3.『辺境伯』と『契約親子』②
お読みいただき、有難うございます。
ブクマも感謝ですm(_ _)m
今回は短めになります。
誤字、修正しました。
今の今まで気づかなかったーorz
もぞもぞと動いて横を向くと――壁……じゃなかった。
ソファーの背もたれ……?
どうやら眠ってしまったようだ。
眠っちゃったからソファーに寝かされた? 普通、ベッドでは??
仕方ないじゃないか。程よくお腹が満たされて、心地好い揺れと温度なんだもの……寝ちゃうでしょ。
――辺境伯領に着くまで何度同じことをしたか……遠い目になっちゃうね。
ふぁ……と欠伸を一つ。ヨロヨロと起き上がり、うにゃむにゃしながら両手で両目を擦る。
目に悪いからやっちゃいけないって分かってるんだけど――やっちゃうんだよなぁ……。
どうも五歳児の姿だと、すぐ眠くなっちゃう。
だから出来れば冒険者の姿で過ごしたいんだけど――――パパが許してくれないんだよね。
“パパ”っていうのは辺境伯のことだ。親子をすることになったから、そう呼ぶことにした。
五歳児が辺境伯を呼び捨てにするのは――どうにも違和感が。
それに、いい呼び方が無かった。仕方ないね! うん。
――いや、“閣下”があった! ……すっげー嫌そうな顔をしそうだけども。
目を擦っていると、頭の上からクククと笑う声。振り返ると――ニヤニヤ笑う男がソファーに座っていた。
無言で体を元に戻す。視界に窓。青空が見える。
中庭から移動して、そんなに時間は経っていないようだ。一時間――ぐらいだろうか? もっと?
周りを見渡すと、お茶の用意をしているメイドさんが二人、紙束(たぶん書類)が乗った机の近くには蜂蜜色の髪と黒髪の男の人と老執事。
そして私と同じソファーに辺境伯――
…………なんか、微笑ましいものを見るような目で見られてるんですけど……? ――辺境伯はニヤニヤしてるけど。
……ここ、執務室?
「にゃーーーー!」
慌てて毛布を頭から被る。猫みたいな声が出たけど気にしない。そんなの、寝起きを見られたことより、どうでも い い !
う、う……なんで、微笑まし気なんだ……。
「なんで、しつむしつにいるんだ……」
「『行く』言ったろ――よっと」
「ぉわっ」
毛布を被って独り言を呟いていたら、それに返答するよう辺境伯が返してきた。
ついでに持ち上げられ、辺境伯の膝の上――毛布に包まれたまま横抱きされる。あ、顔出された。
この男――事ある毎に抱っこしてくるな……? ……抱っこ好きか??
「……いってない」
一瞬、スンとなって反論が遅れたのは脳内処理に時間がかかったからだ。あと現実逃避。
「ぼくがいかないと、しごとしない、いった」
「言ってねぇ……」
「いった! 『コイツがいないならいかない』いっ――むぐ」
「ちょ、アレクセイ! フォークを突っ込むな! 危ないだろ!」
反論していたらケーキを口に突っ込まれた。
辺境伯の左手には、たっぷりのホイップクリームが盛らさった(推定)ガトーショコラを乗った皿。そして右手にはケーキが刺さっていたと思われるフォーク――――コレを私の口に突っ込んだ、だと……?
この世界のお菓子は、前世と同じような物が多い。
中世ヨーロッパっぽい雰囲気なのにデコレーションケーキが普通に存在する――異世界だから?
それにしても――黙らせるためにケーキを問答無用で突っ込むとか……この男、人の心とか無いんか?
フォーク突っ込むとか危ない。
口の周りにはクリームついちゃったし……。
(クリームが)気になるけど、まずは口の中を空にして――――モグモグモグ……むむ!
「むっふー!」
両手で頬を包み――足をばたばた。
……ホント、五歳児の姿だと子供みたいな行動をしてしまう。
前世の私はチョコ系のお菓子が好きで、よくガトーショコラとかのチョコレートケーキを食べていた。
そして今世で初めてガトーショコラを食べた――――しっとり濃厚……! 美味しい……最、高ッ!
冒険者をしてると、生菓子を食べる機会なんて早々無い。悪くしちゃうしね。いや、私の【空間収納】は時間経過が無いから大丈夫か。
それでも嗜好品よりもメシ! だし、肉うまうま。
というか、生菓子の存在を知ったのって、辺境伯家に来てからなんだよね。
出されたお菓子にビックリしたものだ。
ふんふんふーん♪ と、思わず鼻歌が出る。ついでに体も動いちゃう。
幸せを噛み締めていると、口元にケーキ。モグモグしながら辺境伯を見ると、食べるようにケーキを差し出された。
食えってか。美味しいから食べるけど。
ごっくん、と飲み込んでからケーキにかぶりつく。うまいうまい。
〈……餌付けか〉
〈餌付けと言うより、親鳥が雛鳥に餌を与えているような……〉
〈あー……ね。それもあるか〉
〈――にしても、旦那様もあんな顔出来るんですねぇ……〉
〈……ビックリだな。つか、言った言ってないって話、有耶無耶にしようとしてるな、あれ〉
〈旦那様……〉
蜂蜜色の髪の人と黒髪の人が何かコソコソ話してるけど……なんだろ?
モグモグしてると口の周りをナプキンで拭かれる。
「……坊ちゃん、坊ちゃまのご夕食に障りますから程々になさってください」
「へいへい」
老執事が呆れた顔をして言うと、辺境伯はおざなりな返事をしながら私の口元にマカロンを持ってくる。パクっと、うまうま。
そう言えば仕事、どうなったんだろ? 終わったの? ――という疑問も、次から次へと与えられるお菓子を食べているうちに忘れてしまった。
この後、鬼ごっこ的な追いかけっこ(私が追われる側!)をしたため、お菓子のせいで夜ご飯が食べられなかった、という事態にはならなかった。
ただし、疲れすぎて睡魔と戦いながらの食事になった、とだけ記しておく。
しかし――――気がついたらベッドで、しかも朝になっていて……。思わず「なんでや……」って呟いてた。
うつらうつら、とはしてたけど……ご飯、食べてたはずなんだけどなぁ……。うっかり十時間以上経ってるよ!?
……うっかりで十時間以上も経つって、どうなん……?
また名前……




