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辺境でのんびり契約親子ライフ  作者: ユキノリク(元キタノソラ)


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21/24

21.『調査依頼』と『たまご』

お読みいただき、有難うございます。

ブクマ、評価、リアクション、感謝ですm(_ _)m



今回は約五千八百字(空白・改行含まない)

長くなったから、どこかで切りたかったんだけど……キリのいいところが見つからない……orz

……長くなりました( ̄Г ̄;)


※えーっと、一応、注意。

()が苦手な人は気を付けてね。

……十九話でバジリスク(名称)が出てる時点で察してるかと思いますが……。

……そこまでじゃないとは思うけど……保険



 前に来た時よりも木々に葉が生い茂り、太陽の(ひかり)を遮っていた。


 それで、少しでも夏の暑さを和らげてくれればいいのだが……そうとはならず、湿度が加わることで逆に暑く感じさせる。

 動いているから余計にだ。体を動かすだけで、じわりと汗をかく。



 襲ってくる小型や中型の魔獣を倒しながら、昼間だというのに、少し薄暗く感じる森の中を『生活魔法』の【点灯(ライト)】を頼りに、隣国の『イースハルト辺境伯領』との中間地点を目指して歩いていた。




 ことの始まりは九日前。


 隣国との国境を覆うように広がる魔獣が棲む『魔の森』に、未確認の大型魔獣が複数体、現れたことだ。

 その報告を受けた辺境伯は、休暇中の騎士たちと共に『魔の森』へ向かう。


 そこに居たのは、本来『魔の森』に生息しない、国が『災害級』『準災害級』と指定する大型の蛇型魔獣『バジリスク』だった。

 確認されていたバジリスクは討伐。


 五日前、辺境伯は辺境伯邸がある街に戻る。



 そして四日前、『冒険者ギルド』と国に報告の書簡を送り――その日のうちに、ギルドへ向かわせた遣いが持って帰ってきたギルドマスターの返答と、ギルドからの遣いとの面会で『魔の森』の調査をギルドと共同で行うことが決まった。


 私――『雷帝』も、ギルドからの依頼でこの調査に同行することになる。



 三日前の早朝、街の入り口でギルドからの同行者――A級冒険者・三人、B級冒険者パーティー・四人二組と合流し、辺境伯騎士団、辺境伯、『雷帝()』で『魔の森』近くの砦へ。

 その日の夕方近くに到着、砦で警戒に当たっている部隊から『魔の森』の現状、イースハルト辺境伯家の動向などを訊き、その日はお開きとなった。


 翌日に向け、体を休めることになった――のだが、この辺境伯、五歳児な私と寝たいと駄々をこねたのだ。


 戦闘になるだろうから、できれば『雷帝』のままで体を馴らしておきたかったのだが……。


 ハンスが居ないのに駄々をこねるな、と。まったく……。



 ……辺境伯的には? 私が『姿を変える腕輪(魔道具)』で『雷帝』になって(姿を変えて)いようと、『魔法の影響を受けない魔眼』だから、五歳児な私(子供の姿)で視えているから関係ないのかもしれないが……。


 狭いベッドに野郎が二人とか、絵面がよろしくない。


 私的にも、抱き絞められる(・・・・・)のはちょっと……。

 辺境伯は気にならないかもしれないがな?!


 私は休まる気がしない……。


 なので、私が妥協し、渋々『姿を変える腕輪(魔道具)』を解除した。




 因みに。辺境伯の側近であるハニーさん(ハンス)は、辺境伯騎士団副団長として、警備責任者として街に残っている。




 ――そして冒頭に戻る。


 この二日間、冒険者や辺境伯騎士団の騎士たちと『魔の森』を人海戦術で、バジリスクの痕跡や異変が無いか、数人一組になって探しているが――成果なし。


 砦に一々戻っていては時間がかかるため、『魔の森』で野営をしつつ、イースハルト辺境伯領との中間地点を目指している。


 私は最上級(S級)冒険者(ランカー)なので、一人行動だ。



 イースハルト辺境伯家も、巡回でハルバード辺境伯領(こちら)に来ていた騎士たちの話や、辺境伯からの書簡を基に、向こうのギルドと共同で調査をすることにしたそうで、『魔の森』の中間地点で合流することになっている。




 【探知(サーチ)】をかけながら進む。


 辺境伯たちが倒したバジリスクは、『魔の森』のハルバード辺境伯領側の中間よりも浅い、調査一日(いちにち)目、二日目に調べた辺りに現れたそうだが……。

 今のところバジリスクや、その痕跡は見当たらない――――ホント、何処からやってきたのか……。



 そろそろ『魔の森』の真ん中辺りになるのでは……?


