


 自分のところのイベントだから、どういう人が関わっているのか、うっすらわかっている。

 イベントはこのリストの幾人かがいる会社と関係していた。


「あの男は、あの事故の前に顔を合わせた時に、『事故の発生条件を詳細に調べるために検証を行ってみようかと思っている』と、とんでもないことを言っていました」


 俺はリストを見て、手が震えるのを感じた。


『今回初の大役を任されることになりましたが、未熟な分、若さと根性で頑張りたいと思います!』


 元気な笑顔でそう言いながら挨拶をしていた十和一絵のことを思い出す。


「つまりは、人体実験したということですか!?」


 アオイネミはなにも言わず、俺の方を憐れむような視線を向けている。

 彼女はここにいるが、ほとんど語らない。ただ俺たちの会話を見守っている。


「おそらくは……。

 それで十和一絵さんと貴女が、七星四季館に配置された」


 時雨結は静かな声で肯定の言葉を返してきた。


「何故ウチの会社をターゲットにしたんだ!?

 去年はウチ社屋だったし、一昨年もウチの会社のイベントだったし。

 アイツはなぜ執拗にウチを狙うんだ?」


 時雨結は首を横に振る。


「それは、ルーパーを生み出す事故の発生条件が理由です。

 眞光氏を庇うつもりはありませんが、彼が現象に働きかけてきたのは、今年からです。

 私が本を出して、そのことに反応して私に接触してきたのが去年ですので。

 11:11:11の事故は、前年度のルーパーに纏わる場所で起きます。

 一昨年は天環さんの作品が纏わる場所、去年は月代さんの作品がある場所、そして今年は時田さんの作品が纏わる場所になりますから」


 どうりで、ウチの会社界隈で事故が起こるはずである。

 そして思う。ならば、なぜ最初の段階で十和一絵は無事だった? そして俺だけが、なぜルーパーになった?


「ルーパーだったというので察しておられると思いますが、私は11月11日生まれです。そしてネミちゃんは8月11日生まれ」


「やはり、1回目のループの時、七星四季館のロビーにいたのは貴女たちだったんですね」


 時雨結はゆっくりと頷く。


()()()()()()()がありまして、私たちはあの美術館にいました。

 あなたが事故にあった場所の壁を隔ててロビー側に。

 そこで飛んできた赤いキッチンカーにぶつかり、死にました」


 とんでもない話を、あっさりとした口調で時雨結は言ってきた。


「そして、現実世界とループ世界の眞光氏は、どちらでも事故のことを不思議がっていましたよ。

 ループ世界の眞光は、事故があの美術館でしか起こっていないのに、核となるルーパーが見当たらないこと」


 それは俺も思った。だから、どこに核ルーパーが隠れているのか? と探していた。


「そしてループ外の世界では、現象が選んだ相手が想定外の人物だったから。

 それによって彼が求めていた理論が壊れてしまい、現象発生に法則性が見出せなくなってしまった。

 私としては悩ませたままにして、現象は人ごときが誘導し、支配できるものではないと思わせた方が安全かなと思っています。

 そう思いませんか?」


 時雨結はそう言って微笑んだ。


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