帰国
エルドレッドはマリオンと共に、皇国……王都に戻った。王都は相変わらず、奇妙な静けさに満ちている。
「……さて、これからが大変だな」
エルドレッドが疲れた様子で呟く。その言葉を聞いて、マリオンは苦笑を浮かべた。
「ああ、そうだな。この国にはドレア家を筆頭に、厄介な貴族たちが揃っている。まずは近衛の再編成から始めなければ、次は貴殿が寝首をかかれることになるだろう」
「だよな……。とりあえず近衛の隊長は、マリオンさんに任せたいと思ってるんだけど……」
エルドレッドが不安そうな顔で、マリオンの方を見た。マリオンが彼の目を見返して、笑みを深める。
「何故そこでそんな顔をする。貴殿は既に、私の王だ。貴殿に命じられるのなら、どのような仕事も全うするさ」
「オレは別に、そんなつもりじゃ……」
「どんなつもりかは知らないが、私は貴殿に仕えると決めた。この戦争が終わっても、それは変わらない。遠慮などせず、これからも私を頼ってくれ」
戸惑うエルドレッドに向けて、マリオンは堂々とした態度で告げた。彼は言葉に詰まって、目をそらす。2人はそのまま、無人の大通りを進んで王城の中に入っていった。
「お帰り〜」
城に入った2人を、セラフィーナが出迎える。エルドレッドは周囲を見渡した。床に倒れていたはずの近衛兵たちの姿は、既にそこにはない。
「……ここに居た奴らは、どこに行ったんだ?」
「東の塔だよ。……幽閉みたいなものだけど、今のところは大人しくしてくれてる。国王が居なくなったことも伝えたけど、そんなに気にしてないみたいだった」
エルドレッドの問いかけに、セラフィーナは真剣な表情になって答えた。彼はその言葉を聞いて考え込む。そんな彼の前に、柱の影に隠れていたルーシャが姿を見せた。
「おかえり」
「ああ、ただいま」
エルドレッドの表情が少しだけ和らぐ。油断ができない状況だというのは分かっているが、これでルーシャが傷つけられる心配は無くなった。ひとまずは。彼はそう考えて、ルーシャに優しい眼差しを向けた。
「お2人とも。仲が良いのは何よりですが、今は他に優先すべきことがあるのでは?」
そこにロドニーが声をかける。彼は入口の柱に背をつけて、立っていた。その言葉を聞いた2人が、慌てて動く。
「わ、分かってるわよ、そのくらい。……ほらエル、行くわよ。戴冠式をして、名実ともに王様にならなきゃ」
「あ、ああ。そうだな」
どこかぎこちない様子で、ルーシャが彼に手を伸ばす。彼はその手を取って、彼女と共に去っていった。




