13.『水遊び』
お読みいただき、有難うございます。
ブクマと評価、感謝ですm(_ _)m
今回も(空白・改行含まない)五千字超え……
(空白・改行含む)だと約六千……
◆修正◆ヒールの漢字を変更しました。
【回復(小)】→【治癒(小)】
今日のお勉強はお休みになった。何故かというと――
いつもの中庭に、ハニーさんが初おでかけの時に言っていた、大きな盥が用意されていた。
私が大の字で寝っ転がれるぐらいの大きさ。高さは、私の腰ぐらいはあるかな?
そう! 水遊びである!
……いや、どうやって作って……いや、需要あるのか??
……有るから、在るのか……?
この盥には『蒼焔の魔術師』さんが作ったシャワーと蛇口が一体化した『魔道具』が取り付けられている。
蛇口のレバーには、『お湯』『水』の魔法陣が彫られた魔石が付いていて、分かりやすいように『お湯』は赤、『水』は水色の魔石だ。
どうやって水(お湯)を出すかと云うと、空気中に存在するマナ――魔素を魔力に変換して出す、らしい。
蛇口やシャワーに施されたオサレなデザインが、魔素を魔力に変換するための術式になっているそうだ。
庭師さんは広範囲の庭は水魔法、小さな花壇は如雨露で水やりをしていた。だから、ホースは存在しないみたい――魔法があるから必要ないのかな?
だから、どうやって庭にある盥に水を入れるのかな? と思っていた。水魔法? それとも、原始的に(邸から)バケツリレー? と。魔法が一番楽だよね。
だけど空気中の水分、もとい、魔素を使うって云うんだから――バケツリレーしなくて良かったね☆
何故、こんな魔道具があるかというと、冒険者仲間の魔術師さんに私が【変身魔法】で『雷帝』に姿を変えていたこと、隣国の第一王子でもあることがバレた日以来、魔術師さんがちょくちょく辺境伯邸に来るようになったからだ。
辺境伯には威嚇されているが、どこ吹く風である。メンタル強い。
来る度にお菓子や玩具を持ってくる『坊ちゃまのお友達』と云う認識になったのか、使用人の誰かが「そろそろ水遊びさせてあげたい」とか何か言ったらしく、先日「いい物、作ってきたわよ~」と持ってきたのが『後付け蛇口(シャワー付き)』――件の魔道具である。
蛇口を捻ると、“じゃばー”と水が出てきた。思わず「おぉ!」と声が出る。
魔力の源は空気中だって云うけど――大丈夫かな? 周りの空気中の魔素。無くなりすぎて一時的に魔法が使えなくなる、とか……起きない、よね……?
出てきた水を触ってみる。うん、冷たい。これは魔石のおかげかな?
「坊ちゃま、お着替えしましょうか」
“じゃばじゃばー”と盥に溜まっていく水を見ていると、老執事に声をかけられた。
お? 水着的な物があるのか? いつ買ったん?
◆
水着的な物が――――あった。……いつ買ったん……?
普通の短パンのように見えるが、これには『水が浸透し難くなる』ような魔法が付与されているらしい。『吸水性を低くする』というか、『耐水性を高くする』というか……そう云うやつ。
水を弾くじゃ遊べない。かといって、びちゃびちゃだと不快になる。程よく、濡れるようになっているそうだ――詳しくないから分からないけど。
騎士や魔術師、冒険者の鎧やローブなどの装備品に【火属性耐性】とか、【毒耐性】とかを付与しているのは――分かる。魔獣や魔物と戦うから。
それを一般人向けの服に付与しようとするとは……。すごいね! 私は水着的な物を見るまで思いつきもしなかった。
上にはラッシュガード的な物を着ている。
前に半袖のまま中庭で遊んでいたら――日焼けした。黒くなる方じゃなく、赤くなる方。真っ赤になって、ヒリヒリ痛くなって……。前世では、少し赤くなる程度だったから驚いた。
お子様は柔肌で繊細なんだねぇ……。え? 違う?
驚いたけど、辺境伯が私以上に焦ってたから思いの外、冷静に(あぁ、日焼けってホントに火傷なんだなー)って、あの時は思った。
お医者さんの処置と、塗り薬のおかげで日焼けは数日で治った。
回復薬で良くない? って? お子様には過剰摂取になるから『十五歳未満は服用しないで下さい』ってなってるんだよね。
まあ、ちょっとした火傷(日焼け)に回復薬は大袈裟かな……。
『回復魔法』って手もあるけど、私、適性ないから【治癒(小)】使えないんだよね。【応急措置】がギリ……あ! 日焼けなら【応急措置】でも良いのか……!
