表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境でのんびり契約親子ライフ  作者: ユキノリク(元キタノソラ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/24

4.『ルーティン』と『クローバー』

お読みいただき、有難うございます。

ブクマも感謝ですm(_ _)m


「……しらないてんじょーだ……」


 いや、知ってる。思わず呟いちゃっただけ。



 薄暗い中、もぞもぞと起き上がり、チラリと視線を隣にやると、こんもりとした山。

 そのまま視線を枕の方へずらしていくと――黒髪が見えた。辺境伯が寝ている。辺境伯の寝室だから当たり前なんだけど……。

 頭を抱える。

 その様は『お酒の飲みすぎで記憶が無い。だけど多分、一夜の過ち冒(ワンナイト)しちゃったぞ、これぇぇぇ!』に見えるだろう――五歳児だけどね。

 前世でも、そんな経験したこと無いから分からない。けど、そんな気分だ――五歳児だけど。


 どうも、私が寝てる間に辺境伯が私を寝室に拉致っているのだ。

 元からあったのか、客室を改装したのかは判らないが、辺境伯家で世話になっている私は、与えられた子供部屋で就寝している。

 だが、目を覚ますと、いつも(・・・)隣に辺境伯が寝ていて――――訳が分からず、初日は軽くパニックになった。

 寝る前、別れましたよね?! と。

 三日目あたりで見慣れた(・・・・)知らない天井に「あ、またか(・・・)……」と悟った。あと寝込みを襲うな。


 ――と、いうことで、いつも通り(・・・・・)辺境伯の寝室で目が覚めた。



 なんで、いつもこう(・・)……。


 顔を覆った両手の、指の隙間から半目で正面を見ていると、お腹に圧迫感。見ると腕が回されている。


「……まだ早い、寝ろ」


 寝起きの、色気ダダ漏れな掠れた声をかけられ、有無を言う前にポスーンとベッドに寝かされる。

 そして、穏やかな顔でお腹を優しくゆっくり、ぽんぽんと叩かれ――――二度寝確定だ、おやすみ。すやぁ……


 次に目を覚ますのは老執事に起こされる時だ。



 老執事に起こされ、顔を洗う。ふわふわタオルで顔を拭きながら『生活魔法』の【洗浄(ウォッシュ)】で口の中を洗浄。お口、スッキリ☆

 そして老執事に連れられ子供部屋に戻って、着替える。


 パジャマを脱いで、辺境伯家に着いた初日には既に用意されていた子供服。

 今日はその一着、白い半袖シャツに腕を通し紺色の膝丈のズボンと白い靴下、黒いエナメルの靴を履く。

 肩に届くぐらいの長さの髪を軽くブラッシングされると、赤い髪紐でハーフアップに結う。

 最後にシャツの襟元で髪紐とお揃いの赤いリボンタイを結んで、お着替え完了だ。


 着替えが終わると、こちらも着替えを終えた辺境伯が迎えにきて、共に食堂へ向かう――抱き抱えられて。

 たまには歩かせてくれ……。


 ――これが、ここ最近のルーティンだ。



 朝食は子供用の椅子とカトラリーのおかげで、スープやサラダを溢さなかったのは幸いだ――手がプルプルしちゃったけどね。

 大人用のカトラリーって子供には重い。大人用(あれ)だったら確実に溢しちゃってたかもしれない。

 鍛えないとなぁ……。


 ――にしても準備が良い。部屋、服、食器と揃っているなんて……事前に知らせてたんだっけ? そう言えば。


 朝食の後は、部屋に戻ってお勉強だ。

 偽物(・・)とはいえ、辺境伯の息子になったのだから読み書きと最低限のマナーは知っておかないと、と思って。

 いつか何処かに“お呼ばれ”するかもしれない(・・・・・・)。その時、“知らない”じゃ恥をかくのは辺境伯家だ。

 辺境伯に恥をかかせる訳にはいかないからね。

 あとは老執事にお任せ。知らなくていいこと(・・・・・・・・・)は教えないだろう。



 おやつの時間を挟みつつ、午前中は部屋でお勉強。

 お昼に食堂へ拉致られ昼食。昼休憩の後は――


「おにわの……たんさく~!」


 辺境伯が渋々執務室へ向かうのを見送り、私は老執事と護衛と共に中庭へ来ていた。


 敷地内で護衛とは……?

