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第94話 壊れた扉の向こうに、救いの光があった。

俺は、次の日も学校を休んだ。


聖に救われた――

そう思えるほどの言葉をもらったのに、それでも足は動かなかった。


学校が怖い。

人が怖い。

社会が怖い。


そして何より……“本音”が見えてしまう自分自身が、一番怖かった。


(また裏切られるんじゃないか……?)


どうしても、その不安が喉に刺さったまま抜けない。俺のこの“呪い”さえなければ――

あの日、愛理や蓮也の本音なんて聞かずに済んだ。辛い現実を知らずに、嘘の世界を信じて生きられた。


(……いっそ、騙されたまま生きてたほうが本当は幸せなのかもしれない)


そんな弱い考えが、何度も頭をよぎる。

だが、今の俺にはその選択はできない。

なぜなら――俺の呪いは俺の意志とは関係なく俺や周りの“本音を吐き出させてしまう”からだ。


そのとき、不意にあの言葉が脳裏に蘇る。


『――君は救世主なんだよ、神田ゆういち。EES共鳴現象の苦しみを抱えている人間に君の能力は"本音を語るきっかけ"を与える。』


銀髪の天才発明家。

彼女の冷たい目が俺に逃げる事を許さないと言わんばかりにその使命を与える


(……は?救世主?)


胸の奥が急に熱くなる。


(なんで俺なんだよ…この呪いが救いだと?ふざけるな……!自分一人すら救えない俺が、誰を救うってんだよ!?)


感情が爆ぜるように、拳が勝手に動いた。


ドンッ!


沈み込むような音がベッドに響く。

布団が跳ね、僅かに舞った埃が、光も差さない部屋でふわりと揺れた。


(もう……全部怖いんだよ)


外の世界も。

学校も。

人の心も。


そして――

その心を暴いてしまう“俺自身”も。


(……なら、いっそ……ずっとこの暗闇の世界で生きていけばいいんじゃないか……?ここにいたら誰にも会わなくて済む)


誰とも関わらないなら、きっともう傷つかない。

悲しい本音を聞くことも、裏切りを知ることもない。そう思った、その瞬間。


――コツ、コツ。


ドアの向こうから、控えめな足音が近づいてきた。


「神田君……? 私よ。安城恵梨香よ」


凛として落ち着いたトーン。

それだけで胸がざわついた。


「安城……? どうして……」


よりにもよって、今の俺のこんな情けない姿を一番見られたくない相手。今すぐ逃げたい。消えてしまいたい。でも、ベッドと天井しかない部屋には逃げ場なんてなかった。


けど安城は、そんな俺の葛藤をあっさり踏み越えて言葉を続けてきた。


「先日のこと……如月さんと蜂須賀さんから聞いたわ。あなたの過去も…本郷愛理さんと真田蓮也君との出来事を」


彼女の口から出たその名前に一瞬で心臓が冷える。


(あぁ……もう安城の耳にまで届いたのか。)


(親友と初恋――どっちにも裏切られて、情けなく泣き崩れたあの最悪の瞬間が。)


「もう……放っておいてくれよ。俺は怖いんだよ……」


言葉が震える。

情けない声だと自分でも思う。


「信じていた人達の裏の顔を知るのが……もううんざりなんだ。何度も何度も裏切られて……今ではもう、聖も蜂須賀も、朝倉先生も……そして安城でさえ……いつか俺を裏切るんじゃないかって……」


ドロッとした黒い本音が、喉の奥から勝手に溢れ出す。安城に言ったってなんの解決にもならない。そんなのはわかっている。


「人を信じるのが……怖いんだよ……また同じことが起こるんじゃないかって……だったら最初から関わらない方がマシだとさえ思う。」


推しの前でこんな姿を晒している最悪の瞬間なのに、本音が止められなかった。

本当はもっとかっこよくありたかった。

安城には胸を張って隣に立てるかっこいい男でいたかった。そんな俺の後悔なんて知らないみたいに――ドア越しの安城は静かに言った。


「……あなたのその気持ち、わかるわ」


その言葉に、俺の中で何かがブチッと切れた。


「わかるだと……?」


思わず笑った。乾いた音だけの、何の感情もない笑い。銀髪の天才発明家が言った言葉が脳裏を過ぎる。


“EES共鳴現象は、他人には理解されない”