 そこでふと、魔獣の襲撃が減ってきていることに気づく。


 ハルバード辺境伯領側の『魔の森』出入口付近や、調査一日目、二日目と比べると居ない(・・・)といっていいぐらいだ。

 【探知(サーチ)】にも引っ掛からない。


 それに――薄暗い(・・・)というよりも、暗くなった(・・・・・)ようにも感じる。



 見上げると、空が見えないほどに、木々が鬱蒼(うっそう)としていた。


 【点灯(ライト)】によって出来た影が濃く見えるのは、そのためか。


 暑さは引いたが、湿度は増したようにも感じる。



 前回は、ここまで奥には来ていないが――――お約束(・・・)だと、ボス()居る(・・)

 または、誰かが(・・・)隠れ住んでいる(・・・・・・・)


 …………考えすぎか。



 ……だけど、ここからが本番(・・)、といったところじゃないか?


 再度、気を引き締める。







 ……多分、森の真ん中。何も無い。


 あるのは木木木木木――森林!



 ……あのバジリスクがたまたま『魔の森』に来ちゃっただけ、というやつか?

 ――にしたって、複数体ってのはなぁ……。

 一体だけなら、迷いこんだの(そう)かも? と思えるけど……う~ん……。



 ……(ボス)は居ないし。誰かが隠れ住んでいる形跡もない――――まず、住めるような場所が無かった。完全に平地だし。

 だけど、さっきより少し明るくなった。

 あの鬱蒼としていたのは、一部だけだったようだ。



 ――さて。両辺境伯騎士団、ギルド冒険者たちなどの面々が到着するまで、何をして時間を潰そうか……。


 こういう時、ぼっち(・・・)ってのが一番困る。



 何か無いか、辺りをうろうろ歩いていると――大蛇が視界に入った。


 前世で云う、ニシキヘビぐらいの大きさかな? 四~五メートルぐらいはある。



 にしても、珍しい。


 『魔の森』にも普通の動物は生息しているから、居てもおかしくはないのだが、こんな奥に居るとは――蛇的には棲みやすいのか……?


 ニシキヘビサイズを普通(・・)といっていいのか……。



 大蛇が来た方を見ると、少し(ひら)けた場所になっていた。

 そして少し温かい。


 そこには、他の木より大きい木があり、根元には鳥の巣のような物(・・・・)があった。


 ような物(・・・・)といったのは、木の根元にある上に、バカデカいからだ。


 他の動物の巣……? ――にしては、小枝などで組まれ、枯れ草のような物が見える。

 ……器用な生き物が作った?


 器用――猿? 猿なんて居たかな? いや、猿が鳥の巣みたいな巣を作るか? ……木の上では??



 でも、パッと見、鳥の巣なんだよなぁ……。


 地面にあるということは、飛ばない鳥――巣がデカいから大型?


 飛ばない……大型の鳥?



 鳥の巣? に近寄ってみる。

 大きな卵が見えた。


 大きさは、前世で云う、ダチョウの卵ぐらいで、楕円(だえん)の形をしている。

 卵は小枝で組まれた巣の中に六つぐらいあって、下からの冷気や湿気から守るためか、枯れ草が敷き詰められていた。



「コカトリスの卵か」


 『コカトリス』とは、雄鶏のような姿をし、恐竜のような足をしていて、跳躍力と蹴りの威力がエグい。

 そして尻尾には、意思を持っているような蛇がついている――しかも毒持ち。

 最大三メートルになる(オス)――なるほど。確かに飛ばない大型の鳥だ。


 こんなところにも巣があるなんてなぁ……。


 しかし、行動範囲が広いな、コカトリス!

 前回『魔の森』に来た時、森の出入口付近で遭遇したぞ?!