日焼け(ほぼ火傷)をして以来、帽子と長袖が必須。そうじゃなかった場合、中庭に出る時は老執事か護衛さんが日傘を差すようになって――今回、上を着ることになっちゃったのだ。
……いや、さすがに私も上半身が真っ赤になるのは、ちょっと……嫌かなぁ……。ヒリヒリ痛いし、そのあと痒くなるし……。
足はいいんか? って? ……水の中だし……。
水着的な物に着替え、お供にお風呂で一緒のアヒルさん親子(紐で繋がってる)と、カラフルな浮かぶボール(大小様々。たくさん)を持って中庭へ向かう。
中庭につくと、いつの間にか盥の側には手摺つきの階段のような踏み台が置いてあった。
まあね。五歳児の腰ぐらいの高さの盥だもの。踏み台はあって然るべしだ。
どうやって入ろうかなぁ……と考えてたから有難い。
履いてたサンダルを脱いで、手摺を掴み、トトトッと軽やかに踏み台を登る。
頂上から見た景色は普段見慣れないもので――自分の身長プラス六、七十センチ? の世界に、ドキドキとワクワクが止まらない。
踏み台から「とぉう!」と某変身ライダーのようなかけ声を上げてジャンプ! 周りが騒がしくなったけど、些末なことよ! 足は縁にぶつけないように曲げる。
バシャ、ザブッという音と共に、足を底につける前にふわっと浮く感覚。
ラッシュガード的な物にも付与が施されていて、こっちは【浮遊】。
ライフジャケットみたいな感じかな?
これを着ていたら海や川で足を取られても、浮かぶから溺れる心配がない。流されるけど。
盥の中で、指を組んだ手をお腹の上に置いて、プカーと浮かぶ。
沈む心配がないのは有難いが…………なんだかなー。
頭や足が縁にぶつからないって――結構デカいな、盥。
『お湯』も入ってるのかな? 水は冷たすぎず、丁度良かった。
バシャン、バシャン! と夢中で水面を叩いたり、バシャバシャと水を外に出したりして――はたと我に返る。
何が楽しいのか、自分でも分からないが、何故か夢中になっていた。
……なにやってるんだ、われぇ……。
水の抵抗を半減? させるのに、じゃぶじゃぶ跳ねながらカラフルな浮かぶボールを追いかけたり。
影絵の犬を作るように両手を重ねてやる水鉄砲――両親指のところにできた隙間から、ピュッピュッと水を出してアヒルさん親子を狙うが……むむむ。なかなか当たらない。水面が揺れるから……?
水面を落ち着かせてからピューっと――――どう頑張っても揺れるな、これ。
疲れた……。一旦休憩~!
老執事から渡されたお水で水分補給をし、アヒルさん親子とたくさんのボールたちと一緒にプカーと浮かぶ。
上着の【浮遊】でリアルウォーターベッドだ。
……力が入れると足が沈むから無心だ、無心。
…………。
パラソル立てようぜ、パラソル! 太陽が眩しいぜ……。
……サングラスってあるかな?
◆
「楽しそうだな」
盥から出た水の補給にシャワーを出し、浴びながら水手砲をしていると声をかけられた。
振り向くと仕事中のはずの辺境伯が――――気配を消すなと……!
「パパ……しごとは?」
思わずジト目になる。
楽しかったですけどねー? 気分、台無しっすわ~。
ピュッと水手砲をお見舞いする。まあ、届かないんだけど。
「昼だ、飯にするぞ」
「ぉわっ」
言うと、辺境伯は私を持ち上げ盥から出し、地面に降ろす。
「もー、そんなじかん?」と近くに待機している老執事を見ると「ご用意出来ていますよ」と返答され、老執事の示す手の先を見ると――テーブルが用意されていた。
……前もこんなこと、あったな……。
ご飯の時間だと判ると、私のお腹の虫がきゅるる……と鳴る。現金なお腹め……。
サンダルを履いて、頭の天辺から爪先まで――体全体に『生活魔法』の【温風冷風】をかける。
はぁぁぁ……と重たいため息が聞こえた。見ると辺境伯が眉間に手をあてて――――えーっとぉ……私、何かやっちゃいました?
◆
ふんわり、やわらかな丸パン、バターの良い匂いがするクロワッサンなどの焼き立てパン数種類に、レタスたっぷりハムチーズサンド。
イチゴやオレンジなどのフルーツの盛合せ、スクランブルエッグとベーコンにサラダ、野菜たっぷりのコンソメスープ。
う~ん、野菜がいっぱいだぁ……。
椅子に座り、【浄化】で手をキレイキレイしたら膝の上にナプキンを広げて――お手てを合わせて、いただきます!
