11.閑話(一応、三人称)
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今回はパパ視点。
出会い? と、辺境伯邸に来てからのアレックスの様子を他者視点で……。
三人称は難しい……(´-ω-`)
「パパ、だっこ……」
ソファーに座る『ハルバード辺境伯』アレクセイに向かって、同じソファーに座っていた自分と同じ髪と目の色をした五歳の『息子』アレックスが両手を広げ、抱っこを求めてきた。
食後に隣国の第一王子の話で頭を使ったからか、アレックスは眠そうにしている。
自分から何かを要求することのないアレックスが、自分から抱っこを求めてきたことにアレクセイは目を瞠った。
驚きと。
父親として認められたような、頼られて嬉しいような……不思議な気持ちになる。
「……珍し」と自身の気持ちを覚られないように呟き、目を擦るアレックスを抱き上げ、ぽんぽんと背中を軽く叩きながらベッドへ向かう。
◇◆◇
アレクセイとアレックスは契約による、偽りの親子だ。
アレクセイの子供のふりをする代わりに、アレックスの衣食住を保証する――――契約はアレクセイから持ちかけた。
アレクセイがアレックスを見つけたのは偶然――たまたま。
たまたま立ち寄った子爵領の『冒険者ギルド(支部)』で、アレクセイがアレックスを認識したのがここだ。
直接、顔を合わせて会話をしたのは、それから数日後――アレックスがアレクセイに遭遇したと認識した魔獣討伐依頼の、魔獣の処理中の森の中である。
嘘は言っていない。
声をかけた時には、アレックスが隣国の第一王子だと気づいていたし、冒険者ギルドでアレックスを認識した時には、髪と目の色で隣国の第一王子だと分かった。
“赤い髪に黄金色の目”で、年齢が一桁なのは、隣国の第一王子しかいない――――
赤い髪の人間は他にも居るかもしれないが、この世界では黄金色の目は直系の王族にしか現れない。
黄金色の目の持ち主は『神の子』『神の愛し子』としてこの世に生まれ、『神の加護』を用いて魔獣や脅威から土地を、領地を護り、国を繁栄へと導き、王になった――と、神話に記されている。
だが近年、その黄金色の目を持って生まれる王族の数が減少。今では、アレクセイの住む国は王太子が一人。
他国には、北に二つ行った国の王と王太子の二人、あと数ヵ国の王、王女、女王。隣国には、五年前に王子と王女、三年前に王女。各国合わせても十人居るか、居ないかだ。
二、三百年前までは、わりとあちこちの国の王族から二人以上は当たり前のように生まれていたのだが――――今では絶滅危惧種状態になっている。
そんな神の恩寵を受けし『愛し子』の誕生は大々的に発表し、国によっては一週間ぐらいはお祭り騒ぎになる――国に恩恵をもたらす『愛し子』だから……。
その発表で髪の色も判明する。
アレクセイが知る限りでは、赤い髪は自国の王太子と隣国の第一王子の二人。うち、自国の王太子は赤い髪ではあるが、炎のようなオレンジがかった“赤い髪”だ。年もアレックスより大分上。それにアレクセイは王太子の顔を知っている。
――そんなわけで、生まれた時から世界中の王候貴族に知られている。だから、アレックスの髪と目の色が分かった時には、イコールで隣国の第一王子だと分かった。
“『雷帝』が来ている”と騒ぎになり、通常でも人の出入りの激しいギルドは、この日は外にまで人が溢れかえっていた。
そんな日に寄ってしまったアレクセイも(『雷帝』ねぇ……。どんな厳つい野郎なんだか……)と、興味本位で冒険者でごった返す受付を見ると、一人の子供が目についた――――それがアレックスだ。
冒険者ギルドには色んな人間が出入りしている。子連れ冒険者も居るが、それでも『魔力判定』前の子供が、一人でギルドに来ることはない。
普段であれば気にも留めずにスルーしている。だが、何故かその子供――アレックスが目についた。
赤い髪をしていることから騒ぎの元の(『雷帝』の子供か……?)と、なんとなく子供を見ていると――子供と同じ赤い髪をした、透けた青年がアレクセイには視えた。
ギルド内に居る人間は皆、子供の方ではなく、透けた青年に声をかけている。
(――あぁ、なるほど。魔法で姿を変えてるのか)
アレクセイの目は対象が【変化】や【変身魔法】、『魔導具』を使って姿を変えても“使う前の姿で見える”、対象の“変化後の姿が分からない”と云う『魔法の影響を受けない魔眼』だ。
普通の人には青年=『雷帝』の姿で、『魔法の影響を受けない魔眼』持ちには子供の姿で――