 『魔の森』は俺の庭! ってか? ――コカトリスは雄鶏な見た目だが、ちゃんとメスもいる。鶏冠が少々オスより小さいのだ。


 それはさておき。



 コカトリスの卵は栄養が豊富だ。

 ヒヨコ時代をすっ飛ばし、鶏サイズで孵化するぐらいには――――殻がダチョウの卵並みに固いから、そこそこの大きさに育たないと自力で出れないから、なのかもしれないが。


 コカトリスの卵はほぼ卵黄で、白身は気持ち程度……だからか、味が濃厚だ。

 それで作ったオムレツは絶品で――まあ、YASEI(野生)の味はするが、冒険者の間で、“そこそこ” “まあまあ”人気がある。


 ――なので、卵を一つ、頂戴しようかなぁ~と……。


 卵を採るため巣の前で膝をつき、卵が大きいから両手で掴もうと――――



もにゅ……



 驚き、手を引っ込める。


「…………もにゅ?」


 思っていた感触と違い、卵に触れた手を見ながら、思わず首を傾げてしまった。



 コカトリスの卵は、ダチョウの卵のように殻がクソ硬い(・・・・)。割るのに専用の道具がいるぐらいに硬い(・・)


 ……大事なことなので、何度でも言う。硬い!(・・・)


 だというのに、私が今、持とうとした卵は本来とは違う、“ぷにゅ”とか“むにゅ”とか――水風船や、もちもちのビーズクッションのようなやわやわ触感(・・・・・・)


「……もにゅ……」


 ……これは、アレか? 前世でもあった“鶏が夏バテで殻を形成できなかった”――ってやつ。


 ……コカトリスが夏バテ……?


 ……いうほど暑くは――いや、暑さの感じ方はそれぞれだしなぁ……。

 人間が平気でも、コカトリスがダメな場合だってあるだろうし――――知らんけど。



カコーン!



 う~んと腕を組んで唸っていると、鹿威(ししおど)しのような音が頭に響いた。


「……なんだ?」


 すると、使っていない『愛し子』スキル:全てを見透す『神の目』――【鑑定】の結果が視界に表れる。



〔バジリスクの卵〕

〔もうすぐ孵化(ふか)する〕



「…………は?」


 バジリスクの卵(・・・・・・・)……?


 いや、ぷるっと、もにゅっとしてたけど、コカトリス――



バジリスクの卵(・・・・・・・)


〔もうすぐ、孵化する〕



 再び表れた『鑑定結果』が自己主張してくる。


 自己主張してくる【鑑定】って、なんだ? 視界が煩い。


「はいはい! バジリスクね、バジリスク! わかった、わか……もうすぐ孵化する(・・・・・・・・)? ……孵化ぁ?!」


 卵に亀裂(きれつ)が入っていくところが目に入り、思わずコカトリスもとい、バジリスクの卵を巣ごと【結界】で覆う。


 いや、これ、どーしろと?!


 このままだと孵化――――燃やすか?  いや、無理だわ!

 本物(マジモン)のバジリスクなら『生活魔法』の【着火(イグニション)】程度じゃ、殺せねーわ!


 【結界】内の卵にどんどん亀裂が増える。


 何か、何が……!


 焦って、考えがまとまらない。



 ――ふと、前世の記憶が浮かぶ。



蛇……爬虫類……変温動物


温度……寒さに弱い……冬眠……



 ――バジリスク()蛇だから体温を下げれば……?(・・・・・・・・・・)


 冬眠(・・)する?(・・・)



「――【冷凍(フリーズ)】!」


 思い浮かんだことを実現させるため、『生活魔法』の【冷凍(フリーズ)】を発動させ、【結界】内の卵を凍らせる。『氷魔法』の代用だ。


 ……焦っていたからか、力みすぎたようで――少し、込める魔力が多くなったようだ。思った以上に凍りついてしまった。


 冬眠(・・)っていうより、凍死(・・)してそう……。



 生まれる前で可哀想なことしたかなぁ……なんて思うが、この(ひら)けた場所と巣に気づけなかったら――気づいていなかったら、六体近くのバジリスクが誕生していたことになる。

 そう思うと背筋が凍る……。



「……いや、ホント……どーするよ、これ……」


 巣の前に座り込み、カチコチに凍っている【結界】内の卵を見て、ため息を吐く。


 う~ん……このままだと溶けるしなぁ……。

 凍死(・・)してるなら問題無いが、冬眠状態(・・・・)なら――――とりあえず【収納】しとくか……?


 【空間収納】なら、時間経過しないから【冷凍(フリーズ)】されたままで、安心だ――安心?



 しかし、なんでバジリスクの卵なんて……。どう見てもコカトリス――――まあ、バジリスクの卵なんて見たことないから、違いなんか分からないけど。

 【鑑定】が嘘を吐くとは思えないしなぁ……。


 【冷凍(フリーズ)】状態のバジリスクの卵を【鑑定】してみる。



〔バジリスクの卵/凍結中〕

〔元コカトリスの卵〕

〔大型の蛇が長時間側に居たため、バジリスクの卵に変化した〕



 …………やっぱ、コカトリスの卵じゃねーか!


