19.『ひととき』と『クマ』
お読みいただき、有難うございます。
ブクマ、評価、リアクション、感謝ですm(_ _)m
今回はちょい長め?
文字数(空白・改行含まない)約四千九百
あ。そうでもなかった……。
キリのいいとこで分けたら短くなりそうで。あと、だらけちゃいそうで……。
(17、18も一つにすればよかったかな? とか思ってる)
最適な文字数ってどのぐらいなんだろ……(-_-;)
ちょっと早い夕食の後は、お風呂に入って、のんびりリラックスタイムだ。
質問と云う名の尋問が、ビミョーにしんどかった。うへぇ……。
今日は色々ありました。
魔法書読んだり、魔術師さんにお手紙書いて(こっそり『雷帝』で)出しに行ったり――バレずに行って帰ってこれるかな? って、スリル満点だったね☆
でも一番の驚きは、辺境伯の帰還だ。
一週間ぐらいはかかるかな~って思っていたから、四日とか……。早いよ、帰ってくるの。
ちょ……っと、私の外出や戻るのが遅かったら、辺境伯の帰還とバッティングしてたかもしれない。
子供部屋に【目印】して【瞬間移動】していたとはいえ、辺境伯なら帰ってきて直ぐ、私のとこに向かいそうだし……。危ない、危ない。
……手紙魔法、まだまだ時間がかかるのになぁ……。
ハニーさんが言い難そう――呆れてたのは、辺境伯が私からの手紙? を見て、里心? ホームシック? になったから、らしい。
なんじゃ、そりゃ。
それで未確認大型魔獣(複数)を片付けるって……。
それに巻き込まれた騎士さんたちとハニーさん――お疲れ様です、ご苦労様です! そして、私の手紙のせいで、申し訳ないです……!
件の大型魔獣とは――『バジリスク』だったらしい。
『魔の森』には生息していない魔獣なんだそうだ。
何処かから来た、とは考え難いかな。
大型なら移動しているだけで目につくから、噂になる。いくら森の中を通ってきたとしても。
子供のバジリスクでも三メートルになるから――うん、やっぱり目立つ。
けど、目撃情報は無いんだよねぇ……。
バジリスクの目撃があったのは、『ハルバード辺境伯領』とは別の、国の南東部にある辺境伯領付近。
そこで何度か目撃されたことがあるらしい。『雷帝』に討伐依頼があったバジリスクも南東の方だ。
ほぼ反対側、といっていい場所での目撃情報となると、生息圏は南東部方面。それをわざわざ北西部に移動する、とは考え難い。
『魔の森』の中に原因……?
ネット小説なんかでは『障気』とかが原因だったりするけど――――南東部で『魔獣大暴走』とか起きて、溢れて行き場を失い……なんてこと、ないよね……?
……起きてたら多分、遠くても空気感がピリピリしてそうだし――討伐依頼きてるか。
『雷帝』に討伐依頼があった時は、魔獣大暴走じゃなかったけど、空気がピリついてた。
だから多分、魔獣大暴走は起こってはいないと思う。……うん、たぶん。
バジリスクの発生、討伐などの報告は、隣国の辺境伯家や『冒険者ギルド』、国にもするそうだ。報連相、大事。
隣国の辺境伯家やギルドとは、持ちつ持たれずの仲だしね。
バジリスクは『災害級』、もしくは『準災害級』とされる魔獣だから国への報告が義務付けられている。
その魔獣の討伐依頼をされるのが『最上級冒険者』――『雷帝』も、その一人だ。
S級冒険者は三人しか居ないから、中々に大変だけど、王国騎士団と魔術師団の精鋭や、B級以上の冒険者たちと協力している。
バジリスクの場合、『準災害級』は五メートル以上、『災害級』は十メートル超え。
三メートル前後の子供(特級)は、A級でなんとか。五メートルを超えると、S級が単独で殺れる――A級以上の実力者のパーティーじゃないとキツい感じだ。
『雷帝』が相手にしたバジリスクは十メートル超えの『災害級』
これはA級、B級の盾職、回復職、支援職の三人と、S級の『蒼焔の魔術師』、『雷帝』の計五人で討伐。
装甲――鱗が『準災害級』とは比べ物にならないぐらいに硬くなるから、中々しんどかったー……。
今回の『魔の森』に出たのは子供のバジリスクか、『準災害級』に近い個体なんじゃないかな?
……辺境伯はS級ランクだとして、ハニーさんや辺境伯騎士団の騎士さんたちは、A級相当だと思うんだよね~――――『魔の森』で鍛えられてるし。だから目立った怪我が無かった。
怪我人はいたみたいだけど、死人は出なかったようだし……。
『魔の森』への調査依頼とか、入りそうだなぁ……。
うんうん考えてるうちに、頭も体も洗われていた。
さっぱりしたけど、リラックス出来なかったー……。
◆
お風呂を上がり、【温風冷風】(そよ風)を使いながら寝室へ向かうと、すでに辺境伯がいた。
私待ちか……?
