時間返せ! とあるWEB作家と令和学生の邂逅と悲劇
この物語は事実です。
作者もこの運命を呪っております。
時間は大切だ。
タイムイズマネー、時は金なりとよくいったものだ。
一日24時間、縛られた時の中で人間はどれだけ活用させられるかで、人生の充足さは決まる。
大抵の社会人はその24時間に仕事と睡眠で削られてしまう。
自分の時間なぞ指で数えられる程しか残らないだろう。
その絞り出された貴重な時間はかけがえのないものだ。
その時間で副業をして収入を増やす人、または多忙な毎日のためにリラックスに充てる人、趣味に没頭する人、様々だ。
その時間で人生を謳歌できるのだ。
大切にすべきである。
この物語の主人公、白川涼も時間に縛られた男であり、この物語は彼がその大切な時間を奪われた悲劇であり、喜劇である。
白川涼は印刷会社で印刷技師として平日12時間の重労働に苦しむプロレタリアートであった。
高さ直径110cm、重さ800キロの円柱状のロール紙を人力で転がし、輪転機にセットし、5000mの紙を毎日30本、印刷加工し、別の加工会社に出荷する日々を送っていた。
その過酷さに何人もの職人が逃げ出し、若手と思っていた白川涼も気づけばベテラン職人になり、現場責任者になっていた。
彼の仕事の速さには定評があった。
当たり前である。
勤務時間の一時間前に現場に立ち、機械の調整、工程の段取り、そのための資材調達をこなしていた。
定められた時間内にどれだけ工程ノルマをクリアできるかに命がけで取り組んでいた。
何故白川が必死になるのか?
それはノルマをこなせば早く帰れるからである。
さっさとその日の仕事を片づけて、自分の時間を作り、家族を愛し、生きがいの創作の時間に没頭したかったのである。
白川の創作は小説の執筆、アナログイラストを描くなどマルチな面が特徴である。
一日の僅かな時間で生み出した投稿小説、色鉛筆で描いたイラストを我が子のように愛し、自分の世界を表現することが彼の生きがいであった。
白川の人生は充足していた。
そんな彼に悲劇の運命が訪れることとなる。
ことの発端は2通のXのDMからである。
送り主は二人とも学生であった。
まずはジャブとして一通目の学生との邂逅と悲劇をここに綴ろう。
2025年10月14日、秋風が冷たくなりつつあった。
クローゼットに仕舞っていたジャケットに袖を通して、冬の予感を抱きながら、鶏も寝ている時間に出勤し、白川は仕事の準備をしていた。
ふと時計代わりのスマホを眺めていたらDMの通知が来ていた。
仕事の合間の休憩時間にDMの内容を見ると学生からであった。
「是非作品を読んで下さい!」
白川は伊達と酔狂に生き、義理と人情に厚い男であった。
書籍化を目指す学生が大人の人間に懇願する勇気に惚れ込んでしまったのだ。
それが白川の仇になることをこの時誰も知らなかった。
多忙極まる仕事を終え、大切な自分の時間を削り、学生の作品を読んだ。
これで令和の学生と世代を超えた作品の読み合いができることに白川は大いに喜んでいた。
正直、学生の作品は情景、人物、心理描写が殆どなく、稚拙さが目立っていたが、そこには目をつむり、持てる言葉でできる限り褒めて感想をカクヨムに送り、渾身のレビューまで書き上げた。
作家は褒めて伸びる生き物だ。
白川は最後にアドバイスを授けた。
「君は現代の若者を等身大で描写できる視点を持っている。それに自信を持って下さい」
と。
なんだか学生の反応は薄かった。
その日、白川は連載中の小説を執筆する予定であったが、その時間を学生の作品に捧げた。
数日後、学生から再びDMが来た。
「改稿したから読んで下さい!」
流石に今週はもう忙しいので来週、時間作って読む旨を伝えた。
2025年10月27日、仕事を終えた白川はタイムスケジュールを作り、学生のための時間をなんとか作った。
しかしなんとカクヨムにその学生の作品が無かった。
すぐに学生にDM送り、
「どうしたらいいですか?」
学生に尋ねたが、無反応であった。
よくよくXを確認すると、なんとフォローから外されていたのだ。
そしてその学生だ……。
なんと書籍化目指す作家から歌い手にジョブチェンジしてやがった((((;゜Д゜)))))))
貴重な時間を返せ.°(ಗдಗ。)°.
若者が勇気を持って感想依頼してきた時思ったから、仕方なく読んで丁寧に感想書いたのに:(;゛゜'ω゜'):
いや、ガチで無礼なこと、この上ないよ?
最近の学生こんなのばっかなの?
めちゃくちゃ迷惑だよ?
白川は暗い闇夜に心の中で叫んだ。
ざっけんな!!!!
二度とくだらねぇDM送ってくんじゃねー!!!!!
((((;゜Д゜)))))))
((((;゜Д゜)))))))
しかし、白川涼は知らなかった。
これがジャブであることを。
その翌日に右ストレートを叩き込まれることに気付かなったのだ……_| ̄|○
作者に同情する読者がいらっしゃるなら、作者の投稿作品、「幻想世界大航海英雄伝シウラン」を是非読んで下さい。