“ずっと一人でこの苦しみを抱え込み、いずれ思考がゆっくり確実に偏っていく”


「安城に……俺の何がわかるんだよ?」


声が震える。怒りか悲しみか、自分でも判断できなかった。


「ただ普通に仲良く平和に生きたいだけなのに……気づけば嫌われたり、裏切られるんだよ!妹をいじめから救った時も、それが原因でクラスのやつらに白い目で見られても……それでもやっと見つけた仲間に裏切られた。何度も、何度も……!ふざけんなよ!」


拳を握る。爪が手のひらに食い込む。


「そんな気持ち……安城にわかってたまるかよ!!」


部屋に響いたのは、叫びにも似た声だった。

ずっと押し殺してきた悲鳴だった。


「わかるわよ。」


「だって私も、人間なんて大嫌いよ………ついこの間まではね?」


その言葉は、まるで刃のように鋭く、それでいて涙のように繊細だった。


「世の中のほとんどの人間の本性が欲望と打算に満ちている。誰かを利用し、裏切り、踏みにじることなんて平気でやるわ。そんな声を……ずっと"聞いてきた"私がいちばんよく知ってるわ」


思わず息をのむ。その声は“慰め”なんかじゃなかった。“共感ごっこ”じゃない。安城自身の痛みから紡がれた、本物の言葉だった。


「……けどね、全員じゃないのよ」


ゆっくりと、確信を込めて続ける。


「その中にも、真っ直ぐで、優しくて……何度傷ついても人を信じようとする、馬鹿みたいに綺麗な心を持った"本物"だっているの。

――そう。あなたみたいに」


胸の奥がズキリと熱くなる。


「俺が……本物? 何見てきたように言ってんだよ……安城に俺の何がわかるんだよ」


震えた声で返す俺に、安城は真剣な眼差しのまま言い切った。


「そうね……このままだと何も伝わらないわね?私はあなたと直接本音で語り合いたいわ」


「そうなると………このドアが邪魔ね」


「……は?」


何を言っているのか、これから何をしようとしてるのか俺には理解出来なかった。


「こんな小さくて暗い世界…あなたには似合わないわ」


そして。


ガンッ!!!


俺は反射的に飛び上がった。普段の凛としておしとやかで、可愛いあの安城恵梨香には予想も出来ないような行動だった。


「お、おい!? ちょっ……安城?なにしてんだよ!?非常識だぞ?」


「開かないなら、壊すだけよ。それに、あなたをここから救い出さないことが世間の常識なら私は非常識でけっこうよ。」


「やめろって! 本当に壊れるだろ!?」


「そのつもりよ!!」


何度目かの衝撃で、蝶番が大きく歪み――

――破裂音とともに、ドアが外れた。

粉塵の向こうで、金髪がふわりと揺れた。

眩しい光がドアから差し込む。その光が安城恵梨香を照らす。


「……やっと会えたわね、神田君」


安城恵梨香は、まるで“光の中から現れたヒロイン”のようだった。


そして、そのまっすぐな瞳が、ベッドの上で縮こまる、卑屈な俺を真正面から射抜く。そして安城はゆっくりと一歩ずつ俺に近づいて来る。


「もう……ほっといてくれよ。どうせ安城だって……いつか俺を裏切るんだろ……?」


少しの期待と、たくさんの諦めが混じった声。

それを聞いた瞬間。影を落とさず、迷いもせず――まるで答えを叩き込むように。


「私は、あなたを裏切らないわ」


彼女は真っ直ぐな目をしながら続ける。


「私ね……裏切られない生き方って、たぶんすごくしんどいと思うの」


いつになく真剣な目で、安城は静かに口を開いた。


「だって――誰も信じないってことは、いつも疑いながら生きるってことでしょう?

