双子
「……兄上。この城は、兄上が建てたものなのですか」
国王が戸惑った様子で問いかける。皇帝は、彼に冷たい眼差しを向けた。
「何が言いたい。俺がお前たちを恨んでいないとでも?」
「そのようなことは……」
国王が口を閉じて俯く。エルドレッドは真顔で告げた。
「……どうでもいいけど。帰るのはオレたちだけで、国王はここに置いていくぞ。三国の均衡を保つには、どこか一国を押さえるしかない。オレたちはそう判断したんだ」
皇帝が目を細めて、エルドレッドを見つめた。
「そうか。お前は王になるのだな」
彼は淡々とした声で呟いた。国王が不思議そうな顔をする。
「それだけですか? 私は未だに、納得できていないのですが。兄上はエルドレッドが王となることを、何とも思っていないのですね」
「その男は、1度決めたことは貫き通す。ここに来た時点で、既に仕込みは終わっているのだろう。今更あがいても、全てが無意味だ」
皇帝は平然とした表情で言った。彼はエルドレッドから目を離さずに、低く重い声を出した。
「1つだけ聞きたい。戦場に突然、嵐が吹き荒れたことがあるのだが……あれは、お前の仕業だったのか?」
「そうだ」
短い返答。それを聞いて、国王が表情を変える。
「嵐とは何だ。そのような報告は、私の元には上がっていない」
「……語るに落ちたな」
皇帝が呆れたように息を吐く。
「お前は、父上と母上が築いた資源を使い潰しているだけだ。あの頃から、何も変わっていない」
国王が息を飲む。エルドレッドは、真顔で話を続けた。
「このままこの男が皇国に居ても、国は衰退に向かうだけだ。戦争が長引けば、帝国の損失も大きくなる。そうなると神聖国の1人勝ちになるだろ。帝国の皇帝として、それは避けたいと思わないか?」
「そうだな。相手がお前なら、休戦協定を結んでもいい。いかな帝国の民といえど、お前を敵に回してまで戦おうとする者は居まい」
皇帝は表情を変えなかった。国王が悔しそうな顔で黙り込む。エルドレッドは、困り顔でそれを見ていた。
「……エルドレッド。そろそろ時間だ」
マリオンがエルドレッドに声をかける。彼は無言で頷いて、彼女と共に執務室から出ていった。その姿が見えなくなった後に、皇帝が国王に話しかける。
「……今更、兄として振る舞うつもりはないが……。お前がこの先もこの城で暮らすのなら、俺の指示に従ってもらうぞ」
国王は皇帝と目を合わせないまま、小さな声で言葉を返した。
「そうでしょうとも。どんなに似ていても、ここは私の城ではない。そのくらいのことは、私にも分かっています」




