第2章 第1話 次回予告
第二部 予告編
――王国の闇は、まだ終わっていなかった。
あの騒乱から、季節は巡り、王都には秋の風が吹き始めていた。
かつて夜空を駆け、国家反逆の罪人を暴いた“怪盗ブラック”――その正体が第3王子ランス=フリューゲンであることは、今なお王家の最深部に秘されている。だが、王国に巣食う陰は、それだけではなかった。
「……また、面倒なものが届いたな」
学院の一室。ランスは、淡く紅葉した空を背に、書状を手にしていた。
それは、ひときわ華やかな香りのする紙。金の封蝋には、優雅な獅子の紋章――シャトール侯爵家の印が刻まれていた。
「王子ランス=フリューゲン殿下へ。
我が家の令嬢、カミーユ=ド=シャトールとの婚約をご検討いただきたく……」
「釣書、か。しかも、このタイミングで」
一見、ただの貴族の政略的な申し出。だが、ランスは直感していた。
これは偶然ではない――いや、明らかな“挑戦”だ。
カミーユ=ド=シャトール。
氷のような青い髪と瞳を持ち、“氷薔薇の姫”と呼ばれる侯爵令嬢。
貴族学院の首席として知られ、その冷徹さと頭脳明晰ぶりで政界からも一目置かれている少女である。
そして、その背後にはもう一つの影――
アングレット公爵家の存在があった。
アングレーム伯爵家が失脚し、フリューゲン王家の体制が揺らいだその隙を突くように、王国の南部を支配する巨大貴族、アングレット公爵家は静かに勢力を伸ばしていた。
“次に落ちるのは、王家だ”――そんな噂すら、貴族社会ではささやかれている。
「つまり、“ボク”を取り込もうってことか。
フリューゲンの王子を、自分たちの“駒”にしようって」
ランスは鼻で笑う。
だが、その瞳は決して軽んじてはいなかった。
なぜなら、王国の命運を揺るがすほどの陰謀が、再びその姿を現そうとしていたからだ。
そして、彼の隣には――
「……ランス様、そのお手紙、見てもいいかしら?」
振り返ると、そこには銀髪の少女が立っていた。
アンジェ=オルレアン。
かつて婚約を破棄され、孤独に涙を流した伯爵令嬢は、今やランスの隣に立つ“唯一無二の相棒”である。
「うーん、あまりオススメはしないよ? きっと腹立つ内容だからね」
「ふふ、わたくし、そういうのにも慣れてきましたもの」
「……じゃあ、共に戦おうか。次の“舞台”へ」
秋の空の下、新たな陰謀、新たな敵、新たな恋の行方が動き出す。
シャトール侯爵家の思惑。
アングレット公爵家の野望。
そして、“怪盗ブラック”の新たなる活躍とは――?
「ボクの手は塞がってるから、申し訳ないけどこの縁談、丁重にお断りだ」
「……“ボクの手には、もう君がいる”って、そうおっしゃりたいんでしょう?」
「うん、さすがアンジェ。ボクの考えてること、全部お見通しだ」
恋と陰謀、そして信頼が交差する第二幕――
***
この秋、公開予定。
「仮面の王子と、銀の令嬢」第二部
運命を暴け。真実を盗め。
愛は――まだ、試され続ける。
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