そんなの、実際に裏切られるより、よっぽど苦しいと思うの。心を閉じたままじゃ、誰ともちゃんと向き合えないもの」


窓から差し込む放課後の陽射しが、彼女の横顔をやわらかく照らしていた。


「信頼関係なんて、環境や状況で――あっさり崩れるわ。

でも、だからこそ……私は“迷ったときは信じるほう”を選びたいの。

だって、信じるって……誰かの未来を、諦めないってことだと思うから。」


一拍置いて、彼女はそっとこちらを見つめた。

その瞳は、まるで真っ直ぐなオッドアイは光を灯したように澄んでいた。


「だから私は――

あなたが、もう一度立ち上がることを……信じたい」


その声に、揺らぎはなかった。


「たとえ裏切られても。

たとえ傷ついたとしても……誰かを信じるっていう、勇気ある選択をした“過去の自分”を誇れる気がするから」


そう言って、安城は微笑んだ。

それは、どこか泣きそうで、それでも前を向こうとする――彼女らしい、凛とした微笑みだった


静かな、けれど真っ直ぐな声だった。

俺は顔を背けたまま、吐き捨てるように呟く。


「……そんなの、綺麗事を信じられるかよ。安城の“本音”を……」


そう言いかけて、ハッとする。


(……何やってんだよ、俺)


また本音を吐き出させようとした。安城の“想い”を、自分の力で無理やり暴こうとした――最低だ。俯いた俺の前に、柔らかな足音が近づく。


「私の……本音、ね」


彼女は静かにそう言いながら、俺の手の甲に、そっと自分の手を重ねた。ふわりとした温もりが伝わる。その瞬間――


(私は、あなたを絶対に裏切らない)


聞こえた。彼女の“心の声”が、優しく流れ込んでくるみたいに。それは……どこか懐かしい感覚だった。そうあの時の"彼女"のように。


(あなたが本郷愛理さんのために、真っ直ぐ努力してきたのを、私はずっとあの公園で見てきたわ。)


(誰かのためにここまで頑張れるあなたに……私は勇気をもらえた。世の中にはあなたのように真っ直ぐな人間がいるんだって。捨てたもんじゃないって思えた。そんな真っ直ぐなあなたに、こんな悲しい結末があっていいわけないでしょう?)


(だってあなたは――私の“推し”なんだから)


……その瞬間。


手首に巻かれていた、あのミサンガから――パキッと乾いた音がした。銀髪の天才発明家のくれたミサンガ。その繊細なひびが、役目を終えた証のように広がっていき、そして、ポロリと床に落ちた。そして俺の涙が頬をつたる。


(あぁ……そうか、あの時の“女の子”は……安城だったのか…)


ずっと前、名前も顔も知らなかった少女がいた。

毎日公園でひたむきに努力していた俺を、陰から応援してくれていた少女。


俺を"推し"だって、俺の頑張りに勇気をもらったって、もう会うことはないと思っていた“その少女”が――

目の前の、俺の“推し”安城恵梨香だったなんて。


そしてその時。


(ありがとう、安城……やっぱり君は、俺の“推し”だよ)


――久しく聞こえていなかった“心の声”が、彼女の中に響いた。一瞬だけ、驚いたように目を見開いた安城。すぐに、頬を赤く染めながら、心の中でそっと囁いた。


(……馬鹿ね。そんなこと……知ってるわよ)


(……やっとあなたの心の声が聞こえたわ……私の大切な声が……)


――初めて心と心が、繋がった。そんな気がした。


「例え裏切られたとしても、信じる選択をした過去の自分を、誇れるか……」


安城のその言葉が胸に突き刺さる。この答えを出すまでに彼女はどれほど悩み、苦しんだのだろうか、俺には想像すらつかなかった。


彼女の真っ直ぐで、揺るがない瞳。

俺は、その光にまた救われた気がした。


「……裏切られたっていい、傷ついたっていい。それでも――俺は誰かを信じる選択をとりたい」


拳を握る。言葉が自然と溢れる。


「もう“誰かに裏切られるかもしれない”なんて怯えない。俺が信じたいと思ったなら、その気持ちを貫こう。……誰かのコピーじゃない、この苦しみを力に変えた“神田ゆういち”として――」