 ……おん? 大型の蛇が(・・・・・)長時間側に居たため(・・・・・・・・・)変化した(・・・・)……?


 大型の蛇?(・・・・・)



 さっき、近くに――


「さっきの大蛇ぁぁぁぁ!!」


 もうすでに居なくなっている大蛇(ニシキヘビ擬き)が居た場所を睨み付ける。


 アイツ……! コカトリスの卵を食うつもりで巣の近くをウロチョロしてたのか?!

 いや、食ってるな。コカトリスの卵が六つとか、少ないと思ったんだよ!

 二~三日おきに産んでるらしいから、常に十個はあるのに!


 食ってる、食ってる――丸飲みしてる。四~五メートルの大きさなら、丸飲み出来るだろ、きっと。



 ……燃費いいからなぁ、蛇――じゃなくって!

 コカトリスの卵じゃなくなったから移動したのか? あの大蛇……!



 ……実は他のバジリスクもコカトリスの卵から、とか?



 ……側に居ただけで、コカトリスからバジリスクの卵に変わるって――――いや、待て。前世の記憶に何か……あったはず……。


 思い出せ、思い出せ……オタク知識――



元は別々……

バジリスクは『蛇の王』……

コカトリスは『若い雄鶏』……


 ――違う、これじゃない。



肉、うまい。尻尾の蛇、毒持ち。


 ――これ、前世じゃねー……。



コカトリスの伝承……徐々に取り込んで……

バジリスクとコカトリスが混同、同一視……


 ――おぅ?



ヘビの要素が多い姿がバジリスク……

ニワトリの要素が多い姿がコカトリス……


 ――うん、そう。

 まあ、バジリスクは超大型蛇だけど。



ニワトリの卵をヘビが孵化させると『バジリスク』……

ヘビの卵をニワトリが孵化させると『コカトリス』……


 …………鶏の卵を蛇が孵化させると(・・・・・・・・)バジリスク(・・・・・)になる……?

 ―― そ れ だ !



 コカトリスも蛇も『魔の森』に居る。

 卵を食べる目的で蛇がコカトリスの巣に居座ったのなら――――ハッ!


「辺境伯に知らせないと……!」


 【瞬間移動(テレポート)】を発動する。


 バジリスクの痕跡や異変を見つけたら直ぐに知らせるため、辺境伯に【目印(マーキング)】をつけてきた――了承は得ている。



 大きな木の下から辺境伯の近くに【瞬間移動(テレポート)】――したはず……。

 さっき居た場所より少し薄暗い。


 辺りを見渡す。

 木木木――近くに辺境伯が居るはずだが……。



「あ、いた」


 少し歩くと、木の影に隠れるように立っている辺境伯の後ろ姿が見えた。


 声をかけようとして(なんて声をかけたらいいんだ……?)と、ちょっと悩んだ。

 『辺境伯』が無難かな?

 『閣下』は――前に嫌な顔、された。

 『名前』は……なんか……う~ん――知らない訳じゃないぞ?!



 辺境伯がしゃがむ。

 どうしたんだろ? と首を傾げ、辺境伯の前にある物が何なのか、気にしながら近寄る。



カコーン!



 またあの(・・)鹿威しのような音が頭に響く。


 これは【鑑定】じゃなくて『危機察知』の警報()なのでは?


 さっきは目の前に(・・・・)卵があったから【鑑定】だと勘違いした(・・・・・)が、あの時も今も(・・・・・・)、私は【鑑定(・・)を使っていない(・・・・・・・)。なのに音が鳴った(・・・・・)


 私に危険を報せているのでは……?


 しかし……なんで鹿威しみたいな音なんだ……。



 辺境伯の前には鳥の巣。

 ――視界に入る。


 辺境伯が中身に触れようと手を伸ばし――

 ――走る!



「触るな!」

「……アレックス?!」


 私の声に反応した辺境伯が振り返り、驚いたような声で私の名前を呼んだ。


「【結界】――【冷凍(フリーズ)】!」


 目標は辺境伯の側にある鳥の巣。

 走りながら目標を視界に収め、さっきと同じように【結界】と【冷凍(フリーズ)】を発動させた。


 魔法が展開し、辺境伯の側にあった鳥の巣が【結界】に覆われ、中身が凍る。同時に『危機察知(・・・・)』の内容が視界に表れた。



〔バジリスクの卵〕

〔もうすぐ孵化する〕




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