7.『憂い』と『憤り』
お読みいただき、有難うございます。
ブクマと評価、感謝ですm(_ _)m
今回はホント短め。初の二千文字以下……
ふっと意識が浮上する。
背中に重力、とは別の重さ――程よい圧力? と、じんわり感じる温かさ……う~ん、手かな? それから左頬と手とお腹が温かい……。
そっと瞼を上げると、視界に広がるのは―― 大 胸 筋
……ん?
…………本日も辺境伯の寝室からお送りします――じゃねぇ。なんで辺境伯の上? しかも、がっかりホールドされてるんだけど……。
なんで??
辺境伯の寝室で目が覚めるのは、いつものことだからもう諦めてるんだけど、それでも同じベッドの上で寝ているだけだ。
それがここ二~三日、辺境伯の腕の中で目が覚める。あ、今日は上だった。
なんでかな? と考えてみるも、心当たりがない。
あ、いや、でも――『子供でもわかる神話~神々と王族のつながり~』って本を読んでから、か?
神話を子供にも分かりやすくした本だ。だけどこれ、五歳児よりも、もう少し上の子が読むものだと思った。
それに書かれていたことは私の知らないことで、衝撃を受けた。
黄金色の目を持つのは王族だけ、なこと――隣国だけじゃないこと。
黄金色の目は全てを見通す『神の目』と云われているとか――千里眼的な? どういうことなのか、詳しく書かれていないから分からないけど……。
それから黄金色の目を持つ人は『神の子』やら『愛し子』と言われていて、なんらかの『加護』を持っているらしい、ことが書かれていた。
読んで最初に思ったのは、うわ……やっちまったなぁ……だ。
【変身魔法】を使っていたとはいえ、おもいっきり黄金色の目を晒して冒険者をしていたのだ、知らなかったとはいえ。
これ、黄金色の目=王族って知ってる人からしたら“『雷帝』は何処かの王族……?”――って思われているかもしれないってこと、だよね……。
もう少しいると思ってたんだよ、黄金色の目を持つ人。臣籍降下した王子が興した家とか、王族が嫁婿入りした貴族家とかにもいると思ってたんだよぉ……。
王族だけだって知ってたら【色変魔法】で目の色だけでも変えてたぁ……。
自分が『神の子』だか『愛し子』だかで、『神の目』と『加護』を持っているかもしれないこととか。
なんで生まれた国には教会はあるのに、神話とか、神関連の本が無いのか、とか。
生まれた国は黄金色の目を持つ者=『神の子』『愛し子』だとは知らないのか、とかとか。
憤りを感じた。
もし、生まれた国が黄金色の目を持つ者=『神の子』『愛し子』だと知っていたら――母は愛妾だと、男爵の庶子だと蔑まれず、『神の子』『愛し子』の母として尊重されたかもしれない。
病を患っても、ちゃんと医者に診てもらえたかもしれない。
不治の病でなければ、母が二十五と云う若さで亡くなることも、陛下に看取られないなんてことも無かった――かもしれない……。
私が生まれなければ――――
うとうとしながら、本を読んだ後からの数日のことを思い出していた。
自分でも気づかぬうちにナーバスになっていたのかもしれない。
気にしてないつもり、だった、けど……。
トクン、トクン…と左耳から聞こえる規則正しい心音と呼吸に、瞼が重くてなってきた。
…………人肌に触れたり、体温を感じたり、心音を聞くと安心するっていうからなぁ……。
……もう少し寝よ……。
完全に瞼が落ちる。
◆
二度寝から目覚めたら、何故か老執事と朝の身支度をしてくれるメイドさんの一人が拝んでいて……先に起きていた辺境伯がチベットスナギツネみたいな顔になっていた。
わかる。(なんで拝んでるんだ?)とか、(『尊い』ってなんだよ……)ってなるよね……。こっちとしては意味不明だし。
もう一人のメイドさんは胸抑えてたかな?
……三人はいったい何を見たんだ……。