安城のおかげで、俺はようやく自分の過去と向き合えた。そして前を向けた。


(俺も……安城のように、誰かを救える人間になりたい)


立ち上がり、彼女を見つめる。

俺が握手を求め、差し出した手に――安城は驚いたように目を見開き、そして、わずかに頬を染めた。


「べ、別に……! あんたとこのまま会えないと思うとバツが悪いだけよ!? ……それに、あんたに暗い顔なんて似合わないんだから!」


拗ねたような、でもどこか照れたような声。

その手が、そっと俺の手に重なった。


「……ありがとう、安城。また俺が情けなかったら――助けてくれよな?」


照れ隠しもせず、まっすぐな笑顔でそう言う俺に、安城は少しだけ目を見開いたあと、静かに――けれどどこか優しく、うなずいた。


「……まあ、気が向いたらね? 考えておくわ」


その表情は相変わらずクールなのに、どこか柔らかくて――俺は、少しだけ胸が熱くなるのを感じた。


すると次の瞬間、


(……本当、あなたって素直で可愛いわね)


そんな彼女の“心の声”が、彼女の中で響くと思いきや――


「……本当、あなたって素直で可愛いわね」


「……えっ?」


俺が聞き返すより早く、安城の目が大きく見開かれる。


「わ、私、いま……どうして言葉に……!?」


ハッとしたように、彼女は両手で口を塞ぐ。頬は見る見るうちに赤くなっていき――


「ち、違うのよ、今のは……その……っ!」


そういえば――あのとき、朝倉先生と体育倉庫で閉じ込められたときも。

手を握った瞬間、同じように“本音”が強制的に漏れ出たような……


まさか、俺が握った手の相手は――


(本音しか、言えなくなるんじゃないか……?)


とんでもない予感に、俺は息を呑んだ。


「ち、違うの! あなたを可愛いって言ったわけじゃなくて……!」


頬を真っ赤に染めて、安城は慌てたように手をパタパタと振る。


だが――その手は、まだ俺の手を握ったまま。


「あなたの……その、不器用ながらも真っ直ぐ進むところ……わ、わんちゃんみたいな健気な感じが……か、可愛いなって思っただけで……っ!」


「えっ、いや、どうしてそんなまた本音が……いやこれは本音じゃなくて」


「ち、違うってば! ああもう、どうしちゃったの私?」


安城は恥ずかしさに耐えきれず、手を引こうとする。だけど、俺は――その手を、むしろぎゅっと握り直した。


(……間違いない、手を握ってる間は相手は本音しか話せなくなるんだ!なら逆に言えば――いまだけは、彼女の本音を聞けるチャンスってことじゃないか?)


俺は、安城の手を、そっと――いや、ぐっと強く握った。


「えっ……!? な、なによ? あんた、いきなり……そんなに強く握るなんて……っ」


戸惑う声が、手のぬくもり越しに伝わってくる。


「……思い出したんだよ、安城。昔、俺に言っただろ? “私をもらってくれるかしら”って。……あれ、本気だったのか?」


「ば、馬鹿じゃないのっ!? からかったのよ!!本気なわけ――」


言いかけた彼女の肩が、ぴくりと震える。

次の瞬間、その瞳が微かに揺れた。


「……私、ぶっきらぼうだし……男の子と付き合ったこともないし……てか、男の子っていつもエッチなことばっか考えてるし……」


「……?」


「……だから、もし将来、誰かとそうなるなら……」


言葉を詰まらせ、目をそらしながら彼女は続けた。


「どうせなら……あんたみたいな、真っ直ぐで……優しい人に“貰われた”ほうが……マシかなって。……当時は、そう思ったのよっ!!」


ぶわっと叫んだ安城は、手で顔を覆う。


「ち、ちがう!もう……どうしちゃったのよ?私ったら」


――その横顔は、耳まで真っ赤だった。


(あぁ、やばい。こんなの――)


俺の心臓は、もう全力疾走していた。完全にこの状況に味をしめていた。


(よし……今、安城がどう思ってるのか聞いてみよう。いや待て。能力で探るのはさすがに――)


