6.『魔石』と『神話』
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ブクマと評価、感謝ですm(_ _)m
少し短め……
お茶の後、やっぱり執務室に拉致られた。
今回は寝落ちなかったぞっ!
――それはね? こっそり『魔石』を作ったからだ。
魔石を作るには魔力を使う。魔力を放出することによって、エネルギーを使ったから眠くないのだ! ――と、思う。多分きっとネイビー。
『魔石』は基本、人間より魔力が豊富な魔獣の体内で出来る。
純度が高く、大きな魔石は入手困難なんだって。何故なら魔獣の強さに比例し、強ければ強いほど魔石の純度が上がり、大きくなる。
魔力が多いほど、魔獣は強い――だから、そういう魔獣を討伐出来る人の数が限られてくるから、中々手に入らないらしい。
私も天然物を見たのは、三ヵ月の間で二、三回ぐらいだ。
だから『人工魔石』と云う物がある。
人の手によって魔石を人工的に作るのだ。
魔石は魔力の結晶体だから、魔力があって作り方を知っていれば、誰でも大小様々な魔石を作ることが出来る。アクセサリーなどに使われているのは、数を多く用意できる安価な人工魔石だ。
安価といっても、中々の値段ではある。天然物の魔石と比べると安い、というだけだ。
人工魔石の作り方は『蒼焔の魔術師』さんに教わった。
作り方はいたってシンプル。
魔力を手と手を合わせた間に出して練り、結晶化させる。だが、この結晶化させるのが難しい。
私は何度か失敗したんだけど、魔術師さんからは「センスあるわ~」と言われた。覚えるのに結構、時間がかかるらしい。
私が作った魔石は、出した魔力を練りながら【状態異常無効】と不意の攻撃から身を守る【シールド】を付与し、【空間収納】に入れていた四つ葉のクローバーを入れて結晶化した物だ。
これは人工魔石の良いところで、魔力を結晶化する時に魔法を付与すると、魔石全体に満遍なく付与が巡るため、魔石が壊れるまで永続的に使用出来る。
時間経過で魔力が薄くなるから魔力の補充が必要になるけど、それは制作者の魔力じゃなくても大丈夫なのだ。
付与は後付けも出来るが、結晶化した後にした付与は一度きり。付与という魔力のベールで魔石を包んでいる状態だから、そのベールが剥がれておしまい、といった感じだ。
魔石にヒビなどの傷が無ければ、制作者に再度付与してもらうことも出来る(別途料金)。使えるようにはなるが、後付けの魔石は脆いから、付与は二~三回が限度だ。
天然物の魔石に付与させるには魔法陣を彫らなければならない。
天然物は硬いから彫るのも一苦労で……。だからといって魔法で付与しようとすると、相性が良くないと反発、最悪爆発し、粉々になってしまう。
天然物は高い。そんな最悪の結果は招きたくないから、天然物の魔石への付与は彫るしかないのだ。
その点、人工魔石は制作者の魔力で出来ているから付与させるのが楽でもある。
そして出来た、四つ葉のクローバーを内包した半円形の魔石。
いい感じに出来た魔石は後で研磨し、表をつるりとさせ、金具に接着し、剣帯の飾りボタンにする予定だ。
もう一つの四つ葉のクローバーは、ペンダントトップにでもしようかな~と考えている。
あ。ベルトのバックルにもいいかも?
五歳児なら、付与を与えた魔石――直径三センチぐらいのやつなら二つ、付与なしなら五個……は、作れるかな? これぐらいなら、程よく魔力を使えて眠気防止になる。
因みに、冒険者の姿なら二~三倍ぐらい? 十個は出来たから、そのぐらいだと思うけど……限界まで作ったことが無いから分からない。
魔石を作ったことで眠気スッキリ! している今は、仕事をする辺境伯を横目にしつつ、ソファーに座って大人しく本を読んでいる。
渡されたのは『子供でもわかる神話~神々と王族のつながり~』という、絵本より少し字が多い、神話を子供にも分かりやすくしたもの、のようだ。
けどこれ、小学校低学年ぐらいの子供向け、だよね。間違っても五歳児が読むもの、ではないと思う。
――これ、初めて読むかも。
生まれた国で王子様してた時に色んな本を見たけど、神様が出てくる物は無かった気がする。
色んな神様が居るんだなぁ……と思いつつページをめくる。
私の冒険者姿――『雷帝』の名は、神話に登場している神様が由来だ。
赤い髪に雷魔法をメインにして戦う冒険者な私の姿が、“赤い髪で雷鳴を轟かせて戦う神――『戦神』でもある『雷神トール』のようだ”と、『雷神』を捩って『雷帝』と呼ばれるようになった。
偉そうだね。だから、やっかまれたのかなぁ……。
『雷神トール』は、前世世界の北欧神話に登場する神の一柱――なんだけど、何故か、この異世界の神話にも登場している。イメージも大体一致。
それに、他の北欧神話や別の神話の神も出ている――――(前世の)ゲームでも色んな神話がごちゃ混ぜで登場してたけど……。どうなってんだ??
黄金色の目の持ち主は『神の子』『神の愛し子』としてこの世に生まれ、『神の加護』を用いて魔獣や脅威から土地を、領地を護り、国を繁栄へと導き、王になった――
……王族を英雄化しようとしてる感。
神の子に愛し子、ねぇ……“異世界あるある”だな。
黄金色の目=王族――“王族は神様に愛されてますよー”ってこと?
…………なら、何故私は(離宮に)放置されてた?
神の子で愛し子なんでしょ?
おかしくない??
パタンと本を閉じ、頭を振る。止めよ。精神衛生的によろしくない。
あーあー、止め止め!
……私もう、王子様じゃないもん! 知らん知らん!
「……どした?」
私が頭を振っていたからか、辺境伯が声をかけてきた。
「んーんー、なんでもなーい」と、にへらと笑って本を隣に置く。
……もうこれ、読むのやめよ……。