「さきにねてたらいいのに……」
バジリスク討伐後、砦で休むことなく帰ってきたっていうから、疲れてるだろうに……。
それに巻き込まれたハニーさん。疲れてる風には見えなかったけど――数日は、ゆっくりしてほしいところだ。……無理かもだけど。
因みに騎士さんたちは、数日、砦に留まってから残留組と帰還組に別れるらしい。
帰還組は、もともと砦にいた騎士さんたちと怪我人で、交代で休養に入る人、静養に入る人だ。お疲れ様です。
【温風冷風】を解いて床に座り、寝る前のルーティン――ストレッチをはじめる。
「お前……いつ見ても柔らかいな」
「わかいからね。わかいうちから、やらないと……としとったら、かたくなるかも、だし……。それにー……わかいうちから、しゅーかんにしとかないと……からだ、こわしちゃう、よ。
まえじゅんび……ストレッチ、だいじ。きゅーに、うんどうして……きんにく、いたくしたくないもんねー」
今はまだ、体が未成熟の子供だから、筋トレは…………やって、出来ないことはないけど、身長が伸びなかったら嫌だしねぇ……。
だから、ストレッチで体の基礎を作っとく……! 目指せ! 百八十センチオーバー! ぐぎぎぎぃ~。
話ながらも、足や脇を伸ばす。ぐいーっと。
開脚で伸ばしてた足を胡座にして、最後は上に向かって腕を伸ばしながら、のびー……っと。
ふぅ……っと、息を吐く。
「終わったか?」
「おわり~」
ベッドに座っていた辺境伯に訊かれたから、答えながら伸ばしていた腕を下ろすと、こっちにきた辺境伯に脇に手を入れられ、持ち上げられた。
「……だっこするの、すきだねぇ」
言ってから、久しぶりの抱っこに、なんだか気恥ずかしい気が……してきた。顔を隠すように額を辺境伯の肩に当てる。
……そーいや、昼間も抱っこされてたっけなぁ……。
なんか、安心する。
……包容力? ……やっぱ、筋肉かなぁ……。
そうこうしてるうちにベッドに着席――お腹に手が回され、バックハグな上、がっつりホールドされた。
…………。
先程までの、私の気恥ずかしく思う気持ちも吹っ飛んでいく、安定の抱っこ。
清々しいまでに通常運転だな?!
辺境伯の手を退かそうとするが、うんともすんともしない。ペチペチ叩いてみるが、離してくれない。
……ま、いっか。
ふぅ……と息を吐いてから、ポスっと辺境伯に寄りかかる。私が寄りかかったぐらいじゃ、びくともしない。さすが。
……やっぱ、安心する。
……筋肉かぁ……。
「レック」
「う~ん?」
お腹に回された辺境伯の手……指を揉む――というか、私の指だと揉むのは難しいから、握ったりして弄っていたんだけど。
拒否されなかったからマッサージ? していたら声をかけられ、気のない返事が漏れる。
むむ? 痛くはないはずだけど?? 全力で握ったとろこで、所詮は幼子の握力ですしぃ?
「訊きたいことがある」
「なーにぃ~?」
「……緊張感ないな」
「……まじめなかおする?」
辺境伯の手をにぎにぎするのを止め、深刻そうな顔をして見上げる。
「そーじゃねー……」と呆れたように言う辺境伯に、頬を軽くむぎゅむぎゅされる。
……力加減がちゃんとされてる……。
もちもちだ……、じゃないからね? 力加減されてても、顔を揉まれるのはちょ……も、やめ。むぎゅぅ……。
「……なんで魔法書なんか読んでた」
「むぐゅ」
むぎゅむぎゅする辺境伯の手を離そうと、躍起になっていたが、一瞬止まる。
なんで……! ――はっ! そーだった! 寝落ちて、【空間収納】に片付けてなかったの見られてた! 魔法書、読んでたの、バレてるんだった!
あー……えー……うーん……。腕を組んで考える。
……正直に言う? 言った方がいい?
……『蒼焔の魔術師』さんに来てもらうかもしれないし……言った方がいいかなぁ……。
……うっし! ――とりあえず、ほっぺの手は離してもらえますかねぇ……。
「てがみ……パパ、『ありがとう』ってくれたから、まほーで、やりとりできたらなーって」
「……それで無属性の魔法書を?」
「まほーだったら、パッとおくれるかなー? って」
直でやりとりできるだろうし、時間もかからない――と、思う。
冒険者ギルドに頼んだとしたら、届けるのに早くても一日。民間業者だと、危険だからもっとかかる。だったら、魔法で~と考える人だって居るとは思うんだけど……。
術式の構成とか、難しいのかな?