そう思ったその瞬間だった。

壊れたドアの隙間から、ぴょこんと顔を覗かせたのは――妹の姫花だった。


「にぃに、もう大丈夫?」


「あぁ……ごめんな? 姫花、ドアを……」


俺は視線をそらし、無残に砕け散ったドアを見やった。

その隣で、安城も静かに頭を下げた。


「ごめんなさい、姫花ちゃん。許可をもらっていたとはいえ……ここまで粉砕するつもりはなかったのだけれど」


「……え? 許可、してたの?」


「ええ。“姫花ちゃんが出てこないなら、にぃにを引きずり出して”って。ドアも破壊して構わないって言われたわ」


(……マジかよ姫花)


俺は呆然と、粉々になったドアを見つめる。


(絶対、安城を怒らせないようにしよう……。想像以上に怪力だ……)


その心の声が――当然、彼女に筒抜けだった。


「……っ!」


ギロッ、と鋭い視線が突き刺さる。


(あ……あれ? この感じ、懐かしい……)


そう。

俺はまた安城恵梨香に――救われたんだ。

強引で、でも優しい――そんな1日だった。


翌朝──


教室の前で、俺は立ち尽くしていた。


(ちくしょう……休み明けって気まずいよな……!あんな姿…くそ!恥ずかしいぜ!!)


意を決してドアを開ける。


「ゆ〜ういちっ! おはよ〜っ♪」


「あわわわわわっ ……神田君、元気になったんですね……!」


聖と蜂須賀が、まるで何事もなかったように迎えてくれた。


(なんだよ……みんな……普通に接してくれるの、なんかむず痒いぜ……けどみんなありがとう)


俺は席につき、隣の“推し”――金髪オッドアイのクールビューティー、安城恵梨香にも、そっと挨拶を送った。


「おはよう。昨日は……よく眠れたかしら?」


 問いかけながらも、彼女の反応に少しだけ胸が高鳴る。返事は静かだったが、どこか柔らかさが混ざっていた。


「……ああ。今までで一番、ぐっすり眠れたよ」


(――今日の推しも、最高に可愛いぜ……!)


心の声は、当然のように“推し”にも届いていた。


(ふんっ、馬鹿じゃないの? でも……元気になってよかったわ)


安城は心の中でツンとしながらも、そっと微笑んで、カバンからノートを取り出す。その何気ない仕草すら、俺には尊すぎる。


だがその瞬間――


キーンコーンカーンコーン――。

突如、校内放送が鳴り響いた。


《生徒諸君は体育館に集まってください──》


全校集会らしい。しかも何やら様子が変だ。


(わざわざ朝から……なんだってんだよ?)


俺達は体育館に集まった。そしてそのステージに立っていたのは、銀髪のオッドアイギャル。

あの天才発明家だった。


(そういえば……うちの学校に転校して来るって言ってたな?)


ステージの中央。

マイクを掴んだその少女は――いきなり叫んだ。


「みんなーっ! ハローッ!!」


明るく伸びやかな声が体育館に響き渡る。

それはまるで、海外のエンタメ番組を見てるかのようなノリで。


「アメリカのランバード大学から転校してきました、安城星梨奈でーすっ☆」


教室じゃなく、体育館で転校生紹介という異例の状況にも驚いたが、

それ以上に――この子、何者なんだ?


「向こうでは、社会心理学の教授やってましたっ♪」


「で・も・ねっ? それは表の顔なのだ〜!」


ポーズまでつけて、観客の視線を総ナメにする彼女。


「裏では、発明家として企業と連携して、社会に役立つガジェットを日々生み出してまーすっ!」


生徒たちはざわつき、どよめきが広がる。

もはや彼女の登場は、ただの“転校生”という枠を完全に超えていた。


だが、俺は――そんな周囲の空気よりも、たった一つの事実に反応していた。


「……安城、星梨奈?」


驚いて隣を見ると、安城恵梨香が驚いた表情で呟いた。


「……え? 姉さん……なんで……」


――こうして、俺と安城恵梨香の物語に、

銀髪の天才発明家・安城星梨奈が加わった。


新たな嵐の幕開けだった。


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