18.『手紙』と『魔法書』②
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ブクマ、評価、リアクション、感謝ですm(_ _)m
今回は短めの二千七百ちょい。
……水遊びは、やっぱり体力を使う、のか?
おはようございます。
寝る準備をした記憶が無いのに、ちゃんとパジャマで寝てた、私です。
夕食の記憶もおぼろ気――半分、寝てた……?
辺境伯がいない四回目の朝です。
昨日は、回復薬に魔力込めれなかったッ! ぐぬぅ……。
『無属性』の魔法書も読めなかったし……! むぐぐぐ……。
今日は魔法書を読んで、『蒼焔の魔術師』さんにお手紙を書こうと思います! ――『雷帝』でね。
……べ、別に字がフニャフニャになるからじゃないよ……?!
◆
辺境伯家にある『無属性』の魔法書は、やっぱり攻撃魔法しか載っていなかった。
いや、語弊があるな。強化系や弱体化系の魔法に、【シールド】など、付与と支援をひっくるめた『補助魔法』も載っていた――――見事なまでに戦闘に関係の無い魔法は載ってなかったけど。
あ、【状態異常解除】は使ったことないやつだ! ――覚えとこ。
十時のおやつを食べつつ考えた、魔術師さんに書く手紙の内容をノートに書き出そう。
前回の、便箋にぶっつけ本番で書いた辺境伯への手紙が、あまりにもアレだったので――――失敗は、繰り返さないよ!
えーっと……。
①手紙魔法、または伝書魔法はあるのか。この場合、魔法で手紙のやり取りをすることがあるのかを訊く。
「やってるわね~」って返信がきたらラッキーだ。
②手紙を蝶々や鳥に変化させる魔法はあるのか。上記のことを踏まえて。
「そんなファンシーじゃないわよー(笑)」って言いそう。
あ。使い魔? のハニービー『ミッチー』が運ぶのかな……? ……十分、ファンシーじゃない?
③魔法書の有無。
魔法書に載ってるなら、魔法書を探そう。
なんか『奇想天外! オモシロ魔法!』ってのが、ありそう……!
いつ使うの? とか、なんでコレを思いついた……!? って魔法がありそう!
…………関係無いのに、ちょっと気になってきちゃったぞ?!
三つしか思いつかなかったなぁ……。
魔術師さんへの手紙は、昼食の後――お昼寝の一人になった時にでも、こっそり書こっと。
◆
――ふっと、意識が浮上する。
なんか……左側が温かい……気が、する……。
温かさを求めて、すり寄る。
……あったかい……
なんか安心して、布? をぎゅっと掴むと、背中をぽんぽん、優しく叩かれた――よう、な?
……う~ん? なんか、前にも……
眠くて重い、瞼を少し持ち上げてみる。
ねむ……。
うつらうつらする、うっすらと開けた目に映ったのは――白。
白い布? シーツ……?
右手で、軽くポンポン叩いてみる。……固い。
布団じゃないみたいだ。……なんだろ……?
それに……なんか、私……体、起こしている……? ……寄りかかっているみたいだし……。
……この白いのは――――服……? それに――
「ぱぱ……」
お風呂上がりの辺境伯の匂いみたい……。
「あぁ、ただいま」
ピシッと固まる。
お目めパッチリ、完全意識覚醒。
ギュッと布? を握る左手にも、力が入る。
恐る恐る顔を上げると――――お風呂上がりの、お色気ちょい増な辺境伯のご尊顔……。
そして私は、ベッドに座る辺境伯に横抱きされてた。寄りかかっているんじゃなく、抱っこされていた。
「パパ?! なん! ――つめたぁッ!!」
「なんで、いるの?!」と言う前に、顔に水滴が落ちてきた。冷たッ!!
早くない? 早くない!?
未確認大型魔獣(複数)でしょ?! ――帰ってくるの、早くない!!?
さっき街に【瞬間移動】でパッと行って、『冒険者ギルド』に魔術師さんへのお手紙頼んできたのに――――『雷帝』で。
『魔術師ギルド』にも寄って、ちまちま作ってた『人工魔石』買い取ってもらって、『無属性』の戦闘に関係の無い魔法が載った魔法書と薬草(数種類)、買ってきたのに……。
早くなーい?! ……やること前後しちゃったけど。
「アレクセイ……子供じゃないんだから髪ぐらい、ちゃんと乾かせよ……」
「なに、坊ちゃん起こしちゃってんの」と、いつもの仕事着なハニーさんが子供部屋にやってきた。
目立つ怪我はないようだ。
「坊ちゃん、ごめんね~」
「ハンス!」
「はいはい、ハンスですよ~。戻りました~。
砦の騎士も、ここから向かった騎士も、大小怪我の差はあれど――皆、無事ですよ」
そう聞かされて、ほっとした。
「……はやかったね」
「あー……」
疑問を口にすると、ハニーさんが辺境伯を見て、なんだか言い難そう……というより、呆れ……? を含んだ声を出した。
……何をやらかしたんだ、辺境伯……と、視線をハニーさんから辺境伯に移す。
――そう言えば。
街から【瞬間移動】でパッと戻ってから寝転ける前まで、買ってきた魔法書をベッドの上で読んでたんだけど――眠くなってきたから【空間収納】に片付けたはず、なんだけど……。
辺境伯の左手にある本は、なにかなー?
……片付けてなかったーッ! 片付けれてなかったー!! ギャァァァー!
「パパ、それ、ぼくの……かえして」
辺境伯が左手に持つ魔法書に、手を伸ばす。届かない。
立って取ろうとしたら、反対側の手に渡る。うんもぉー!
「ぼーくーのー! それ、ぼくのだから! かーえーしーてー」
魔法書に手が届いた! と思ったら、辺境伯に捕まり、抱っこに逆戻りだ。うぐぐー……!
「辺境伯邸で見たことないやつだな」
「だーかーらー! ぼくの! って、ゆってるー!」
ついさっき買ってきたことはナイショだ。
一生懸命、手を伸ばすが届かない。じたばたするが、拘束する腕も取れない。うぎー!
私の手がギリギリ届かない位置で、魔法書をこれ見よがしに持つ辺境伯は意地悪だ。この、いじめっこめ!
「あ……」
「とりあえず、アレクセイは髪を乾かせ?」
そう言って、ハニーさんが辺境伯の手から魔法書を取り上げる。
「坊ちゃんも、ちょっと髪型崩れてるから直そうか」
あ~……寝落ちたから髪、ぐちゃぐちゃ?
両手でポンポンと髪を触ってみる――うーん……分かんないや。
「はい、どーぞ」と、辺境伯から取り返してくれた魔法書を渡してくれた。
ハニーさんから受け取った魔法書を【空間収納】にしまう――――ちゃんと【収納】したぞ……!
辺境伯から解放された私は、ベッドから下り、髪を結び直してもらうために、いつの間にか居たメイドさんの元へ向かう。
あ。
ちゃんと言っていないことに気づいて、振り返る。
「パパ、ハンス――おかえりなさい」
そう言われた二人は一瞬、不思議そうな顔をして、顔を見合わせたが「「ただいま」」と返してくれた。
◆
なかなか髪を拭かない辺境伯に、業を煮やしたハニーさんからの「やっちゃえ!」で【温風冷風】(大)をお見舞いしたり。
ちょっと早かった夕食の時間は、ここ数日、何をして過ごしていたのか? と、質問と云う名の尋問を受けたり……。
なんで私が尋問を受けねばならぬのか……。
――『雷帝』で、こっそり、邸を出たことは口にしなかったぞ?