アレクセイには透けた青年が子供に重なって視える。
『魔法の影響を受けない魔眼』は“元の姿で視える”のだが、アレクセイの『魔眼』には、魔法の影響を受けた後の姿も視える『魔法の影響を受けない魔眼』の亜種だった。
透けて視えるが、実体として掴むことも出来る。だから、直接対面した鬱蒼とした森の中で、アレクセイは『雷帝』の首を掴むことが出来たのだ。
(『雷帝』なんて厳つい呼び名だから、どんなヤツかと思えば――まさか魔法で姿を変えたガキとはなぁ……)
そして――――どうしようもなく欲しいと思った。
執着のような――どうして“欲しい”と思うのか。
“手に入れたい”と、“囲いたい”と――“甘やかしたい”と、どうしようもない衝動に駆られる。
オカシイのは理解している。
欲しいと思ったのと同時に、アレクセイの頭の中にオカシイ、あり得ないと、否定する言葉が浮かぶ。
大の大人が、子供に対して思うことではない、オカシイことだと理解しているのに――――
そこから『雷帝』について調べ――隣国の第一王子についても調べた。
(どうやって囲うか……)
アレクセイが頭を悩ませていると、実家から訃報が届き、辺境伯になることが決まった。
そこで、『雷帝』に魔獣討伐の依頼を出し、(年間契約を結べばいいか……)と、思いつく。
そしてあわよくば、居心地がいいと居座ってくれれば――と、実行に移そうとした時、『雷帝』を害する仕事が廻ってきた。
プライドだけが一人前のバカのおかげで、直接『雷帝』に接触できる。連れて帰れる――と。
短期戦で決着をつける。戦闘に時間がかかると『雷帝』が対応出来るようになるからだ。
そして――取引に成功し、利害が一致したから親子のふりをしていると、アレクセイは思っている。
アレックスからしたら、強引な取引だ。どう頑張っても勝てる気がしないアレクセイを相手にするのはムダだと、抵抗するのを止めただけ。
【変身魔法】を解除し、『雷帝』から五歳児に戻り、【色変魔法】で“赤い髪”を“黒髪”、“黄金色の目”を“灰青”に色を変えたアレックスを抱えたアレクセイは、辺境伯領へ向かった。
辺境伯領に着いた当初は、アレックスは遠慮しがちで、借りてこられた猫のように大人しかった。
お風呂や着替えなども、自分でやろうとする――王子なのに。
育った環境のせいかもしれないが(王子として、それはどうなんだ……)と、アレクセイは頭を抱えたくなった。
――五歳のわりに言動が子供らしくないことは『愛し子』にはよくあることなのでスルー。
同年代の自国の王太子が子供らしくなかったので、スルーする――が、久しぶりの対応だから頭が痛い。
最近は、環境に馴れてきたのか、少し子供っぽくなってきたような気もする。抱き上げられても抵抗が薄くなってきた――それはそれで少し寂しいが。
就寝後に出歩くことも無くなった。
初日は虚ろな顔で枕を抱えて歩いているのを側近のハンスが見つけ、アレクセイの元に連れてきたのだ。「(坊ちゃんの)お父さん(としての)仕事して?(笑)」と。
そのまま寝室に連れて行って、寝て起きたら――アレックスが(なんで、辺境伯の寝室に居るんだ!? 我ぇ!)と、軽くパニックになっていた。子供部屋を出た記憶が無いらしい。
それから仕事を終えたらアレックスがちゃんと寝ているか、確認し、寝室に連れて行くのがルーティンになった。
アレックスは、最近は自身に与えられた子供部屋で目覚めるのを諦めている。何をどう頑張っても、起きたら隣にアレクセイが寝ているから。
(あぁ……今日もか……)(気にしたら、負け)と、諦めの境地である。
――今日は、このまま砦のアレクセイの部屋で寝るようだ。アレクセイの腕の中で、すでに寝息をたてている。
アレックスをベッドに寝かせたアレクセイは、側近のハンスと使用人を呼び、お茶を片付けさせた。
◆
『わたしのこと、りんごくにしらせる? ――けいやくしゅーりょー?』
やっと手元に置けたんだ、わざわざ教えてやるわけがない。
今まで放置しておいて――今更、必要になったから探してるなんて、知ったことか。
『うん、わかった。じゃあ――これからもヨロシクね』
嫌がられても、絶対に手離さない――
三人称になってるかビミョーだ……( ̄▽ ̄;)
……辺境伯視点を妄想してたらヤンデレが苦手なのにヤンデレっぽくなるわ、変態(?!!)っぽくなるわで「あ゛ーーーーーorz」ってなった。
どうしてこうなった??
(知らん)
かっこいい大人な辺境伯は何処に行ったんだ……?
(そんなヤツ、元から居なかったんだよ)