手紙魔法? は、『魔術師ギルド』で買った魔法書にも載ってなかったし……。
手を離してもらったほっぺを両手で触る。
痛くないけど痛い。なんか変な感じ……。さすさす。
「なんでそんな……」
……手紙ごときに、って?
「…………うれしかった、から」
「嬉しかった……?」
「おへんじ、くるとおもわなかったから……うれしかった……」
触ってたほっぺを、むにむにしながら俯く。
走り書きだったけど、嬉しかった。
もっと手紙を出したいな……って思った。
だから、手紙魔法でも伝書魔法でも、有ったら覚えて、届けたいと思ったんだけど――無いしー! 帰って来ちゃったしー!
うー……なんか、恥ずかしくなってきたかも……。
両手で顔を覆う。
『嬉しかった』って、言うつもりもなかったんだけどな……。
……なんか、テンションおかしい……? 眠くなってきたかな?
「それに――セバスが『ぼっちゃんのはげみになります』って、ゆーから……」
「それで……」
「けど、そんなべんりなまほー、なかったー」
顔を覆っていた手を頬にずらして「ざんねん」と、ちょっとしょんぼり……したら、頭を撫でられた。
見上げると、なんだか嬉しそうな――優しい顔をした辺境伯が私を見ていた。
……。
「はずかしー」
再び両手で顔を覆い、足をバタバタさせながら俯く。きゃー。
顔が赤くなってる気がするー!
なんでそんな、慈愛に満ちた目ぇしてんのぉ? ねぇ、なんでー?!
恥ずかしさが増すんですけど!?
◆
しばらく、嬉しそうな辺境伯に「そーか、そーか、嬉しかったかー」と、抱きしめられていた。
「ううぅ…………うれしくないもん!」
足をバタバタさせるが、辺境伯はどこ吹く風で。
「嬉しかったかー」と煽ってくる。くっそー!
顔が良かろうとも――“愛しさあまって憎さ百倍!”って言うからな?! ……可愛さだっけ?
「もー……! ねる! はなして!」
抱きしめる辺境伯の手を、ペチペチペチペチー! と両手を使って叩く。
容赦、しないんだからな!
「怒るなって」
「おこってないもーん、ふーんだ!」
ニヤニヤしてるから、悪いって思ってないの、見え見えなんだからねー! ふーんだ! ペチペチペチペチ~!
【身体強化】使ってるから、私は! 痛くないもんねーだッ!
「分かった、分かった。離すから叩くな」
「ふーんだ」
ニヤニヤが苦笑に変わった――私の勝利だ……! ふーんだ!
両手が捕られ、万歳するような格好になったから叩けなくなった。チッ。
「はーなーしーてー」
「はいはい」
拘束が解けた私は【身体強化】を解除し、ベッドをピョイっと下りてから乗り直すと、ハイハイでいつも横になっているとこへ。
布団を捲り、【空間収納】から私と同じぐらいの大きさの“クマのぬいぐるみ”を取り出す。
クマのぬいぐるみは昨日、老執事に「だきまくらって、ない?」と訊いたら、今日のお昼前に渡された物だ。
私に丁度良い抱き枕が無かったようで……。でもこのクマのぬいぐるみ、柔らかさと触り心地がとても良くて、すぐに気に入った!
これを抱っこしながら、魔法書を読んでいたから寝落ちしちゃったんだよね~。えへ☆
クマのぬいぐるみを抱っこし、布団を被って横になる。
「…………なんだ? それ」
「だきまくらの、かわり」
「抱き枕……」
なんだかショックを受けてるような声だけど――しらーん!
「おやすみー」
「あぁ……おやすみ」
「やっぱ、怒ってんじゃねーか……」とか聞こえたような気がするけど――しらーん!
翌朝、クマごと抱きしめられていた――苦し……!
『バジリスク』と『コカトリス』って同一視されてるんですね。
「バジリスクってヘビだよな……?」と書いてから気になり、検索してみたところ、出てきたのがコカトリスで。
私、バジリスクって、でっかいヘビだと思ってたんで「なんでバジリスクでコカトリス出てくんだ……?」って驚きました。
そーいや、ダン○ョン飯で『バジリスク』でコカトリス出てたな……。
◆
ウチの『バジリスク』はデカいヘビです! 頭に冠のようなトサカがついている――『蛇の王』って云うらしいですからね!(笑)
『準災害級』……五メートル以上。
『災害級』……十メートル超え。
普通は三~十メートル。子供は三メートル前後。生まれたばかりは、さすがに普通の蛇サイズ(笑)
暖かくて湿った場所に生息。
【化石】と【毒】持ってるよ! 戦う時は【化石】と【毒】無効の魔道具が必須!
化石化しても、欠けてなかったら【状態異常解除】で復活するよ!
部位にもよるけど、欠けてたら……




