エピローグ
日が傾く。戴冠式は、何事もなく終わった。少なくとも、表面上は。
「……さて。これからのことを、話し合うか」
客人を全て見送って。エルドレッドは、小さな声で呟いた。彼の周囲に、仲間たちが集まってくる。
「そうね。もう、捕まるのも人質にされるのもコリゴリだし」
セラフィーナが苦笑を浮かべる。ルーシャはエルドレッドの前に立って、彼を見つめた。
「ねえ、エル。あなたは忘れてるのかもしれないけど、後宮には王妃様と皇太子様がいるのよ。あの人たちは、どうなるの?」
「…………えっと、それは」
エルドレッドが言葉に詰まる。流石の彼も、後宮の事情には明るくない。そこに、助け船を出した者がいた。
「王妃とは、俺が話をつけましょう。彼女は俺の親戚です」
そう言ったのはバーニーだった。マリオンが真顔になる。
「親戚と言っても、血の繋がりは薄いだろう。それに、お前の家は……確か分家ではなかったか? 王妃様は本家の出だ。お前のことが知られていない可能性もあるだろう。それでも話をつけられるというのか?」
「はい。俺の家は確かに分家ではありますが、本家との繋がりは強い方です。俺は1度、避暑に来ていた彼女と話したこともありますし……。他の者よりは、話を聞いてもらえるのではないかと」
バーニーはマリオンの目を見て断言した。エルドレッドが困ったような顔をして、口を開く。
「まあでも、オレが会いに行くよりは良いだろ。前の国王を追い出したオレは、その人たちには恨まれているだろうし。……ルーシャに指摘されるまで、後宮のことなんて考えてなかった。王様になるって、大変なんだな」
「まあ、外からは見えない場所ですからね。気にする必要はないでしょう。それに、彼女は生粋の貴族です。玉座を追われた前王のことなど、もはやその目には映っていないのでは?」
バーニーは冷たい目をして告げた。エルドレッドが固まる。
「……えっと、じゃあもしかして……」
「これはあくまでも、俺の予想ですが。彼女は今の地位を、手放そうとはしないでしょう。……王家の血を引く男子もいます。次代の王は、彼女の手で育てられることになる。あなたの子ではありませんが……」
「……いや、うん。どうなんだろう。別にオレは、気にしないけど……」
エルドレッドが明らかに戸惑う。ルーシャはそんな彼に、冷ややかな眼差しを向けた。
「バカ。ちょっとは気にしなさいよ。その女は自分の地位を守るために、好きでもないエルと結婚しようとしてるのよ。他の男との間にできた子供を、次の王にするために。それを許していいの?」
「それは……良くない、けど……」
ルーシャに詰め寄られて、エルドレッドが慌てる。そんな2人を、仲間たちは遠巻きに見守っていた。
この先の展開が思いつかないので、ひとまずここで畳もうと思います。また思いついたら、その時には続きを書きます。
明日からはまた別の作品の連載を始めようと思っています。今のところは聖女ものか後宮もののどちらかで、女の子が主人公になる予定です。もしよろしければ、そちらもお楽しみいただければ幸いです。




