皇国(後編)
エルドレッドたちは、正面から堂々と城に乗り込んだ。あまりにも堂々とし過ぎていて、近衛兵たちの対応が一瞬遅れたほどだ。
「エルドレッド……! いったいどこから現れたんだ?!」
「いや、そんなことより何をしに来た! お前は帝国についたのだろう!」
エルドレッドの前に、兵隊たちが立ちはだかる。彼は真顔で、剣を抜いた。
「これ以上、無益な戦争を続けさせるわけにはいかないからな。国王には玉座から下りてもらう」
兵たちがざわめく。その後ろから、国王が姿を見せた。
「……ほう。それでその玉座には、誰が座る?」
「オレが座る。その資格はあるだろ。オレは神の子なんだから」
彼は真正面から、国王の目を見て告げた。国王が冷たい表情になって、周囲にいる兵たちに指示を出した。
「この者は謀反人だ。即刻捕らえて、牢屋に入れろ」
兵たちが戸惑いながらも剣を抜く。エルドレッドは目を細めた。
「……皆。できるだけ、怪我をさせないように倒してほしい。数は向こうの方が多いけど、練度はこっちの方が高いだろ。僧侶の姿も見えないし、オレたちなら何とかなると思う」
その言葉を聞いた近衛兵たちが色めき立つ。
「バカにしているのか?」
「我々は、王を守る最後の砦だ。そう簡単に、倒されはしない」
彼らは剣や槍を構えて、エルドレッドたちとの距離を詰めた。その様子を見つめて、国王は低い声を出した。
「お前は甘すぎる。人を殺す覚悟が持てない者を、王として認めることはできない。……やれ」
周囲を囲んだ兵たちが、王の命を受けて一斉に襲いかかってくる。白刃が閃いて、鈍い音が響いた。
「まずは1人」
エルドレッドが呟くと同時に、彼の正面にいた近衛兵が地に倒れた。マリオンは別の近衛兵と渡り合いながら、声を張り上げた。
「怯むな! 進め! この程度の相手なら、傷をつけずに制圧できるはずだ!」
刃と刃がぶつかり合う。力を込めて、マリオンは相手の剣を押し返した。剣が吹き飛ばされて、床に落ちる。マリオンと相対していた兵が、戦う気力を失って膝をついた。
(……これは、今のうちに逃げるべきかもしれぬな)
国王は、正面の戦いを見ながらゆっくりと後ずさりをした。力の差は明白だ。この勢いが続けば、いずれエルドレッドたちが勝つだろう。その前に、姿をくらましておくべきだ。そう判断して、彼は大きく息を吸った。
(玉座の間に戻れれば、王家に伝わる秘密の通路を使って、城から抜け出すことができる。それは兵たちを見捨てることと同義だが、近衛の役割というのはそういうものだ。彼らも分かってくれるだろう)
国王はそう考えて、一目散に逃げ出した。