 いや、辺境伯のご子息(・・・・・・・)には必要か、うん。


 本当は馬を見に行きたかったんだけど、辺境伯が「目の届く範囲に居ろ」って言うから執務室から見える中庭に来たのだ。


 いい大人がワガママだなぁ……馬ぐらい見せろよ、ウマぁ。


 ――今度は門から玄関までの(ひっろ)い庭に行こ。



 中庭は昨日、お茶をした場所だ。ここはここで中々に広い。昨日行かなかったとこに行こうかな。


 ……寝っ転がったら気持ち良さそう…………いやいや。そんなことしたら服、汚しちゃう。

 いや、【洗浄(ウォッシュ)】か【浄化(クリーン)】を使えば……いやいやいや。


「あ! シロツメクサ!」


 芝生に寝っ転がりたい気持ちを抑えつつ、花壇や植木を見て回っている途中、白詰草が目に入り、そこにしゃがみ込む。


「よつばのクローバー、ないかな~」


 葉っぱをかき分け、四つ葉を探す。無かったら次の白詰草の群生? へ移動し、また探す――を何度か繰り返す。


 ……あれ? 私、何してたんだっけ??

 小首を傾げる。


「あ! このクローバー、かたちがいー!」


 プチっと三つ葉のクローバーを摘んで目より高い位置にまで手を上げる。



 まっ、いっか!



「ピッ」


 冷たい物が首筋に当たり、驚いて変な声が出た。

 四つ葉のクローバーを探すのに結構集中していたようで、いつの間にか自分を覆うような影が出来ていた。

 振り向くと、水が入ったグラスを手に持ち、笑いを堪えるように右手で口を抑え、顔を背けた辺境伯が立っていた。

 心なしか震えているような……?


 あのグラスを私の首に当てたな? 結露ってるからめっちゃ冷えてるぞ、あれ。


「……パパ」

「『ピッ』って……」

「ぅんもぉ……! ビックリしたら、こえでるでしょ!

――わらうならわらえ! ひとおもいにッ」


 恨めしそうに声をかければ、辺境伯の声が震え出す。

 笑うのを我慢されてる方が恥ずかしい!

 私が言ったからか、しゃがんで「ふっ、ふふ」と笑い出した。くそーぅ!



「何に夢中になってんのかと思えば……草なんか見てて楽しいか?」

「くさ……たしかに、くさだけど……。

よつばのクローバーさがしてたの」


 立ち上がって、笑い終わった辺境伯に見つけた四つ葉のクローバーを見せる。

 見つけられたのは二つだけだったけど。


「こーうんの、よつばのクローバー」

「あー……だから幸運のお守りとか、そーゆう系(・・・・・)のアミュレットは四つ葉のモチーフが付いてんのか……。

つか、この二枚以外は普通のクローバーじゃねーか」

「それはね、かたちがよかったから、とったの」

「ンなもん取ってどーすんだよ」

「ふつーのクローバーは、おしばなにして“しおり”つくろーかなぁ~って。

よつばのほうは、|かこーして、アクセサリーにするつもり~」

「栞とアクセサリーねぇ……それはそうと、水分補給しろ」

「ん」


 両手に持っていた四つ葉と三つ葉のクローバーを地面に落とす――ように【空間収納】に入れ、辺境伯から渡されたグラスを受け取り、口をつける。

 レモン水かな? 思っていた以上に喉が渇いていたようで、ゴクゴク飲む。


「……おい、クローバーどこにやった」

「ぷはー。えぇ? くーかんしゅーのーの、なかだけど?」

「空間収納…………お前に魔法教えたやつ、誰だよ」

「うん? ――うばだよ?」


 私が【空間収納】を使えるのは知ってるはずなんだけど……そんなに変な使い方だった?

 「慣れたら簡単にどこにでも(・・・・・)収納できるようになりますよ~」って言ってたんだけど……。


「……乳母? 名門(・・)生まれかよ、その乳母」

「しらなーい。でも、ぼつらくしたって、ゆってた。

――めーもんなら、ぼつらくしないんじゃない?」

「名門でも没落する時ゃ(ときゃ)、する」

「ふ~ん」


 ……そりゃそうか。


 乳母、魔術の名門出身疑惑――――隣国だから確認のしようがないな。



「坊ちゃま、休憩にしましょうか」

「あ、はーい!」


 老執事に声をかけられ、そちらを見ると、いつの間にかメイドさん数人が居て、お茶の席が用意されていた。

 飲み終わったグラスを落とさないよう、しっかり両手で持って向かう。


 今回は一人で歩いて行ける……! ――と思ったのに、後ろから脇の下に腕を通すように抱えられ、辺境伯の腕にぶら下がるような格好になった。

 その時にグラスを落としそうになったが、辺境伯が難なくキャッチ。

 そのままの格好でお茶の席に……。


 私は猫か……?


この時も、チベットスナギツネのような顔になっていた……。お痛わしや、坊ちゃま(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