だけどまずは水分補給~。レモン水をゴクゴク飲む。ぷはー。さて、次は……。
手に取ったのはサクサクのクロワッサン。出来立てだからか、バターの匂いがふわりと香り、外はサクッと、中はしっとり……。うまいうまい。
野菜がたっぷりのコンソメスープに入った、スープしみしみのウインナーをフォークでプス、パク。……ちょっと熱かった。冷ましてから口に入れればよかった……とちょっと後悔、涙目になる。はふはふ。
プツリと噛み切ったウインナーからは肉汁とスープが滲みだす。うんま~。是非とも次はウインナー単体で食べてみたいものだ。
モグモグしながらフォークをスプーンに変え、ウインナーを飲み込んでからスープを飲む。ちゃんと、ふぅふぅした。
ほぅ……。野菜の甘味が溶けだして……おいしぃ。冷えた体が温まるぅ~。
キャベツや白菜、タマネギもくたくたトロトロだ。うんまい。
……ニンジンは…………えーい、ままよー! モゴモゴ……悪くは、ない。悪くは……。ジャガイモで上書き……あっつ。冷ますの忘れてた、ふぅふぅ……モグモグ。
サラダのレタスをシャクっとフォークで刺して口に運ぶ。(口の中を)冷やせ冷やせ。シャクシャクもぐもぐ。
千切りニンジン(生)は……悪くない。ポリポリしてて面白い。……細さか? 細さなのか?? ニンジンの独特の甘さが感じられなくて食べられる。……切り方??
バターと牛乳の香りがするスクランブルエッグは、ふわトロで。塩コショウで味付けされたベーコンはカリカリ、ジューシー。うまうま。
お腹がいっぱいになってきたから、シメのデザート――ヘタが取ってあるイチゴをパクリ。甘酸っぱくておいしい。
くし切りされたオレンジもパクっと。オレンジも甘酸っぱいけど、イチゴとはまた別の甘酸っぱさで……あと酸味の方が強いかな……? でもおいしい。
パクパクっとイチゴを口に入れて――モグモグごっくん。ご馳走さまでしたー!
ふと。前に座る辺境伯が静かなことに気づき、視線をテーブルから前へ向けると――フォークを持ったまま俯いて……震えてた。なんぞ?
「……パパ?」
「く、ふっ……しゃべ、るな」
……声も震えて……はっ!
「パパ! ずっとみてたの?!」
うわ、盛大に震え出した。
「ぅんもー! わらうなら、わらえ! こえをだして!」
うーわー。『あっつ!』とか『ニンジンおいしくない……』とか『ポリポリおもしろ!』ってやってるの、見ーらーれーたぁー。
いや、ここに居る人(老執事や護衛さん、数人の使用人)たちにも見られてるんだってばYo! ――――ギャァァァ。
……あれ? もしかして、普段から独り百面相して食べてる……?
…………。
ギャァァァ……!
手で顔を覆う。ぅわぁ……恥ずかしー。恥ずかしぃ……。
「楽しそうに食うから、つい、な」
声の震えはなくなったみたいだけど……まだ震えてるからな! 分かるからな!
ぷくーと口を膨らませる。私は、怒ってるんだぞ! と、態度で示す。ムッフー。
「悪ぃ、悪ぃ」って言うけど、悪いって思ってないでしょ!? ニヤニヤしてるもんね! 騙されないもんねッ!
むむむ……と、眉間に皺を寄せて辺境伯を睨んでいると「美味かったか」と訊かれた。だから「クロワッサン、サクッとしてて、おいしかった」と素っ気なく答える。
「他は?」
「スープ! やさいがトロトロでおいしかったよ~。ウインナーは、こんど、たんたいでたべたい!」
思わず力が入ってしまった。えへへ……。
ボイルも焼きも美味しそうだ。
「ニンジンは嫌いか」
「うぐ……! ニンジンは……おいしくないもん」
どこぞの少尉さんじゃないけど……ニンジンは、いらないよ。いらないよ、ニンジン――――大事なことなので二回言いました。
「あ、でも、サラダのは、ポリポリしてておもしろかった!」
「……生なのに?」
「そー! ふしぎだよね。なまなのに、たべれるの! ……ニンジンどくとくの、あまさがなかったからかな?」
あの味がイヤなんだよねぇ……。
あとは、やっぱ切り方と細さかな?
野菜スティック――の半分ぐらいの細さなら、イケる気がする……ッ!
話しているうちに、さっきまであった恥ずかしさや不満がどこかに行っちゃったみたい。
お昼、美味しかった! っていう気持ちに上書きされたのかな? ――最近、こういうこと、多いなぁ……。
「……ニンジンは生の細切りか……」
……サラダなら多分――――それもありだ! 野菜スティックぐらいならイケる、イケる! ……多分。いや、やっぱ半分で!
「あとねぇ」
そうして昼食の時間が過ぎていき――
午後も水遊びをするつもりだったけど、思いの外にはしゃぎすぎたようで、昼食の後はお昼寝になってしまった。
お子様、よく寝るぅ……。
午後三時まで寝ちゃったのには驚きだ。
あ。ちゃんと着替えてから寝たよ?
ストック(十三話)出来た! と思ったら、投稿するからすぐ無くなった……orz
ストックが、切れましたorz
十四話、執筆中ですが……いつになるか、わからない……orz
書き上がり次第、投稿します。
しばらく更新ありません。
申し訳ないです……m(_ _)m




